クロス探偵物語
2026/07/26(日) 22:22:44.69ID:???
第三話 ゆがんだ名門校
2026/09/22(火) 22:13:34.01ID:???
ぼくが迷惑をかけたことをわびると、
ロッジのオーナーは。
「いやなあに、よくあることだよ。
それにしても災難だったね。」
と言った。
その顔には先ほどの険しさはなく、
人の良さを感じることができた。
ロッジのオーナーは。
「いやなあに、よくあることだよ。
それにしても災難だったね。」
と言った。
その顔には先ほどの険しさはなく、
人の良さを感じることができた。
2026/09/22(火) 22:15:27.92ID:???
ロッジは奥まった場所にあり、
いかにもといった感じのログハウスだった。
別棟で屋根付きのガレージがある。
いかにもといった感じのログハウスだった。
別棟で屋根付きのガレージがある。
2026/09/22(火) 22:17:14.39ID:???
オーナーは車からぼくのバイクを降ろすと、
そこに置くように言った。
ガレージの中にはオーナーのものと思われる、
ピカピカのハーレーが2台と、
国産のバイクが3台置かれていた。
そこに置くように言った。
ガレージの中にはオーナーのものと思われる、
ピカピカのハーレーが2台と、
国産のバイクが3台置かれていた。
2026/09/22(火) 22:19:31.57ID:???
ぼくはバイクを置くと、
荷物を降ろしロッジに向かった。
ロッジの中はバイク乗りが集まる場所らしく、
いたるところにヘルメットやオートバイの部品が、
ディスプレイしてあり、壁じゅうに、
ここを訪れた人々の写真が貼り付けてあった。
荷物を降ろしロッジに向かった。
ロッジの中はバイク乗りが集まる場所らしく、
いたるところにヘルメットやオートバイの部品が、
ディスプレイしてあり、壁じゅうに、
ここを訪れた人々の写真が貼り付けてあった。
2026/09/22(火) 22:28:42.26ID:???
ぼくは部屋に荷物を置いた後、食堂へ行った。
食堂はオープンキッチンになっていて、
その間にカウンターがあり、
中央に大きなコの字型のテーブルがある。
それを囲むようにしておかれた十数個の丸太で、
できた椅子はいかにも手作りといった感じだ。
「腹へっただろ、なんか作るから、
ちょっと待っててな。
あんたの分ほかの客が食っちまったんだ。
うちの客、さもしいやつが多いもんでな。」
オーナーはぎこちない笑顔を作ってみせた。
「私がやるからいいわよ。」
トレーナーにひざ上のスウェット姿で現れた、
涼子は、手早くエプロンをつけると、
父親を押しのけた。
「晩飯の支度も手伝わねえで、
星見に行ってたバカ娘が、
どういう風の吹き回しだ?」
「だって私、星を見るために帰ってきたんだもん。
お父さんみたいなバイクにしか興味のない人には、
わかんないわよ。ねっ!」
涼子は、ぼくの方を見てウィンクをした。
ぼくはどぎまぎしたが、
それを表に出さないように務めた。
「お前何言ってんだ?
彼だって相当のバイク好きだぞ。
なあ!」
涼子の父親の言葉に、
ぼくは薄笑いを浮かべてうなずいた。
食堂はオープンキッチンになっていて、
その間にカウンターがあり、
中央に大きなコの字型のテーブルがある。
それを囲むようにしておかれた十数個の丸太で、
できた椅子はいかにも手作りといった感じだ。
「腹へっただろ、なんか作るから、
ちょっと待っててな。
あんたの分ほかの客が食っちまったんだ。
うちの客、さもしいやつが多いもんでな。」
オーナーはぎこちない笑顔を作ってみせた。
「私がやるからいいわよ。」
トレーナーにひざ上のスウェット姿で現れた、
涼子は、手早くエプロンをつけると、
父親を押しのけた。
「晩飯の支度も手伝わねえで、
星見に行ってたバカ娘が、
どういう風の吹き回しだ?」
「だって私、星を見るために帰ってきたんだもん。
お父さんみたいなバイクにしか興味のない人には、
わかんないわよ。ねっ!」
涼子は、ぼくの方を見てウィンクをした。
ぼくはどぎまぎしたが、
それを表に出さないように務めた。
「お前何言ってんだ?
彼だって相当のバイク好きだぞ。
なあ!」
涼子の父親の言葉に、
ぼくは薄笑いを浮かべてうなずいた。
376名無しが氏んでも代わりはいるもの
2026/09/22(火) 22:42:46.24ID:OE0/VlQN なに
2026/09/26(土) 14:22:44.44ID:???
