立つかな?
立ったら投下していきます。
STAY WITH ME ドラえもん
【STAY WITH ME ドラえもん】
ずっと続いていくと思った僕らの道。
それは、あっさりと途切れた。
まず最初はドラえもんだった。
中学への進学を前に、未来へ帰ると言い出したのだ。
のび太「そんな、どうして!」
ドラえもん「いつか帰るって言ってただろ」
のび太「だからってこんな急に帰ることないだろ!」
ドラえもん「そんなこと言われても仕方ないんだよ。このままじゃ滞在期限を過ぎちゃうんだ」
のび太「滞在期限? 何それ?」
ドラえもん「僕ら未来の者がこの時代にいてもいい期限さ。これは人によって違うんだ」
のび太「守らなかったらどうなるの?」
ドラえもん「未来に深刻なダメージが出る。それにそんなことは、そもそもタイムパトロールが許さないよ」
のび太「そっか……。どうしようもないんだね」
ドラえもん「まあ、そんな心配するなよ。夏休みとか冬休みには遊びに来るからさ」
のび太「は?」
ドラえもん「は?」
のび太「どーゆうことだよ!? 未来に帰るんだろ!?」
ドラえもん「あー、そういうことか」
のび太「どういうことだよ?」
ドラえもん「正確に言えば、僕の滞在期限は5年なんだ。だからまだ半分ぐらいある」
のび太「じゃあ期限ギリギリまでいればいいじゃないか」
ドラえもん「バカ。この時代にいたって5年なんて、あっという間だぞ。それよりも休みの時だけ来れば一生会えるじゃないか」
のび太「ん? んん? その5年っていうのは……」
ドラえもん「文字通り僕がここにいれる期間のことだよ。だから、未来に帰ってる間は含まれないんだ」
のび太「な、なーんだ」
ドラえもん「なんだと思ったんだい。時々未来の君を連れてきたこともあっただろ」
のび太「あー、そういえば」
ドラえもん「どうせ君も中学生になって忙しくなるんだ。ちょうどいい頃合いだよ」
のび太「さみしくなるな」
ドラえもん「そんなこともいってられなくなるさ。じゃ、次の夏休みにね」
のび太「うん、バイバイ」
結局、ドラえもんとの別れは、さみしいんだかさみしくないんだかよくわからないものだった。
おまけにドラえもんときたら……。
ドラえもん「やあ、のび太君。どう? 中学校生活は? もう慣れた?」
のび太「まだ中学にすらなってないよ!」
ドラえもん「え?」
のび太「まだあれから3日だよ! 中学生にすらなってないよ! ていうか何の用!?」
ドラえもん「いやぁ、いきなり夏休みなんて日が開きすぎるなあって。だから、こうやって少しずつ慣らしていこうかなと思って」
こんな調子だったもんだから、お別れという感じはあまりしなかった。
考えてみれば将来の僕がドラえもんに会っていたんだから、本当の意味で未来に帰るってのは、ありえなかったわけだけど。
ずっと続いていくと思った僕らの道。
それは、あっさりと途切れた。
まず最初はドラえもんだった。
中学への進学を前に、未来へ帰ると言い出したのだ。
のび太「そんな、どうして!」
ドラえもん「いつか帰るって言ってただろ」
のび太「だからってこんな急に帰ることないだろ!」
ドラえもん「そんなこと言われても仕方ないんだよ。このままじゃ滞在期限を過ぎちゃうんだ」
のび太「滞在期限? 何それ?」
ドラえもん「僕ら未来の者がこの時代にいてもいい期限さ。これは人によって違うんだ」
のび太「守らなかったらどうなるの?」
ドラえもん「未来に深刻なダメージが出る。それにそんなことは、そもそもタイムパトロールが許さないよ」
のび太「そっか……。どうしようもないんだね」
ドラえもん「まあ、そんな心配するなよ。夏休みとか冬休みには遊びに来るからさ」
のび太「は?」
ドラえもん「は?」
のび太「どーゆうことだよ!? 未来に帰るんだろ!?」
ドラえもん「あー、そういうことか」
のび太「どういうことだよ?」
ドラえもん「正確に言えば、僕の滞在期限は5年なんだ。だからまだ半分ぐらいある」
のび太「じゃあ期限ギリギリまでいればいいじゃないか」
ドラえもん「バカ。この時代にいたって5年なんて、あっという間だぞ。それよりも休みの時だけ来れば一生会えるじゃないか」
のび太「ん? んん? その5年っていうのは……」
ドラえもん「文字通り僕がここにいれる期間のことだよ。だから、未来に帰ってる間は含まれないんだ」
のび太「な、なーんだ」
ドラえもん「なんだと思ったんだい。時々未来の君を連れてきたこともあっただろ」
のび太「あー、そういえば」
ドラえもん「どうせ君も中学生になって忙しくなるんだ。ちょうどいい頃合いだよ」
のび太「さみしくなるな」
ドラえもん「そんなこともいってられなくなるさ。じゃ、次の夏休みにね」
のび太「うん、バイバイ」
結局、ドラえもんとの別れは、さみしいんだかさみしくないんだかよくわからないものだった。
おまけにドラえもんときたら……。
ドラえもん「やあ、のび太君。どう? 中学校生活は? もう慣れた?」
のび太「まだ中学にすらなってないよ!」
ドラえもん「え?」
のび太「まだあれから3日だよ! 中学生にすらなってないよ! ていうか何の用!?」
ドラえもん「いやぁ、いきなり夏休みなんて日が開きすぎるなあって。だから、こうやって少しずつ慣らしていこうかなと思って」
こんな調子だったもんだから、お別れという感じはあまりしなかった。
考えてみれば将来の僕がドラえもんに会っていたんだから、本当の意味で未来に帰るってのは、ありえなかったわけだけど。
だけど、次の別れは本当だった。
ずっと続いていくと思っていた僕らの関係。
それをまっさきに壊したのは……スネ夫だった。
ジャイアン「てめえ何つった! もういっぺん言ってみろ!」
スネ夫「何べん言っても変わらないよ!」
ジャイアン「なんで黙ってやがった!」
スネ夫「だって、落ちたら恥ずかしいし……」
ジャイアンから招集を受けて空き地に行ってみると、スネ夫がみんなに囲まれてた。
のび太「何があったの?」
ジャイアン「おう、のび太。やっと来たか」
ジャイアンは肩で息をしていた。
周りの安雄やはる夫たちも、いらいらした様子でスネ夫を見つめている。
ジャイアン「おい、スネ夫。もういっぺん言ってみやがれ。のび太君にも分かるようにな」
ジャイアンはスネ夫を小突きながらそう言った。
もう一体、何度この光景が繰り返されたのだろう。
スネ夫はよく見るとボロボロだった。
スネ夫「僕は私立中学に受かった。だから中学からはみんなとは別の学校に行く」
のび太「私立中学って?」
ジャイアン「こいつみてえなボンボンが行くお上品な学校だよ」
のび太「へえ、すごいじゃない。いつ受けてたの?」
