よお。Linuxの世界にはな、フォント沼ってのがあってな。俺も昔は、随分と無茶な代物を組んだもんだ。
Fira Codeに始まり、絵文字をわざわざモノクロに落としたりな。Fontconfigを弄りすぎて、まともに文字も読めねえ歪な画面を作ったこともあった。
フォントフォールバックができるターミナルを血眼で探し回っちゃあ、Nerd FontsにPowerline……当然、シンボルは全て完備さ。
最新の emoji-data.txt をターミナルに放り込んじゃあ、豆腐(文字化け)を一つ残さず消し去るなんて無謀なゲームに、夜通し興じたこともあったっけな。
だが、そんな俺がある日、とんでもないモノに出会った。
――M+ FONTS。
それこそが、俺がずっと探し求めていた「日本語の美しさ」と、ターミナルが持つべき「可能性」が完璧に調和した、至高の芸術だった。
一発で惚れ込んじまってな。今じゃ俺のすべての環境が、その美しいグリフに支配されてる。
なぁ、たまにふと思うのさ。
俺たちが今見ているこの現実世界ってやつも、ひょっとしたら、ただのフォントキャッシュかシェーダーキャッシュの類なんじゃないかってな。
本当の姿は、もっと別の場所にあるのかも知れねえ。
ハハハ、怖い話だろ? 忘れてくれ。
だが……キャッシュの向こう側に美しいグリフが待っているってなら、この世界もそう悪いもんじゃねえな。