涼子の作った料理はどれもおいしく、
ぼくは夢中で平らげた。
その間涼子とその父親は、
ぼくと同じテーブルに座って談笑していた。
どうやらぼくはこの親子に気に入られたらしい。
ぼくは夢中で平らげた。
その間涼子とその父親は、
ぼくと同じテーブルに座って談笑していた。
どうやらぼくはこの親子に気に入られたらしい。
2026/09/26(土) 14:26:09.05ID:???
食後のコーヒーを飲んでいると、
3人の男たちがぞろぞろとやってきた。
25、6だろうか。
常連といった感じだ。
「涼子ちゃーん、俺たちにもコーヒーちょうだい。」
涼子はうんざりした様子でコーヒーをついだ。
「じゃ、お父さん、後よろしくね。」
涼子はさっさと自分の部屋に戻っていった。
「相変わらず冷てえなあ。」
男の1人が言うと、後の2人がうなずいた。
3人の男たちがぞろぞろとやってきた。
25、6だろうか。
常連といった感じだ。
「涼子ちゃーん、俺たちにもコーヒーちょうだい。」
涼子はうんざりした様子でコーヒーをついだ。
「じゃ、お父さん、後よろしくね。」
涼子はさっさと自分の部屋に戻っていった。
「相変わらず冷てえなあ。」
男の1人が言うと、後の2人がうなずいた。
2026/09/26(土) 14:28:56.16ID:???
その後ぼくは男たちにつかまり、
1時間近くも質問攻めにあった。
話の大半は涼子との関係を問いただすもので、
今日は初めて会ったと言ってもなかなか信じては
もらえなかった。
涼子は彼らのマドンナ的存在で、
誰もが狙っているらしいのだ。
しかし、当の本人は彼らには全く興味を
示さず、もっぱら星にのみ関心があるらしい。
1時間近くも質問攻めにあった。
話の大半は涼子との関係を問いただすもので、
今日は初めて会ったと言ってもなかなか信じては
もらえなかった。
涼子は彼らのマドンナ的存在で、
誰もが狙っているらしいのだ。
しかし、当の本人は彼らには全く興味を
示さず、もっぱら星にのみ関心があるらしい。
2026/09/26(土) 14:32:09.56ID:???
ぼくはその日なかなか寝つけなかった。
初めての一人旅で神経が高ぶっていた
ということもあるのだろうが、
眠ってしまうのが妙に怖かったのだ。
朝、目が覚めるといつものアパートに
戻っているような気がして、
薄暗い天井をじっと見つめていた。
ぼくが眠ったのは、
夜が白々と明けてきた頃だった。
初めての一人旅で神経が高ぶっていた
ということもあるのだろうが、
眠ってしまうのが妙に怖かったのだ。
朝、目が覚めるといつものアパートに
戻っているような気がして、
薄暗い天井をじっと見つめていた。
ぼくが眠ったのは、
夜が白々と明けてきた頃だった。
2026/09/26(土) 14:34:43.35ID:???
次の日、ぼくは壁のスピーカーから流れる
有線放送の音で目を覚ました。
多分朝食の合図なのだろう。
ぼくはあわてて服を着ると、
顔を笑って食堂へと向かった。
デッキに面したガラス戸から差し込む朝日は、
まるで太陽が自分の力を誇示するかのように
強烈だった。
有線放送の音で目を覚ました。
多分朝食の合図なのだろう。
ぼくはあわてて服を着ると、
顔を笑って食堂へと向かった。
デッキに面したガラス戸から差し込む朝日は、
まるで太陽が自分の力を誇示するかのように
強烈だった。
2026/09/26(土) 14:37:09.08ID:???
食堂にはすでに昨日の男たちが来ていた。
カウンターに立つオーナーは
ぼくの姿を見つけると、
「おはよう。よく眠れたかい?」
と言った。
ぼくがうなずくと彼は、
「ここでいいよな。」
と言って、カウンターの真ん中に
朝食の料理を並べ始めた。
カウンターに立つオーナーは
ぼくの姿を見つけると、
「おはよう。よく眠れたかい?」
と言った。
ぼくがうなずくと彼は、
「ここでいいよな。」
と言って、カウンターの真ん中に
朝食の料理を並べ始めた。
2026/09/26(土) 14:38:40.78ID:???
ぼくは3人組と同じテーブルじゃないことに
思わずほっとした。
オーナーも気を使ってくれたのだろう。
思わずほっとした。
オーナーも気を使ってくれたのだろう。
2026/09/26(土) 14:40:18.78ID:???
ぼくが食後のコーヒーを飲み終わっても、
涼子は姿を見せなかった。
このまま涼子が来るのを待っていたかったが、
チェックアウトの時間が近づいていたので、
ぼくは部屋に戻った。
涼子は姿を見せなかった。
このまま涼子が来るのを待っていたかったが、
チェックアウトの時間が近づいていたので、
ぼくは部屋に戻った。
2026/09/26(土) 14:42:43.27ID:???