ジャイアン「二ヵ月も前だよ! こいつ、黙ってやがったんだ!」
のび太「ええーっ!!」
びっくりした。
そりゃびっくりした。
のび太「な、何で言わなかったのさ!」
スネ夫「言おうと思ったよ! でも、いざみんなと別れると思うと言えなかったんだよ!」
スネ夫の告白に僕らはシンっとなった。
続いていくと思った僕らの道。
それはぷっつりと途絶えたのだった。
スネ夫「さあ、殴れよ! それで気が済むんだったら!」
おそらくスネ夫は覚悟を決めてきたのだろう。
二ヵ月もみんなをだましていたのだから。
しかし――
ジャイアン「ちっ。おい、誰か殴りたい奴いるか?」
ジャイアンの声に応える者は誰もいない。
ジャイアン「もういい。白けちまった。俺は帰るぜ」
やがて、集まったみんなは帰っていった。
僕とスネ夫を残して。
ずっと続いていくと思っていた僕らの関係。
それをまっさきに壊したのは……スネ夫だった。
ジャイアン「てめえ何つった! もういっぺん言ってみろ!」
スネ夫「何べん言っても変わらないよ!」
ジャイアン「なんで黙ってやがった!」
スネ夫「だって、落ちたら恥ずかしいし……」
ジャイアンから招集を受けて空き地に行ってみると、スネ夫がみんなに囲まれてた。
のび太「何があったの?」
ジャイアン「おう、のび太。やっと来たか」
ジャイアンは肩で息をしていた。
周りの安雄やはる夫たちも、いらいらした様子でスネ夫を見つめている。
ジャイアン「おい、スネ夫。もういっぺん言ってみやがれ。のび太君にも分かるようにな」
ジャイアンはスネ夫を小突きながらそう言った。
もう一体、何度この光景が繰り返されたのだろう。
スネ夫はよく見るとボロボロだった。
スネ夫「僕は私立中学に受かった。だから中学からはみんなとは別の学校に行く」
のび太「私立中学って?」
ジャイアン「こいつみてえなボンボンが行くお上品な学校だよ」
のび太「へえ、すごいじゃない。いつ受けてたの?」
ジャイアン「二ヵ月も前だよ! こいつ、黙ってやがったんだ!」
のび太「ええーっ!!」
びっくりした。
そりゃびっくりした。
のび太「な、何で言わなかったのさ!」
スネ夫「言おうと思ったよ! でも、いざみんなと別れると思うと言えなかったんだよ!」
スネ夫の告白に僕らはシンっとなった。
続いていくと思った僕らの道。
それはぷっつりと途絶えたのだった。
スネ夫「さあ、殴れよ! それで気が済むんだったら!」
おそらくスネ夫は覚悟を決めてきたのだろう。
二ヵ月もみんなをだましていたのだから。
しかし――
ジャイアン「ちっ。おい、誰か殴りたい奴いるか?」
ジャイアンの声に応える者は誰もいない。
ジャイアン「もういい。白けちまった。俺は帰るぜ」
やがて、集まったみんなは帰っていった。
僕とスネ夫を残して。
スネ夫「なんだよのび太。なんか用か?」
のび太「いや、別に……」
単に遅れてやってきたために、スピード感についていけなかっただけだった。
スネ夫「僕も帰るからな。じゃあな」
のび太「あ、ちょっと!」
スネ夫「何だよ!?」
どうして僕はこうなんだろう。
スネ夫に何か気の利いたことを言うべき場面だってのに、僕の口から出たのは、まったく空気を読めてない一言だった。
のび太「いや、ドラえもんも未来に帰っちゃったんだけど、夏休みは遊びに来るらしいんだ、スネ夫も来るかい?」
スネ夫「のび太……お前」
その時のスネ夫は。たいそう間抜けな顔をしていた。
そして、間抜け顔から真剣な顔に変わったかと思うと。
スネ夫「何で早く言わないんだ! バカ!」
のび太「え、ええ!?」
スネ夫「ジャイアンに伝えに行くぞ! しずかちゃんにもだ!」
のび太「ええーっ、うん」
何故か僕はスネ夫に怒られたのだった。
のび太「いや、別に……」
単に遅れてやってきたために、スピード感についていけなかっただけだった。
スネ夫「僕も帰るからな。じゃあな」
のび太「あ、ちょっと!」
スネ夫「何だよ!?」
どうして僕はこうなんだろう。
スネ夫に何か気の利いたことを言うべき場面だってのに、僕の口から出たのは、まったく空気を読めてない一言だった。
のび太「いや、ドラえもんも未来に帰っちゃったんだけど、夏休みは遊びに来るらしいんだ、スネ夫も来るかい?」
スネ夫「のび太……お前」
その時のスネ夫は。たいそう間抜けな顔をしていた。
そして、間抜け顔から真剣な顔に変わったかと思うと。
スネ夫「何で早く言わないんだ! バカ!」
のび太「え、ええ!?」
スネ夫「ジャイアンに伝えに行くぞ! しずかちゃんにもだ!」
のび太「ええーっ、うん」
何故か僕はスネ夫に怒られたのだった。
それから僕らは中学校に入った。
スネ夫はいなくなったけど、他のメンツはほとんど小学校と変わらず。
僕がいて、しずかちゃんがいて、ジャイアンがいて、他のメンバーもいて、あんまりうれしくもないけど出木杉も一緒だった。
肝心のいなくなったスネ夫も、空き地には時々顔を出してくれて、僕らはいつも通り遊んだのだった。
いつも通り野球をしたり、しずかちゃんの制服がかわいいって話で盛り上がったり、スネ夫の学校の愚痴話を聞かされたり。
だけど、それも中学に入って一か月が過ぎるまでだった。
そこで初めて、僕らは中学に入ったということをまざまざと知ることになった。
スネ夫「そういえば、君達ちゃんと勉強とかしてる?」
ジャイアン「あ? そんなもんいつも通りだろ」
スネ夫「それ、勉強してないってこと?」
ジャイアン「そうとも言うな」
スネ夫「ジャイアン、勉強はしておいた方がいいよ。いくら公立っていってもさあ」
ジャイアン「うるせえ! なんだ、またお坊ちゃん学校自慢か!」
スネ夫「そうじゃないよ。そりゃ僕の学校みたいに落第とかは、そうそうないだろうけどさ」
ジャイアン「ラクダイ? なんだそれ、旨いのか?」
しずか「聞いたことあるわ。中間試験とか期末試験のことよね?」
のび太「チューカン試験? キマツ試験?」
スネ夫「中学からは学期中に大きな試験が1、2回あるんだよ。それを中間試験、期末試験って言うんだ」
ジャイアン「何だよ、立派な名前つけやがって。小学校の時とどう変わるんだよ」
スネ夫「全然違うよ。小学校の時は先生の気まぐれみたいなもんだっただろ。中学は学年で統一の試験になるんだ」
しずか「そういえば、試験範囲も小学校の時とは比較にならないって聞いたわ」
のび太「ええ〜っ!」
ジャイアン「てきとうにやりゃいいだろ、そんなの」
スネ夫「あのねえ、ジャイアン。いや、まあそっちの学校ならそれでもいいのか?」
しずか「よくはないわよ。成績悪いと親を呼び出されるわよ」
のび太「ええ〜っ!」
ジャイアン「なんでえ。そんなの小学校と同じじゃねえか」
スネ夫「あ〜、もう。とにかく、僕の学校じゃ全員順位が張り出されるから、僕はGW過ぎたら試験勉強。ここには来ない、いいね?」
しずか「ええっ、スネ夫さんところ全員張り出しなの? いやだわ、私のところも……」
スネ夫「いや、たぶんそっちは成績優秀者だけじゃないかなあ?」」
しずか「不安だわ。私帰って勉強しなきゃ」
のび太「あ、しずかちゃ〜ん!」
ジャイアン「この馬鹿! しずかちゃん帰っちまったじゃねえか!」
スネ夫「わあ、ごめんって。でも、ジャイアンも本気で考えたほうが……」
「おーい」
ジャイアン「お、安雄たちも来たな。野球しようぜ」
スネ夫「んもう……」
スネ夫はいなくなったけど、他のメンツはほとんど小学校と変わらず。
僕がいて、しずかちゃんがいて、ジャイアンがいて、他のメンバーもいて、あんまりうれしくもないけど出木杉も一緒だった。
肝心のいなくなったスネ夫も、空き地には時々顔を出してくれて、僕らはいつも通り遊んだのだった。
いつも通り野球をしたり、しずかちゃんの制服がかわいいって話で盛り上がったり、スネ夫の学校の愚痴話を聞かされたり。
だけど、それも中学に入って一か月が過ぎるまでだった。
そこで初めて、僕らは中学に入ったということをまざまざと知ることになった。
スネ夫「そういえば、君達ちゃんと勉強とかしてる?」
ジャイアン「あ? そんなもんいつも通りだろ」
スネ夫「それ、勉強してないってこと?」
ジャイアン「そうとも言うな」
スネ夫「ジャイアン、勉強はしておいた方がいいよ。いくら公立っていってもさあ」
ジャイアン「うるせえ! なんだ、またお坊ちゃん学校自慢か!」
スネ夫「そうじゃないよ。そりゃ僕の学校みたいに落第とかは、そうそうないだろうけどさ」
ジャイアン「ラクダイ? なんだそれ、旨いのか?」
しずか「聞いたことあるわ。中間試験とか期末試験のことよね?」
のび太「チューカン試験? キマツ試験?」
スネ夫「中学からは学期中に大きな試験が1、2回あるんだよ。それを中間試験、期末試験って言うんだ」
ジャイアン「何だよ、立派な名前つけやがって。小学校の時とどう変わるんだよ」
スネ夫「全然違うよ。小学校の時は先生の気まぐれみたいなもんだっただろ。中学は学年で統一の試験になるんだ」
しずか「そういえば、試験範囲も小学校の時とは比較にならないって聞いたわ」
のび太「ええ〜っ!」
ジャイアン「てきとうにやりゃいいだろ、そんなの」
スネ夫「あのねえ、ジャイアン。いや、まあそっちの学校ならそれでもいいのか?」
しずか「よくはないわよ。成績悪いと親を呼び出されるわよ」
のび太「ええ〜っ!」
ジャイアン「なんでえ。そんなの小学校と同じじゃねえか」
スネ夫「あ〜、もう。とにかく、僕の学校じゃ全員順位が張り出されるから、僕はGW過ぎたら試験勉強。ここには来ない、いいね?」
しずか「ええっ、スネ夫さんところ全員張り出しなの? いやだわ、私のところも……」
スネ夫「いや、たぶんそっちは成績優秀者だけじゃないかなあ?」」
しずか「不安だわ。私帰って勉強しなきゃ」
のび太「あ、しずかちゃ〜ん!」
ジャイアン「この馬鹿! しずかちゃん帰っちまったじゃねえか!」
スネ夫「わあ、ごめんって。でも、ジャイアンも本気で考えたほうが……」
「おーい」
ジャイアン「お、安雄たちも来たな。野球しようぜ」
スネ夫「んもう……」
僕たちは知らなかった。
中学校は小学校とは違うということを。
中間試験はヤバイ。
そんな恐れと噂はじわじわと僕らを襲い始める。
一人、また一人と空き地に来るものはいなくなり、中間試験1週間前になると誰も来なくなった。
残ったのは中間試験ってのがどんなのか分かってない僕と、小学校と中学校でそう変わってたまるかと意固地になってるジャイアンだけだった。
ジャイアン「なんでぇ、なんでぇ。試験が何だってんだ」
のび太「ほんとだね。みんな薄情だなあ」
ジャイアン「まったく、俺様も見る目がねえなあ。心の友はのび太君だけだぜ」
のび太「やだなあ、照れるじゃないか」
ジャイアン「のび太……」
のび太「ジャイアン……」
全く現実を見てなかったバカ2名をぶん殴ってやりたい。
あの時の僕は、現実逃避以前に現実そのものを理解してなかったと思う。
中学校は小学校とは違うということを。
中間試験はヤバイ。
そんな恐れと噂はじわじわと僕らを襲い始める。
一人、また一人と空き地に来るものはいなくなり、中間試験1週間前になると誰も来なくなった。
残ったのは中間試験ってのがどんなのか分かってない僕と、小学校と中学校でそう変わってたまるかと意固地になってるジャイアンだけだった。
ジャイアン「なんでぇ、なんでぇ。試験が何だってんだ」
のび太「ほんとだね。みんな薄情だなあ」
ジャイアン「まったく、俺様も見る目がねえなあ。心の友はのび太君だけだぜ」
のび太「やだなあ、照れるじゃないか」
ジャイアン「のび太……」
のび太「ジャイアン……」
全く現実を見てなかったバカ2名をぶん殴ってやりたい。
あの時の僕は、現実逃避以前に現実そのものを理解してなかったと思う。
結局……。
1学期が終わるころには、僕とジャイアンは見事なまでに落ちこぼれていた。
空き地に来る者はもう誰もいない。
みんな自分のペースで勉強するようになった。
というより、校内最下位のバカ二名に係わるのをやめたんだろう。
逆に校内では出木杉が大人気だった。
そりゃそうだ。
テストができるやつだってのは小学校の仲間ならみんな知っていたが、中間試験、期末試験と学内一位で張り出されたんだ。
分かりやすいくらいに校内は『デキスギさんスゲー!』と黄色い声で一色になった。
校内の女子はもちろんのこと、今までジャイアンに従っていた連中ですら今じゃみんな出木杉派だ。
分かりやすいまでの人気逆転に、最初は激昂していたジャイアンも、1学期が終わるころにはすっかり意気消沈していた。
中学校をナメていた僕らは、分かりやすいほどに負け犬だった。
そんな負け犬2匹は、今日も何をするというわけでもなく空き地に集まっている。
ジャイアン「……なあのび太」
のび太「……なんだいジャイアン」
ジャイアン「期末試験の順位、何位だった?」
のび太「驚いたことに最下位一歩手前」
ジャイアン「俺がその最下位」
のび太「ジャイアンってそこまで頭悪かったっけ?」
ジャイアン「意地になりすぎた。全く勉強してなかったんだ」
のび太「まあ、僕も9点なんだけどさ。全教科合わせて」
ジャイアン「そっかぁ。俺8点」
二人して大きなため息。
情けないほどに、どんぐりの背比べだった。
1学期が終わるころには、僕とジャイアンは見事なまでに落ちこぼれていた。
空き地に来る者はもう誰もいない。
みんな自分のペースで勉強するようになった。