荷物をまとめ、パンクの修理をしに
ガレージに行くと、そこには既ににオーナーがいた。
「こりゃ、タイヤ買ってこないと無理だな。」
オーナーの指差した場所は3センチほどの
亀裂が入っていて、修復を試みたあとがあった。
「中軽井沢のバイク屋に
電話してきてやるから、ちょっと待ってな。」
ガレージに行くと、そこには既ににオーナーがいた。
「こりゃ、タイヤ買ってこないと無理だな。」
オーナーの指差した場所は3センチほどの
亀裂が入っていて、修復を試みたあとがあった。
「中軽井沢のバイク屋に
電話してきてやるから、ちょっと待ってな。」
2026/09/28(月) 14:26:28.68ID:???
しばらくしてオーナーが渋い顔をして
戻ってきた。
「お前さんのタイヤ、在庫がないんだってよ。
これは高崎まで行くしかないな。
四輪の免許を持ってるかい?」
ぼくが持っているというと
「だったらうちの車使っていいから、
高崎まで行って買ってくるといいよ。
今地図を書いてやるから。」
といってオーナーは車のキーを投げてよこした。
「私ついでがあるから乗せてってあげる。」
いつの間にか涼子は、ぼくの後ろに立っていた。
彼女はぼくの手から車のキーを奪うと、
父親に返した。
「私が行くと、あそこのバイク屋さん、
すっごくまけてくれるのよ。」
僕には断る要素がなに一つなかった。
戻ってきた。
「お前さんのタイヤ、在庫がないんだってよ。
これは高崎まで行くしかないな。
四輪の免許を持ってるかい?」
ぼくが持っているというと
「だったらうちの車使っていいから、
高崎まで行って買ってくるといいよ。
今地図を書いてやるから。」
といってオーナーは車のキーを投げてよこした。
「私ついでがあるから乗せてってあげる。」
いつの間にか涼子は、ぼくの後ろに立っていた。
彼女はぼくの手から車のキーを奪うと、
父親に返した。
「私が行くと、あそこのバイク屋さん、
すっごくまけてくれるのよ。」
僕には断る要素がなに一つなかった。
2026/09/28(月) 14:29:31.79ID:???
涼子の車は小さな外車だった。
四輪には詳しくないので名前はわからないが、
真っ赤なボディーに白いラインが入っていて、
とても愛きょうのある顔をしている。
ぼくを助手席に乗せると、
涼子はダンガリーシャツのソデをまくり
ドライバーズシートへと滑り込んだ。
四輪には詳しくないので名前はわからないが、
真っ赤なボディーに白いラインが入っていて、
とても愛きょうのある顔をしている。
ぼくを助手席に乗せると、
涼子はダンガリーシャツのソデをまくり
ドライバーズシートへと滑り込んだ。
2026/09/28(月) 14:34:58.40ID:???
涼子は運転中あまり口をきかなかった。
軽井沢を過ぎ碓氷峠にはいると、
涼子の車は本領を発揮した。
ぼくの代弁をするかのようにタイヤは
悲鳴あげエンジンはうなる。
次から次へと迫ってくるコーナーを
楽しむかのように、涼子を車を走らせた。
事実、涼子は楽しんでいた。
50ばかりのコーナーリングを終えると、
峠は終わり、道は平坦になった。
「ゴメンね、乱暴な運転して。」
そういうと涼子は小さく舌を出した。
ぼくは車をほめながら気づかれないように、
手のひらににじんだ汗をズボンで拭いた。
『血は争えない』とはこのことだろう。
軽井沢を過ぎ碓氷峠にはいると、
涼子の車は本領を発揮した。
ぼくの代弁をするかのようにタイヤは
悲鳴あげエンジンはうなる。
次から次へと迫ってくるコーナーを
楽しむかのように、涼子を車を走らせた。
事実、涼子は楽しんでいた。
50ばかりのコーナーリングを終えると、
峠は終わり、道は平坦になった。
「ゴメンね、乱暴な運転して。」
そういうと涼子は小さく舌を出した。
ぼくは車をほめながら気づかれないように、
手のひらににじんだ汗をズボンで拭いた。
『血は争えない』とはこのことだろう。
2026/09/28(月) 14:36:56.36ID:???
高崎のバイク屋は、涼子の顔を見るなり
タイヤを大幅に値引きしてくれた。
バイク屋でバイトしているぼくでも、
そんな値段では手に入らない。
タイヤを大幅に値引きしてくれた。
バイク屋でバイトしているぼくでも、
そんな値段では手に入らない。
2026/09/28(月) 14:39:49.36ID:???
ぼくがお礼に昼食をごちそうすると言うと。
涼子はとても喜んでくれた。
涼子のリクエストの「キャラウェイ」
というレストランに入り、僕らは食事をした。
僕らは星座の話で盛り上がり、その後
話題はギリシャ神話にまで及んだ。
ぼくはこの時生まれて初めて
天文ファンであったことを神に感謝した。
涼子はとても喜んでくれた。
涼子のリクエストの「キャラウェイ」
というレストランに入り、僕らは食事をした。
僕らは星座の話で盛り上がり、その後
話題はギリシャ神話にまで及んだ。
ぼくはこの時生まれて初めて
天文ファンであったことを神に感謝した。
2026/09/28(月) 14:41:38.00ID:???
瞬く間に時は過ぎ、僕らは帰途についた。
帰り道も涼子は存分に峠道を堪能した。
父親のことはバイクにしか興味がないなどと
言っておきながら、自分も相当のカーキチだ。
帰り道も涼子は存分に峠道を堪能した。
父親のことはバイクにしか興味がないなどと
言っておきながら、自分も相当のカーキチだ。
2026/09/28(月) 14:56:17.04ID:???
ロッジに着くとぼくは急いでタイヤ交換を
しなければならなかった。
チェックアウトの時間はとうに過ぎているのだ。
幸いオーナーがパンクしたタイヤを外しておいて
くれたので、1時間程度で作業が終了した。
しなければならなかった。
チェックアウトの時間はとうに過ぎているのだ。
幸いオーナーがパンクしたタイヤを外しておいて
くれたので、1時間程度で作業が終了した。
2026/09/28(月) 15:00:12.51ID:???
ぼくはオーナーにお礼を言って
高崎で買ったみやげを手渡した。
チェックアウトすると言うと、オーナーは
もう1泊していくようにすすめてくれたが、
ぼくは丁重に断った。
涼子がやってきてお金はいらないから
泊まっていけと言ったが、ぼくはその好意に
甘えることはできなかった。
「また来てね。」
涼子は、そういうと右手を差し出した。
ぼくは涼子と握手をしながら約束を交わした。
涼子はぼくの姿が見えなくなるまで
手を振ってくれた。
高崎で買ったみやげを手渡した。
チェックアウトすると言うと、オーナーは
もう1泊していくようにすすめてくれたが、
ぼくは丁重に断った。
涼子がやってきてお金はいらないから
泊まっていけと言ったが、ぼくはその好意に
甘えることはできなかった。
「また来てね。」
涼子は、そういうと右手を差し出した。
ぼくは涼子と握手をしながら約束を交わした。
涼子はぼくの姿が見えなくなるまで
手を振ってくれた。
2026/09/28(月) 15:02:42.16ID:???
東京に帰ったぼくは、
毎日バイトに明け暮れた。
涼子のところに行きたかったが、
免許とバイクのローンが残っているため、
とてもそんな余裕はなかった。
唯一可能性があったのは、バイト先の
バイク屋が休みになるお盆だけだったが、
母親が帰ってこいとうるさいので
仕方なく里帰りした。
毎日バイトに明け暮れた。
涼子のところに行きたかったが、
免許とバイクのローンが残っているため、
とてもそんな余裕はなかった。
唯一可能性があったのは、バイト先の
バイク屋が休みになるお盆だけだったが、
母親が帰ってこいとうるさいので
仕方なく里帰りした。
2026/09/29(火) 21:44:40.31ID:???
久々の実家は居心地が良かったが、
ぼくはバイトがあると言って
3日ほどで東京に戻った。
ぼくはバイトがあると言って
3日ほどで東京に戻った。
2026/09/29(火) 21:48:09.78ID:???
更に1ヶ月が過ぎ、クーラー無しの部屋でも
やっと熟睡ができるようになった。
その日は朝から風が強く、
台風の接近が天気予報をにぎわせていた。
「今日はもうあがっていいよ。
あと3時間くらいで暴風雨圏内だってよ。」
バイク屋のオヤジはそう言って店じまいを始めた。
やっと熟睡ができるようになった。
その日は朝から風が強く、
台風の接近が天気予報をにぎわせていた。
「今日はもうあがっていいよ。
あと3時間くらいで暴風雨圏内だってよ。」
バイク屋のオヤジはそう言って店じまいを始めた。
2026/09/29(火) 21:51:35.57ID:???
家に帰る途中、ぼくのバイクは風にあおられ
何度も危ない目にあった。
夜になると風と雨は本格的になり、
安アパートは今にもつぶれんばかりにかしいだ。
テレビも映らなくなってきたので、
仕方なく布団にはいると
突然電話のベルが鳴り響いた。
「あの、山根涼子です。軽井沢の…」
久々に聞く涼子の声だ。
「どうしたんですか?」
ぼくの問いに涼子は、なんでもないと
答えたが、その声はとても弱々しく、
今にも泣き出しそうだった。
何度も危ない目にあった。
夜になると風と雨は本格的になり、
安アパートは今にもつぶれんばかりにかしいだ。
テレビも映らなくなってきたので、
仕方なく布団にはいると
突然電話のベルが鳴り響いた。
「あの、山根涼子です。軽井沢の…」
久々に聞く涼子の声だ。
「どうしたんですか?」
ぼくの問いに涼子は、なんでもないと
答えたが、その声はとても弱々しく、
今にも泣き出しそうだった。
2026/09/29(火) 21:53:29.74ID:???