というより、校内最下位のバカ二名に係わるのをやめたんだろう。
逆に校内では出木杉が大人気だった。
そりゃそうだ。
テストができるやつだってのは小学校の仲間ならみんな知っていたが、中間試験、期末試験と学内一位で張り出されたんだ。
分かりやすいくらいに校内は『デキスギさんスゲー!』と黄色い声で一色になった。
校内の女子はもちろんのこと、今までジャイアンに従っていた連中ですら今じゃみんな出木杉派だ。
分かりやすいまでの人気逆転に、最初は激昂していたジャイアンも、1学期が終わるころにはすっかり意気消沈していた。
中学校をナメていた僕らは、分かりやすいほどに負け犬だった。
そんな負け犬2匹は、今日も何をするというわけでもなく空き地に集まっている。
ジャイアン「……なあのび太」
のび太「……なんだいジャイアン」
ジャイアン「期末試験の順位、何位だった?」
のび太「驚いたことに最下位一歩手前」
ジャイアン「俺がその最下位」
のび太「ジャイアンってそこまで頭悪かったっけ?」
ジャイアン「意地になりすぎた。全く勉強してなかったんだ」
のび太「まあ、僕も9点なんだけどさ。全教科合わせて」
ジャイアン「そっかぁ。俺8点」
二人して大きなため息。
情けないほどに、どんぐりの背比べだった。
ジャイアン「俺、母ちゃんに泣かれちまったよ。怒られもしなかった」
のび太「僕も。またいつもの説教かと思ったら、ママ泣いちゃって何にも言わないんだ」
再び二人で大きなため息。
みじめだった、あまりにもみじめだった。
ジャイアン「こうなりゃ、この拳でテッペンとってみっか!?」
のび太「いいね! やろうやろう!」
ジャイアン「って、言っても相棒がのび太じゃなあ」
のび太「ズコーッ!」
ジャイアン「あ、わり。本気で言ったんじゃねえんだ。ていうか、本気で言えりゃあなあ」
のび太「どういうこと?」
ジャイアン「俺がバカすぎてお山の大将にすらなれないってこと」
のび太「ああ……」
さすがのジャイアンも、中学入って即落ちこぼれたんで不良になりました……ってのは恥ずかしかったらしい。
おまけに、お供が僕だけってのも情けなかったんだろう。
ジャイアン「それに、ジャイ子のためにも、最強にバカな不良少年ですなんて言えるわけねえだろ」
のび太「せめて勉強はちょっと苦手だけど、ケンカじゃ誰にも負けない、みたいな?」
ジャイアン「そうそう。そういうの。ちょっと苦手ってのがミソな」
本日、三度目の二人で大きなため息。
理想と現実の差は激しすぎた。
???「おや? 野比君に剛田君じゃないか?」
のび太「僕も。またいつもの説教かと思ったら、ママ泣いちゃって何にも言わないんだ」
再び二人で大きなため息。
みじめだった、あまりにもみじめだった。
ジャイアン「こうなりゃ、この拳でテッペンとってみっか!?」
のび太「いいね! やろうやろう!」
ジャイアン「って、言っても相棒がのび太じゃなあ」
のび太「ズコーッ!」
ジャイアン「あ、わり。本気で言ったんじゃねえんだ。ていうか、本気で言えりゃあなあ」
のび太「どういうこと?」
ジャイアン「俺がバカすぎてお山の大将にすらなれないってこと」
のび太「ああ……」
さすがのジャイアンも、中学入って即落ちこぼれたんで不良になりました……ってのは恥ずかしかったらしい。
おまけに、お供が僕だけってのも情けなかったんだろう。
ジャイアン「それに、ジャイ子のためにも、最強にバカな不良少年ですなんて言えるわけねえだろ」
のび太「せめて勉強はちょっと苦手だけど、ケンカじゃ誰にも負けない、みたいな?」
ジャイアン「そうそう。そういうの。ちょっと苦手ってのがミソな」
本日、三度目の二人で大きなため息。
理想と現実の差は激しすぎた。
???「おや? 野比君に剛田君じゃないか?」
突然、懐かしい声をかけられた。
と、いうより、僕らに声をかけてくれる人なんて久々だった。
声の主は僕らの小学校のときの先生だった。
のび太「せ、先生!?」
ジャイアン「お、お世話になってます!」
先生「いやあ、夕方とはいえ暑いねえ。どうだい君らは? 中学でもがんばっとるのかね?」
僕ら沈黙。
トップクラスに見られたくない人に見られてしまった。
どう答えたものか、僕らは黙ってしまう。
先生「どうしたのかね? 何を黙っとるんだ」
のび太「いや、僕らは別に……」
ジャイアン「待て、のび太。正直に言おう」
のび太「…………」
先生「真剣な顔をしてどうしたんだ? 話してみなさい」
僕たちは先生に話した。
二人そろって中学校をなめていたことを。
僕は中学に入ったのにのんびりしすぎていたことを。
ジャイアンに至っては中学校にケンカを売って孤立したことを。
先生は黙って僕らの話を聞いてくれていた。
そして、聞き終わると大笑いしたのだった。
先生「わははは、まったく君たちは面白いな!」
のび太「先生! 笑いごとじゃないよ!」
ジャイアン「そうだぜ! 俺たち真剣なんだぜ!」
先生「いやあ、すまんすまん。もちろん勉強しなかったのは褒められたことじゃないが、それにしたって君達はバカのスケールがでかすぎるだろう」
のび太「?」
ジャイアン「?」
先生「そうだな、私も君らのことは気になっていた。よかったら夏休み私の家に来たらどうだ? 勉強なら教えてあげよう」
のび太「えっ? 先生中学生も教えられるの!?」
ジャイアン「そうだぜ! 俺たちなんかさっぱりわかんねえのに!?」
先生「そりゃあ、こんな仕事をしとるし、大人なんだから中学1年生の範囲ぐらいはわけないさ。その代わり、ビシバシ行くからな」
のび太「……はい! お願いします!」
ジャイアン「右に同じく!」
先生「なに、むしろ君らが壮大に挫折してくれてよかったよ。大丈夫だ、まだやり直せる。それじゃあな」
僕とジャイアンはおじぎをして先生を見送った。
ジャイアン「先生って、すげえんだな」
のび太「うん。僕ら、何も知らなかったんだね」
口うるさいだけだと思ってた先生。
だけど、小学校だけじゃなく中学のことまで教えられるんだって知ったときは驚いた。
そして、僕らはまだまだ子供なんだってことを思い知ったのだった。
と、いうより、僕らに声をかけてくれる人なんて久々だった。
声の主は僕らの小学校のときの先生だった。
のび太「せ、先生!?」
ジャイアン「お、お世話になってます!」
先生「いやあ、夕方とはいえ暑いねえ。どうだい君らは? 中学でもがんばっとるのかね?」
僕ら沈黙。
トップクラスに見られたくない人に見られてしまった。
どう答えたものか、僕らは黙ってしまう。
先生「どうしたのかね? 何を黙っとるんだ」
のび太「いや、僕らは別に……」
ジャイアン「待て、のび太。正直に言おう」