ぼくがどこからかけているのかと聞くと、
涼子は横浜のアパートからだと言った。
そういえば涼子は横浜の大学に通っていると
以前聞いたことがある。
涼子は横浜のアパートからだと言った。
そういえば涼子は横浜の大学に通っていると
以前聞いたことがある。
2026/09/29(火) 21:55:15.45ID:???
ぼくは涼子のか細い声に不安を感じ、
アパートまで行ってみることにした。
住所を聞くとそこは第3京浜の
港北インターのそばであることがわかった。
ここからは30分もかからないだろう。
アパートまで行ってみることにした。
住所を聞くとそこは第3京浜の
港北インターのそばであることがわかった。
ここからは30分もかからないだろう。
2026/09/29(火) 21:57:04.32ID:???
ぼくはカッパを着込み台風の中
バイクを走らせた。
幸い第三京浜は通行止めになっていなかった
ので、僕は暴風雨に吹き飛ばされそうに
なりながらも、なんとかの涼子のアパートに
たどり着くことができた。
バイクを走らせた。
幸い第三京浜は通行止めになっていなかった
ので、僕は暴風雨に吹き飛ばされそうに
なりながらも、なんとかの涼子のアパートに
たどり着くことができた。
2026/09/29(火) 21:58:57.41ID:???
涼子のアパートは、ペンションと言っても
通用するくらいのしゃれた造りだった。
まだ新しく造りもしっかりしている。
ぼくのアパートとは運泥の差だ。
2階の奥の部屋に行きチャイムを押す。
通用するくらいのしゃれた造りだった。
まだ新しく造りもしっかりしている。
ぼくのアパートとは運泥の差だ。
2階の奥の部屋に行きチャイムを押す。
2026/09/29(火) 22:02:01.10ID:???
涼子はぼくの顔を見るなり抱きついてきた。
顔面はそう白で体は小刻みにふるえている。
ぼくはただならぬ事態を感じ、
涼子に訳を聞いた。
「台風が怖いの。」
予期せぬ答にぼくはガク然とし、
体中の力が抜けた。
そして、快活で男勝りの涼子が台風を怖がる
姿を見て、ぼくは思わず吹き出してしまった。
涼子は一瞬驚いたようにぼくの顔を見ると、
急に怒りだした。
顔面はそう白で体は小刻みにふるえている。
ぼくはただならぬ事態を感じ、
涼子に訳を聞いた。
「台風が怖いの。」
予期せぬ答にぼくはガク然とし、
体中の力が抜けた。
そして、快活で男勝りの涼子が台風を怖がる
姿を見て、ぼくは思わず吹き出してしまった。
涼子は一瞬驚いたようにぼくの顔を見ると、
急に怒りだした。
2026/09/29(火) 22:04:43.08ID:???
ぼくに笑われたことが心外だったのだろう。
謝りながらもこらえきれずに笑うぼくを見て、
涼子は
「私が台風を怖がるのってそんなにおかしい?」
と言った。
僕がうなずくと、涼子はがっかりしたように
「そうかなあ。」
とつぶやいた。
謝りながらもこらえきれずに笑うぼくを見て、
涼子は
「私が台風を怖がるのってそんなにおかしい?」
と言った。
僕がうなずくと、涼子はがっかりしたように
「そうかなあ。」
とつぶやいた。
2026/09/30(水) 21:40:15.27ID:???
ぼくがズブぬれなのに気づいた涼子は、
あわててバスタオルを取ってくると
ぼくの頭を手荒に拭き始めた。
「服を脱いでこれを着て。」
渡されたスウェットは少し小さかったが、
いい匂いがした。
あわててバスタオルを取ってくると
ぼくの頭を手荒に拭き始めた。
「服を脱いでこれを着て。」
渡されたスウェットは少し小さかったが、
いい匂いがした。
2026/09/30(水) 21:42:13.38ID:???
涼子の部屋は結構広く、
きれいに片づけられていた。
必要最低限の家具はシンプルで、
性別を感じさせない。
今の今まで思い切り抱きしめられていた
大きなクッションが、原型を取り戻すべく
ベッドの上でもがいていた。
きれいに片づけられていた。
必要最低限の家具はシンプルで、
性別を感じさせない。
今の今まで思い切り抱きしめられていた
大きなクッションが、原型を取り戻すべく
ベッドの上でもがいていた。
2026/09/30(水) 21:44:04.66ID:???