のび太「…………」
先生「真剣な顔をしてどうしたんだ? 話してみなさい」
僕たちは先生に話した。
二人そろって中学校をなめていたことを。
僕は中学に入ったのにのんびりしすぎていたことを。
ジャイアンに至っては中学校にケンカを売って孤立したことを。
先生は黙って僕らの話を聞いてくれていた。
そして、聞き終わると大笑いしたのだった。
先生「わははは、まったく君たちは面白いな!」
のび太「先生! 笑いごとじゃないよ!」
ジャイアン「そうだぜ! 俺たち真剣なんだぜ!」
先生「いやあ、すまんすまん。もちろん勉強しなかったのは褒められたことじゃないが、それにしたって君達はバカのスケールがでかすぎるだろう」
のび太「?」
ジャイアン「?」
先生「そうだな、私も君らのことは気になっていた。よかったら夏休み私の家に来たらどうだ? 勉強なら教えてあげよう」
のび太「えっ? 先生中学生も教えられるの!?」
ジャイアン「そうだぜ! 俺たちなんかさっぱりわかんねえのに!?」
先生「そりゃあ、こんな仕事をしとるし、大人なんだから中学1年生の範囲ぐらいはわけないさ。その代わり、ビシバシ行くからな」
のび太「……はい! お願いします!」
ジャイアン「右に同じく!」
先生「なに、むしろ君らが壮大に挫折してくれてよかったよ。大丈夫だ、まだやり直せる。それじゃあな」
僕とジャイアンはおじぎをして先生を見送った。
ジャイアン「先生って、すげえんだな」
のび太「うん。僕ら、何も知らなかったんだね」
口うるさいだけだと思ってた先生。
だけど、小学校だけじゃなく中学のことまで教えられるんだって知ったときは驚いた。
そして、僕らはまだまだ子供なんだってことを思い知ったのだった。
そして巡ってきた夏休み。
ドラえもんがやってきたと伝えると、いつものメンバーが僕の部屋にやってきた。
僕からしたら全員集まるのかすら心配したけど、そんなのは取り越し苦労だったみたいだ。
ドラえもん「やあ、みんな。今日は集まってくれてありがとう」
スネ夫「久々に羽を伸ばせるよ。やっぱこのメンバーが落ち着くなあ」
しずか「そうね。家に帰ってきたような安心感があるわ」
ドラえもん「少し見ない間にスネ夫は背が伸びたんじゃない? しずかちゃんもきれいになっちゃって」
スネ夫「ん? そうかな? あんまり伸びてない気がしたけど、伸びたかも」
しずか「もうやだ、ドラちゃんたら」
ドラえもん「で、のび太君とジャイアンはどうしたの、それ」
ジャイアン「気にするな。俺は山籠もりのつもりで行くんだ」
のび太「そうだよ。僕らのことは気にしないでくれ」
ドラえもん「ん? うん???」
遊び道具を持ってきたスネ夫やしずかちゃんと違って、僕らは参考書やプリントを山ほど持っていた。
どう考えても遊び行くような格好ではない。
スネ夫「あー、あれだよ。一学期思いっきり落ちこぼれて赤点まっしぐらだから、勉強合宿しようって浅はかな考えで」
ジャイアン「スネ夫、黙ってろ!」
スネ夫「まあいいじゃない。ドラえもんの道具で課題ぐらいさっさと終わるだろ?」
のび太「そんなつもりで持ってきたわけじゃない!」
ドラえもん「ふざけるな! そんなことのために道具なんか……あれ?」
のび太「なんだよ?」
ドラえもん「道具、いらないの?」
のび太「いらないよ!」
ジャイアン「こいつは先生から出された課題だ。遊び行くのを許してもらう代わりにもらってきたんだよ」
ドラえもん「……どうしちゃったの、二人とも」
しずか「雨でも降るのかしら?」
スネ夫「バカになりすぎて頭がおかしくなったんじゃない?」
ジャイアン「て・め・え・ら」
のび太「わあ、ジャイアン落ち着いて!」
ジャイアン「けどよう」
のび太「今の僕らじゃしょうがないよ。言わせとこう」
ジャイアン「……そうだな。おし、バカンスに行こうぜ」
ドラえもん「なんか調子狂っちゃうなあ。じゃあ、5泊6日のバカンスへGO!」
みんな「おーっ」
ドラえもんがやってきたと伝えると、いつものメンバーが僕の部屋にやってきた。
僕からしたら全員集まるのかすら心配したけど、そんなのは取り越し苦労だったみたいだ。
ドラえもん「やあ、みんな。今日は集まってくれてありがとう」
スネ夫「久々に羽を伸ばせるよ。やっぱこのメンバーが落ち着くなあ」
しずか「そうね。家に帰ってきたような安心感があるわ」
ドラえもん「少し見ない間にスネ夫は背が伸びたんじゃない? しずかちゃんもきれいになっちゃって」
スネ夫「ん? そうかな? あんまり伸びてない気がしたけど、伸びたかも」
しずか「もうやだ、ドラちゃんたら」
ドラえもん「で、のび太君とジャイアンはどうしたの、それ」
ジャイアン「気にするな。俺は山籠もりのつもりで行くんだ」
のび太「そうだよ。僕らのことは気にしないでくれ」
ドラえもん「ん? うん???」
遊び道具を持ってきたスネ夫やしずかちゃんと違って、僕らは参考書やプリントを山ほど持っていた。
どう考えても遊び行くような格好ではない。
スネ夫「あー、あれだよ。一学期思いっきり落ちこぼれて赤点まっしぐらだから、勉強合宿しようって浅はかな考えで」
ジャイアン「スネ夫、黙ってろ!」
スネ夫「まあいいじゃない。ドラえもんの道具で課題ぐらいさっさと終わるだろ?」
のび太「そんなつもりで持ってきたわけじゃない!」
ドラえもん「ふざけるな! そんなことのために道具なんか……あれ?」
のび太「なんだよ?」
ドラえもん「道具、いらないの?」
のび太「いらないよ!」
ジャイアン「こいつは先生から出された課題だ。遊び行くのを許してもらう代わりにもらってきたんだよ」
ドラえもん「……どうしちゃったの、二人とも」
しずか「雨でも降るのかしら?」
スネ夫「バカになりすぎて頭がおかしくなったんじゃない?」
ジャイアン「て・め・え・ら」
のび太「わあ、ジャイアン落ち着いて!」
ジャイアン「けどよう」
のび太「今の僕らじゃしょうがないよ。言わせとこう」
ジャイアン「……そうだな。おし、バカンスに行こうぜ」
ドラえもん「なんか調子狂っちゃうなあ。じゃあ、5泊6日のバカンスへGO!」
みんな「おーっ」
僕達は夏休みのある日にドラえもんにとある無人島へ連れて行ってもらった。
誰にも邪魔されず好きなことをやって思う存分バカンスを楽しんだ。
ジャイアン「ま、俺らは課題づけだけどな」
のび太「それは言いっこなしだよ、ジャイアン」
ジャイアン「まあいいじゃねえか。BBQは楽しめたしよ」
のび太「そうだね」
ジャイアン「いいなあ、スネ夫やしずかちゃんは。気持ちよさそうに泳げてよ」
のび太「ジャイアン集中しなよ」
ジャイアン「うおっ! すげえ、全裸で泳いでる!」
のび太「ええっ!?」
ジャイアン「ドラえもんが」
のび太「ジ・ャ・イ・ア・ン」
ジャイアン「冗談だって。そんな怒んなよ」
のび太「まったく」
ジャイアン「それにしても先生の課題ってよくできてるよな」
のび太「うん。絶対終わらないと思ったよ」
ジャイアン「小学校の時もまじめにやってたら終わってたのかなあ」
のび太「さあ、どうだろ。あの時は真剣じゃなかったし……」
ジャイアン「それにしても意外だったよな。あの先生が、旅行の最後の一日は勉強忘れて遊んで来いって言うなんて」
のび太「たぶん、僕らが頑張ってたら昔もそう言ってくれたんじゃないかなあ」
ジャイアン「そっか。そうだよな」
仰げば尊し我が師の恩、どこで聞いた言葉だっただろうか。
きっとそれは近くにあったのに、僕らは気付こうとしなかったんだろう。
ジャイアン「ま、全部なんて終わってないんだけどよ」
のび太「先生の課題が多すぎるのは昔からだよ」
僕らの頭が悪すぎたせいか、先生の課題が多すぎたせいか、それはどちらか分からなかったけれども。
それでも、僕らは不思議と満足行くところまでやれた気がした。
そして、旅行の最終日。
スネ夫としずかちゃんから意外な提案があった。
誰にも邪魔されず好きなことをやって思う存分バカンスを楽しんだ。
ジャイアン「ま、俺らは課題づけだけどな」
のび太「それは言いっこなしだよ、ジャイアン」
ジャイアン「まあいいじゃねえか。BBQは楽しめたしよ」
のび太「そうだね」
ジャイアン「いいなあ、スネ夫やしずかちゃんは。気持ちよさそうに泳げてよ」
のび太「ジャイアン集中しなよ」
ジャイアン「うおっ! すげえ、全裸で泳いでる!」
のび太「ええっ!?」
ジャイアン「ドラえもんが」
のび太「ジ・ャ・イ・ア・ン」
ジャイアン「冗談だって。そんな怒んなよ」
のび太「まったく」
ジャイアン「それにしても先生の課題ってよくできてるよな」
のび太「うん。絶対終わらないと思ったよ」
ジャイアン「小学校の時もまじめにやってたら終わってたのかなあ」
のび太「さあ、どうだろ。あの時は真剣じゃなかったし……」
ジャイアン「それにしても意外だったよな。あの先生が、旅行の最後の一日は勉強忘れて遊んで来いって言うなんて」
のび太「たぶん、僕らが頑張ってたら昔もそう言ってくれたんじゃないかなあ」
ジャイアン「そっか。そうだよな」
仰げば尊し我が師の恩、どこで聞いた言葉だっただろうか。
きっとそれは近くにあったのに、僕らは気付こうとしなかったんだろう。
ジャイアン「ま、全部なんて終わってないんだけどよ」
のび太「先生の課題が多すぎるのは昔からだよ」
僕らの頭が悪すぎたせいか、先生の課題が多すぎたせいか、それはどちらか分からなかったけれども。
それでも、僕らは不思議と満足行くところまでやれた気がした。
そして、旅行の最終日。
スネ夫としずかちゃんから意外な提案があった。
のび太「5人野球?」
スネ夫「そう」
ジャイアン「野球は9人でやるもんだろ?」
スネ夫「正確には最低でも18人ね」
のび太「あ、そうか」
しずか「私達、のび太さんと武さんが頑張ってる間、考えてたのよ。全員で遊ぶ方法を」
スネ夫「それが5人野球ってわけ」
ドラえもん「5人ってことは、僕とのび太君、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫でやるってことだね」
スネ夫「そう。どうせ僕ら、野球選手にまではなろうなんて考えてないだろ? だから5人ぐらいでちょうどいいんだ。もちろん軟球ね」
ジャイアン「そりゃまあ、そうだな。ていうかジャイアンズも実質解散しちまったしな」
のび太「でも5人でどうやるの? ポジションは?」
スネ夫「そこがポイントだ。5人野球では、全員が全部のポジションを交代交代に守る」
ジャイアン「え? つまり俺がずっとピッチャーじゃないってことか?」
スネ夫「そんなことすると不公平になるだろ。しずかちゃんだって参加するんだから。いや、しずかちゃんは未知数だけどさ」
しずか「ようは全員別チームで、守りの時だけは協力するってことよ」
ジャイアン「ということは、俺様がバッターの時は強力なピッチャーをぶつけて」
のび太「僕がバッターの時はへなちょこなピッチャーをぶつけるってわけだね」
ドラえもん「わかりやすい説明だけど、自分でへなちょこって言うのはどうなんだい」
のび太「まあまあ」
ジャイアン「おもしろそうじゃないか。やってみようぜ。とりあえず、のび太相手のピッチャーはドラえもんな」
ドラえもん「なんで!?」
スネ夫「ていうか、ドラえもんの球って届くの」
ドラえもん「バカにしてるのか! コノヤロウ!」
しずか「初めだから、あとは適当に決めちゃいましょう」
ドラえもん「おい! 無視するな!」
のび太「まあまあ」
そうして始まった5人野球だったが、思いのほか盛り上がった。
僕達は旅行の最後を大いに楽しみ、5人野球をこれからも締めに必ずやろうと約束して別れた。
ドラえもん「不愉快だ!」
ジャイアン「だから悪かったって!」
ちなみに出塁できるのかと不安に思われたドラえもんだったが、ジャイアンからデッドボールを食らいまくって得点を上げていた。
なんでバッタードラえもんに対してピッチャージャイアンをぶつけるということになったのかは、永遠の謎である。
とにかく、ボールをぶつけられまくったドラえもんは、プリプリ怒りながら帰っていったのだった。
スネ夫「そう」
ジャイアン「野球は9人でやるもんだろ?」
スネ夫「正確には最低でも18人ね」
のび太「あ、そうか」
しずか「私達、のび太さんと武さんが頑張ってる間、考えてたのよ。全員で遊ぶ方法を」
スネ夫「それが5人野球ってわけ」
ドラえもん「5人ってことは、僕とのび太君、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫でやるってことだね」
スネ夫「そう。どうせ僕ら、野球選手にまではなろうなんて考えてないだろ? だから5人ぐらいでちょうどいいんだ。もちろん軟球ね」
ジャイアン「そりゃまあ、そうだな。ていうかジャイアンズも実質解散しちまったしな」
のび太「でも5人でどうやるの? ポジションは?」
スネ夫「そこがポイントだ。5人野球では、全員が全部のポジションを交代交代に守る」
ジャイアン「え? つまり俺がずっとピッチャーじゃないってことか?」
スネ夫「そんなことすると不公平になるだろ。しずかちゃんだって参加するんだから。いや、しずかちゃんは未知数だけどさ」
しずか「ようは全員別チームで、守りの時だけは協力するってことよ」
ジャイアン「ということは、俺様がバッターの時は強力なピッチャーをぶつけて」