涼子はぼくが来たことと、ぼくに笑い
飛ばされたことで、平静を取り戻していった。
風雨も多少弱まってきたようだ。
涼子はコーヒーを運んでくると、
「まさか来てくれるとは思わなかったわ。」
と言って微笑んだ。
飛ばされたことで、平静を取り戻していった。
風雨も多少弱まってきたようだ。
涼子はコーヒーを運んでくると、
「まさか来てくれるとは思わなかったわ。」
と言って微笑んだ。
2026/09/30(水) 21:48:20.97ID:???
ぼくは頭の中にあった疑問を
思い切ってたずねた。
「どうしてうちに電話したの?」
「う、うん、その、お父さんに、
お父さんに電話したのね。
そしたら、あなたの家の電話を教えてくれたの。
なんだかうちのお父さん
あなたのことを気に入ったみたいで、
…うちの学校女子大だから。」
涼子はしどろもどろになってこう答えた。
ぼくは納得したようなしないような気持ち
だったが、この件はもうこれ以上詮索しない
ことにした。
「私がどうして台風が怖いのかっていうとね。」
涼子は突然話し始めた。
思い切ってたずねた。
「どうしてうちに電話したの?」
「う、うん、その、お父さんに、
お父さんに電話したのね。
そしたら、あなたの家の電話を教えてくれたの。
なんだかうちのお父さん
あなたのことを気に入ったみたいで、
…うちの学校女子大だから。」
涼子はしどろもどろになってこう答えた。
ぼくは納得したようなしないような気持ち
だったが、この件はもうこれ以上詮索しない
ことにした。
「私がどうして台風が怖いのかっていうとね。」
涼子は突然話し始めた。
2026/09/30(水) 21:54:05.70ID:???
「私がまだ小学校に入る前のことなんだけど。
お父さん、九州で開催されるレースに
出場したのね。
当然私もついて行ったんだけど。
レースの前の日に台風が来てて、
でもお父さんはマシンのセッティングやら
なにやらで忙しいでしょ。
だから、私1人旅館で待ってたの。
そしたら、どんどん台風が近づいてきて、
寝てられないくらいうるさくなってたの。
それが、しばらくすると急にパタッと
静かになって雨もやんじゃったから、私、
不思議に思って、窓から顔出してみたのね。
そしたら、もう怖いくらいきれいな星空で、
天の川なんかもすっごいの。
私、なんだか知らないけど魔法だと
思い込んじゃって。
きっと誰から私に、魔法で素敵なプレゼントを
くれたんだって。
そう思ったら、嬉しくって嬉しくって。
外に飛び出していって、星空を見上げながら
踊ってたの。
お父さん、九州で開催されるレースに
出場したのね。
当然私もついて行ったんだけど。
レースの前の日に台風が来てて、
でもお父さんはマシンのセッティングやら
なにやらで忙しいでしょ。
だから、私1人旅館で待ってたの。
そしたら、どんどん台風が近づいてきて、
寝てられないくらいうるさくなってたの。
それが、しばらくすると急にパタッと
静かになって雨もやんじゃったから、私、
不思議に思って、窓から顔出してみたのね。
そしたら、もう怖いくらいきれいな星空で、
天の川なんかもすっごいの。
私、なんだか知らないけど魔法だと
思い込んじゃって。
きっと誰から私に、魔法で素敵なプレゼントを
くれたんだって。
そう思ったら、嬉しくって嬉しくって。
外に飛び出していって、星空を見上げながら
踊ってたの。
2026/09/30(水) 21:58:16.71ID:???
そしたら、急にまた台風がやって来て。
私、急いで戻ろうと思ったんだけど、
風が強くて思うように歩けないの。
そのうち風に吹き飛ばされそうになって、
そばにあった木にずっとしがみついてたの。
お父さんが助けに来てくれるまでの間、
1時間近くもよ。
その後、風邪ひいちゃって、
40度近くの熱が出ちゃうし、
お父さんはレースで転倒するし、さんざん。
それ以来、台風が怖くなっちゃったの。」
涼子は一方的にしゃべり終わると、
ため息をついた。
私、急いで戻ろうと思ったんだけど、
風が強くて思うように歩けないの。
そのうち風に吹き飛ばされそうになって、
そばにあった木にずっとしがみついてたの。
お父さんが助けに来てくれるまでの間、
1時間近くもよ。
その後、風邪ひいちゃって、
40度近くの熱が出ちゃうし、
お父さんはレースで転倒するし、さんざん。
それ以来、台風が怖くなっちゃったの。」
涼子は一方的にしゃべり終わると、
ため息をついた。
2026/09/30(水) 22:02:23.74ID:???
「ふうん、それって台風の目?」
とぼくが聞くと、涼子は
「なあんだ、知ってたの。
つまんない。」
と言ってほっぺたをふくらませた。
「前に一度聞いたことがあるんだ。
台風の目の中は素晴らしい快晴で、
雨も風もまったく無いって。
でも、本当にそんなにきれいなの?」
「うん、今までたくさん星を見てきたけど、
あれより感動したことないわ。」
涼子はそう言うと、思い出すように空中を
見つめた。
とぼくが聞くと、涼子は
「なあんだ、知ってたの。
つまんない。」
と言ってほっぺたをふくらませた。
「前に一度聞いたことがあるんだ。
台風の目の中は素晴らしい快晴で、
雨も風もまったく無いって。
でも、本当にそんなにきれいなの?」
「うん、今までたくさん星を見てきたけど、
あれより感動したことないわ。」
涼子はそう言うと、思い出すように空中を
見つめた。
2026/09/30(水) 22:06:55.01ID:???
沈黙が流れ、ぼくは突然、深夜に女の子と
2人きりという現実を思い出した。
考えないようにすればすうるほど、
それはぼくの頭の中を支配していく。
「そろそろ帰ろうかな。」
ぼくの言葉に涼子は驚いたように
「まだ雨降ってるわよ。」
と言って、カーテンを開けた。
雨は強弱をつけながら、窓ガラスに
当たっている。
「でもお邪魔だろうし…」
「なに言ってんのよ。」
2人きりという現実を思い出した。
考えないようにすればすうるほど、
それはぼくの頭の中を支配していく。
「そろそろ帰ろうかな。」
ぼくの言葉に涼子は驚いたように
「まだ雨降ってるわよ。」
と言って、カーテンを開けた。
雨は強弱をつけながら、窓ガラスに
当たっている。
「でもお邪魔だろうし…」
「なに言ってんのよ。」
2026/09/30(水) 22:09:06.82ID:???
涼子はテレビをつけた。
画面には日本地図が表示され、
台風はふらふらとした軌跡を描きながら、
海に抜けようとしていた。
「後少しで暴風雨圏内から出るみたいだから、
そうしたら帰ればいいわ。」
涼子はそう言いながら、
僕のカップにコーヒーをそそいだ。
「じゃあお言葉には甘えて。」
画面には日本地図が表示され、
台風はふらふらとした軌跡を描きながら、
海に抜けようとしていた。
「後少しで暴風雨圏内から出るみたいだから、
そうしたら帰ればいいわ。」
涼子はそう言いながら、
僕のカップにコーヒーをそそいだ。
「じゃあお言葉には甘えて。」
2026/10/04(日) 17:00:03.62ID:???
ぼくはなんとか場をつなぐ方法を考え、
それとなく部屋を見渡した。
後ろにこの部屋には不釣り合いなほどの
大きな本棚がある。
「本好きなんだね。」
ぼくが言うと、涼子は
「でも、文字はほとんどない本ばかりなの。」
と言って笑った。
確かにそのほとんどは、美術書と星の本だった。
「友達に『あんたの読む本って
ほんとにビジュアル系ばっかりね。』って、
いつも言われるのよ。」
ぼくは涼子のセリフの中に出てきた友達が、
女言葉だったことをなんとなく嬉しく思った。
それとなく部屋を見渡した。
後ろにこの部屋には不釣り合いなほどの
大きな本棚がある。
「本好きなんだね。」
ぼくが言うと、涼子は
「でも、文字はほとんどない本ばかりなの。」
と言って笑った。
確かにそのほとんどは、美術書と星の本だった。
「友達に『あんたの読む本って
ほんとにビジュアル系ばっかりね。』って、
いつも言われるのよ。」
ぼくは涼子のセリフの中に出てきた友達が、
女言葉だったことをなんとなく嬉しく思った。
2026/10/04(日) 17:05:38.55ID:???
「画家では誰が好き?」
ぼくの質問に涼子は少し考えてから
「デュフィかな。」
と言い、そして、こう続けた。
「私きれいなものを見るのが好きなの。
絵でも星でも花火でも、きれいなものなら
なんでも好き。」
ぼくは目からウロコが落ちる思いだった。
ぼくも小さい頃から星や花火を見るのが好きだ。
柄にもなくモネやルノワール等の印象派の
絵を見るのが好きだし、写真にも興味がある。
でも、これらを
『きれいなものを見ること』と、
一緒くたにしたことはない。
それぞれ、別のことだと思っていた。
しかし言われてみればその通りだ。
美しいものを見るのが好きなのだ。
ぼくの質問に涼子は少し考えてから
「デュフィかな。」
と言い、そして、こう続けた。
「私きれいなものを見るのが好きなの。
絵でも星でも花火でも、きれいなものなら
なんでも好き。」
ぼくは目からウロコが落ちる思いだった。
ぼくも小さい頃から星や花火を見るのが好きだ。
柄にもなくモネやルノワール等の印象派の
絵を見るのが好きだし、写真にも興味がある。
でも、これらを
『きれいなものを見ること』と、
一緒くたにしたことはない。
それぞれ、別のことだと思っていた。
しかし言われてみればその通りだ。
美しいものを見るのが好きなのだ。
2026/10/04(日) 17:10:04.42ID:???