のび太「僕がバッターの時はへなちょこなピッチャーをぶつけるってわけだね」
ドラえもん「わかりやすい説明だけど、自分でへなちょこって言うのはどうなんだい」
のび太「まあまあ」
ジャイアン「おもしろそうじゃないか。やってみようぜ。とりあえず、のび太相手のピッチャーはドラえもんな」
ドラえもん「なんで!?」
スネ夫「ていうか、ドラえもんの球って届くの」
ドラえもん「バカにしてるのか! コノヤロウ!」
しずか「初めだから、あとは適当に決めちゃいましょう」
ドラえもん「おい! 無視するな!」
のび太「まあまあ」
そうして始まった5人野球だったが、思いのほか盛り上がった。
僕達は旅行の最後を大いに楽しみ、5人野球をこれからも締めに必ずやろうと約束して別れた。
ドラえもん「不愉快だ!」
ジャイアン「だから悪かったって!」
ちなみに出塁できるのかと不安に思われたドラえもんだったが、ジャイアンからデッドボールを食らいまくって得点を上げていた。
なんでバッタードラえもんに対してピッチャージャイアンをぶつけるということになったのかは、永遠の謎である。
とにかく、ボールをぶつけられまくったドラえもんは、プリプリ怒りながら帰っていったのだった。
夏休みの後、いくらか僕らに変化があった。
まず最初はしずかちゃん。
なんでも5人野球が面白かったらしく、ソフトボール部に入部したそうだ。
「へぇー、じゃあ僕も」
というと、怒られた。
「うちの部は女子だけよ!」
だってさ。
なんで男子と女子で分けられるんだろう。
小学校の時は男女で一緒だったのに。
まあ、僕は僕でしずかちゃんに、うつつを抜かしてる場合でもなかった。
二学期中間試験。
決戦の時が迫っていたからだ。
僕もジャイアンも、1学期の分を取り戻すために必死になって勉強した。
果たしてその結果は……。
のび太「先生!」
ジャイアン「見てくれよ! これ!」
先生「おおう、家の前でどうしたんだ。なになに? 野比が191点に剛田が203点?」
のび太「そうなんだよ!」
ジャイアン「先生! 俺たちやったぜ!」
先生「いや、すごいにはすごいが……これは何位ぐらいなんだ? 平均点は?」
のび太「ジャイアンは180位! 僕は182位!」
ジャイアン「平均点は320点!」
先生「ばっかもーん!!」
のび太「ええ!?」
ジャイアン「そんな! 俺たちこれでも…」
先生「ああ、いやいや。よくやったな君達。元は一桁でドベとドベ2だったもんな!」
のび太・ジャイアン「先生!」
先生「君達!」
しばらく先生と輪になってダンスを踊った。
途中、通行人から白い目で見られて慌てて先生の家に入ったけど。
まず最初はしずかちゃん。
なんでも5人野球が面白かったらしく、ソフトボール部に入部したそうだ。
「へぇー、じゃあ僕も」
というと、怒られた。
「うちの部は女子だけよ!」
だってさ。
なんで男子と女子で分けられるんだろう。
小学校の時は男女で一緒だったのに。
まあ、僕は僕でしずかちゃんに、うつつを抜かしてる場合でもなかった。
二学期中間試験。
決戦の時が迫っていたからだ。
僕もジャイアンも、1学期の分を取り戻すために必死になって勉強した。
果たしてその結果は……。
のび太「先生!」
ジャイアン「見てくれよ! これ!」
先生「おおう、家の前でどうしたんだ。なになに? 野比が191点に剛田が203点?」
のび太「そうなんだよ!」
ジャイアン「先生! 俺たちやったぜ!」
先生「いや、すごいにはすごいが……これは何位ぐらいなんだ? 平均点は?」
のび太「ジャイアンは180位! 僕は182位!」
ジャイアン「平均点は320点!」
先生「ばっかもーん!!」
のび太「ええ!?」
ジャイアン「そんな! 俺たちこれでも…」
先生「ああ、いやいや。よくやったな君達。元は一桁でドベとドベ2だったもんな!」
のび太・ジャイアン「先生!」
先生「君達!」
しばらく先生と輪になってダンスを踊った。
途中、通行人から白い目で見られて慌てて先生の家に入ったけど。
のび太・ジャイアン「すんません」
先生「ああ、いやいや。私も興奮してしまったよ。すまんすまん」
のび太「僕ら自分たちの力で頑張ったんです」
ジャイアン「先生の課題。マジで役に立ちました」
先生「うんうん。点数は芳しくはなかったが、君たちの頑張りは伝わったよ。冬休みも来るかね?」
のび太「…………」
ジャイアン「…………」
先生「遠慮はいらんよ」
ジャイアン「いえ、もういらないです。なあ、のび太」
のび太「はい。次は本当に自分の力で頑張ってみます」
先生「そうかい。まあ、がんばってみなさい。まあ、考えてみれば君らに正月まで潰されるのもたまらんな」
のび太「先生……」
ジャイアン「そりゃねえよ」
先生「ははは。君らのがんばるという言葉、信じてみるよ。その上で一言言わせてくれ」
のび太・ジャイアン「?」
先生「君らは最初の段階でつまづいて幸運だった。本当の落ちこぼれは、これから本格的に生まれてくる。その落ちこぼれを救える手は、なかなかないんだ」
のび太「……はい」
ジャイアン「……努力します」
先生「うむ。頑張りたまえ」
僕らは中学に入って速攻でつまづいた。
だけど、いや、だから夏休みだけで挽回できたんだろう。
でも、もっと先でつまづいていたら?
その時、先生みたいな人がいなかったら?
僕らは自分の幸運をかみしめて、もう二度と馬鹿な真似はしないと誓ったのだった。
先生「ああ、いやいや。私も興奮してしまったよ。すまんすまん」
のび太「僕ら自分たちの力で頑張ったんです」
ジャイアン「先生の課題。マジで役に立ちました」
先生「うんうん。点数は芳しくはなかったが、君たちの頑張りは伝わったよ。冬休みも来るかね?」
のび太「…………」
ジャイアン「…………」
先生「遠慮はいらんよ」
ジャイアン「いえ、もういらないです。なあ、のび太」
のび太「はい。次は本当に自分の力で頑張ってみます」
先生「そうかい。まあ、がんばってみなさい。まあ、考えてみれば君らに正月まで潰されるのもたまらんな」
のび太「先生……」
ジャイアン「そりゃねえよ」
先生「ははは。君らのがんばるという言葉、信じてみるよ。その上で一言言わせてくれ」
のび太・ジャイアン「?」
先生「君らは最初の段階でつまづいて幸運だった。本当の落ちこぼれは、これから本格的に生まれてくる。その落ちこぼれを救える手は、なかなかないんだ」
のび太「……はい」
ジャイアン「……努力します」
先生「うむ。頑張りたまえ」
僕らは中学に入って速攻でつまづいた。
だけど、いや、だから夏休みだけで挽回できたんだろう。
でも、もっと先でつまづいていたら?
その時、先生みたいな人がいなかったら?