ぼくもそうだと言うと、涼子はやけに喜んだ。
そして、ぼくの来週の予定を聞いた。
水曜日以外はバイトだと答えると、
「じゃあ、水曜日に
横浜美術館に行きましょう。
ちょうど、デュフィ展やってるのよ。」
と言った。
「行くのはいいけど、
デュフィって知らないなあ。」
「大丈夫。堅苦しい絵じゃないから。
お花とかヴァイオリンとかの絵が多くて、
とっても素敵よ。きっと気に入るわ。」
そして、ぼくの来週の予定を聞いた。
水曜日以外はバイトだと答えると、
「じゃあ、水曜日に
横浜美術館に行きましょう。
ちょうど、デュフィ展やってるのよ。」
と言った。
「行くのはいいけど、
デュフィって知らないなあ。」
「大丈夫。堅苦しい絵じゃないから。
お花とかヴァイオリンとかの絵が多くて、
とっても素敵よ。きっと気に入るわ。」
2026/10/04(日) 17:12:07.99ID:???
涼子はそれから、デュフィやマチス、
フォービズムや野獣派について説明してくれた。
内容はイマイチ良くわからなかったが、
説明している最中の涼子の顔はハッとするほど
美しく、ぼくは思わず見とれてしまった。
フォービズムや野獣派について説明してくれた。
内容はイマイチ良くわからなかったが、
説明している最中の涼子の顔はハッとするほど
美しく、ぼくは思わず見とれてしまった。
2026/10/04(日) 17:14:39.84ID:???
鳥の声が聞こえてきたのでカーテンを
開けると、外は明るくなっていた。
風はまだ収まっていないが、
雨は完全にやんでいる。
ぼくが帰ると言うと、涼子は
「来てくれてありがとう。
ほんとに怖かったからとっても嬉しかったわ。」
と言って微笑んだ。
ぼくはバイクで帰る途中
ずっと涼子のことを考えていた。
開けると、外は明るくなっていた。
風はまだ収まっていないが、
雨は完全にやんでいる。
ぼくが帰ると言うと、涼子は
「来てくれてありがとう。
ほんとに怖かったからとっても嬉しかったわ。」
と言って微笑んだ。
ぼくはバイクで帰る途中
ずっと涼子のことを考えていた。
2026/10/04(日) 17:25:25.19ID:???
学校が始まり、ぼくと涼子は
週に1、2回会うようになっていた。
ぼくらは、夕方、お互いの学校が終わった後
落ち合い、色々なところに星を見に行った。
奥多摩や秩父などに涼子の運転する車で行き
食事をして星を見て帰ってくる。
ぼくらはつき合っているとは言えなかったかも
しれないが、お互いの関係に満足していた。
週に1、2回会うようになっていた。
ぼくらは、夕方、お互いの学校が終わった後
落ち合い、色々なところに星を見に行った。
奥多摩や秩父などに涼子の運転する車で行き
食事をして星を見て帰ってくる。
ぼくらはつき合っているとは言えなかったかも
しれないが、お互いの関係に満足していた。
2026/10/04(日) 17:27:20.82ID:???
夜空にペガサスが輝きだし、
牛飼いがその役目を終える頃、
涼子は僕を学園祭に招待してくれた。
涼子の学校はいわゆるお嬢様校だったので、
招待券がなければ入ることができない。
友達によるとその招待券はプラチナチケット
と呼ばれ、大変価値があるということだ。
牛飼いがその役目を終える頃、
涼子は僕を学園祭に招待してくれた。
涼子の学校はいわゆるお嬢様校だったので、
招待券がなければ入ることができない。
友達によるとその招待券はプラチナチケット
と呼ばれ、大変価値があるということだ。
2026/10/04(日) 17:29:10.78ID:???
女子大の学園祭ということでぼくは多少
緊張していたが、当日実際に行ってみると、
屋台や催し物を運営しているのが
すべて女性というだけで、
普通の学園祭と何ら変わりはなかった。
緊張していたが、当日実際に行ってみると、
屋台や催し物を運営しているのが
すべて女性というだけで、
普通の学園祭と何ら変わりはなかった。
2026/10/04(日) 17:30:36.95ID:???
涼子が所属するスキーのサークルは、
クレープの屋台を出店していた。
涼子は主に焼き方だったが、なかなか様に
なっていて、結構繁盛していた。
クレープの屋台を出店していた。
涼子は主に焼き方だったが、なかなか様に
なっていて、結構繁盛していた。
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