僕らは自分の幸運をかみしめて、もう二度と馬鹿な真似はしないと誓ったのだった。
それからは対して変化のない日常が過ぎていった。
僕とジャイアンは順調に成績を上げ、親を呼び出されるようなこともなくなった。
長期休みの時はドラえもんが来てくれて、いろんなところに連れて行ってもらった。
締めに5人野球をやるのも恒例だ。
ただ、しずかちゃんはソフトボール部でめきめき実力をつけ、3年になるころにはジャイアンのピッチャー役をするほどになっていた。
これには僕らも驚かされた。
(ちなみに、なぜかバッタードラえもんに対してピッチャージャイアンの伝統は継続していた)
誰も落第の危機にもならず、このまま平穏に高校に進学していくんだろう。
そう思っていた時、事件が起こった。
3年の3学期末試験でのことだ。
突然、ジャイアンが僕の席にダッシュでやってきた。
ジャイアン「おい! のび太、見たかよ!?」
のび太「何を?」
ジャイアン「お前、期末試験で名前が張り出されてるぞ!」
のび太「ええっ!?」
どうやら、たまたま試験返却前に成績優秀者が張り出されたらしい。
驚くことに、そこに僕の名前があるという。
ちなみに、ジャイアンは2年生の中ほどから柔道部に入り、勉強の方は平均点あたりをうろうろしていた。
ジャイアン「嘘じゃねえよ、ほんとだよ。ちょっと来いよ!」
のび太「わあ! 引っ張らないで」
抵抗もむなしく、僕はジャイアンに校庭まで引っ張って行かれた。
そして、そこに張り出されている成績優秀者の張り紙を見たのだった。
のび太「20位……野比のび太!? ええっ!?」
ジャイアン「な? マジで載ってるだろ!?」
のび太「たしかに今回のはいつもよりできた気はしたけど……ええー!?」
ジャイアン「何ビビってんだよ! 俺は誇らしいぞ!」
のび太「あ、ありがとう?」
しずか「あら、のび太さん。成績優秀者に載ったのよね。おめでとう」
のび太「しずかちゃん! いや、びっくりだよ。他のみんなの調子が悪かったのかな」
しずか「うーん、どうかしら。そんなことはなかったと思うけど」
しずかちゃんはそういいながら自分の名前を見ていた。
5位源静香。
まあ、いつも通りの定位置にしずかちゃんはいた。
そしてもっと定位置というか、不動の位置にいるやつもいる。
1位の出木杉だ。
僕とジャイアンは順調に成績を上げ、親を呼び出されるようなこともなくなった。
長期休みの時はドラえもんが来てくれて、いろんなところに連れて行ってもらった。
締めに5人野球をやるのも恒例だ。
ただ、しずかちゃんはソフトボール部でめきめき実力をつけ、3年になるころにはジャイアンのピッチャー役をするほどになっていた。
これには僕らも驚かされた。
(ちなみに、なぜかバッタードラえもんに対してピッチャージャイアンの伝統は継続していた)
誰も落第の危機にもならず、このまま平穏に高校に進学していくんだろう。
そう思っていた時、事件が起こった。
3年の3学期末試験でのことだ。
突然、ジャイアンが僕の席にダッシュでやってきた。
ジャイアン「おい! のび太、見たかよ!?」
のび太「何を?」
ジャイアン「お前、期末試験で名前が張り出されてるぞ!」
のび太「ええっ!?」
どうやら、たまたま試験返却前に成績優秀者が張り出されたらしい。
驚くことに、そこに僕の名前があるという。
ちなみに、ジャイアンは2年生の中ほどから柔道部に入り、勉強の方は平均点あたりをうろうろしていた。
ジャイアン「嘘じゃねえよ、ほんとだよ。ちょっと来いよ!」
のび太「わあ! 引っ張らないで」
抵抗もむなしく、僕はジャイアンに校庭まで引っ張って行かれた。
そして、そこに張り出されている成績優秀者の張り紙を見たのだった。
のび太「20位……野比のび太!? ええっ!?」
ジャイアン「な? マジで載ってるだろ!?」
のび太「たしかに今回のはいつもよりできた気はしたけど……ええー!?」
ジャイアン「何ビビってんだよ! 俺は誇らしいぞ!」
のび太「あ、ありがとう?」
しずか「あら、のび太さん。成績優秀者に載ったのよね。おめでとう」
のび太「しずかちゃん! いや、びっくりだよ。他のみんなの調子が悪かったのかな」
しずか「うーん、どうかしら。そんなことはなかったと思うけど」
しずかちゃんはそういいながら自分の名前を見ていた。
5位源静香。
まあ、いつも通りの定位置にしずかちゃんはいた。
そしてもっと定位置というか、不動の位置にいるやつもいる。
1位の出木杉だ。
ジャイアン「ま、俺も平均点はとったし、高校進学はこれで全員決まりだな」
のび太「そういえば、しずかちゃん高校どこ行くの?」
しずか「私? 普通にこのまま地元の高校に進学するわ」
のび太「え? そうなの? じゃあ僕と同じ?」
しずか「ええ。出木杉さんも同じ高校に進学するそうよ」
のび太「ええっ!?」
しずか「近いところがいいって言ってたわ。出木杉さんらしいわよね」
ジャイアン「なんでえ。あいつも同じ高校かよ。じゃあ、1位はとれねえな」
しずか「武さんは1位以前の問題でしょ……」
ジャイアン「がははは、ちげえねえ。目指せ国体優勝ってな」
しずか「あ、いけない。友達が呼んでるわ。それじゃあねのび太さん。武さんもケガしないで頑張って!」
しずかちゃんを見送った後、僕はジャイアンとも別れた。
帰り際、僕はもう一度成績優秀者の掲示板を見る。
1位 出木杉英才 470点
20位 野比のび太 391点
のび太「……超えられるかもしれない」
ぼそっと呟く。
無謀なのは分かっていた。
でも、得点ならたかが80点程度なんだ。
しかも、あいつは僕と同じ高校に進もうとしている。
雪辱の時は今――
そんな決意だったんだろうか。
今、僕は宿敵に挑もうと決意したんだ。
のび太「そういえば、しずかちゃん高校どこ行くの?」
しずか「私? 普通にこのまま地元の高校に進学するわ」
のび太「え? そうなの? じゃあ僕と同じ?」
しずか「ええ。出木杉さんも同じ高校に進学するそうよ」
のび太「ええっ!?」
しずか「近いところがいいって言ってたわ。出木杉さんらしいわよね」
ジャイアン「なんでえ。あいつも同じ高校かよ。じゃあ、1位はとれねえな」
しずか「武さんは1位以前の問題でしょ……」
ジャイアン「がははは、ちげえねえ。目指せ国体優勝ってな」
しずか「あ、いけない。友達が呼んでるわ。それじゃあねのび太さん。武さんもケガしないで頑張って!」
しずかちゃんを見送った後、僕はジャイアンとも別れた。
帰り際、僕はもう一度成績優秀者の掲示板を見る。
1位 出木杉英才 470点
20位 野比のび太 391点
のび太「……超えられるかもしれない」
ぼそっと呟く。
無謀なのは分かっていた。
でも、得点ならたかが80点程度なんだ。
しかも、あいつは僕と同じ高校に進もうとしている。
雪辱の時は今――
そんな決意だったんだろうか。
今、僕は宿敵に挑もうと決意したんだ。
あいつを倒すんだ。
そう誓ったあの日から、僕は勉強に明け暮れた。
学校が終わったら即家に帰って勉強机にかじりつく。
さすがに、春休みにドラえもんが来たときは旅行に同行はしたが、食事と5人野球の時以外は完全に引きこもった。
ドラえもん「のび太君は、どうしちゃったの?」
ジャイアン「男にはやらなきゃいけない時があるんだ。黙って見てろ、ドラえもん」
スネ夫「ジャイアンは何か知ってるの?」
ジャイアン「知らねえけど?」
スネ夫「ズコッ」
しずか「でも、あんな真剣なのび太さん初めて見たわ」
ドラえもん「昔から変なスイッチが入るとああだったよ。でも、普段は三日もしたらすぐ飽きたんだけどなあ」
のび太「……ぶつぶつ」
仲間たちが僕のことを噂している。
僕は相当変に思われているんだろう。
でも構わない。
超えるんだ、あいつを。
出木杉といえども、高校進学の1学期ぐらいは油断するはずだ。
そのスキを突ければ、必ず出木杉を超えられる。
一回だけでいい。
僕は自分の実力で、中間試験という大舞台で、あいつを、出木杉を負かしてみたいんだ!
高校の入学式が済んでも、入学祝で同級生たちがはしゃいでいても、GWでふぬける人達がいても、僕は変わらず勉強し続けた。
みんなうかれている。
高校も中学と同じだと浮かれている。
いや、事実中学と高校は、学ぶ内容が高度になったというだけで、小学校と中学校ほどの差はなかった。
だからだろう。
みんな、遊んだ分は後で取り返せばいいと楽観的に考えていた。
高校に、ぎりぎり入れた人たちは特にそうだっただろう。
きっと、僕も中学校最後の成績がああじゃなかったら、浮かれてる連中の一人だった。
でも、一度ぐらい夢を見たいじゃないか。
あの圧倒的な天才を僕が努力で負かす瞬間を。
今ならそれができる。
出木杉でも浮かれているであろう、この一学期の間なら!
そう誓ったあの日から、僕は勉強に明け暮れた。
学校が終わったら即家に帰って勉強机にかじりつく。
さすがに、春休みにドラえもんが来たときは旅行に同行はしたが、食事と5人野球の時以外は完全に引きこもった。
ドラえもん「のび太君は、どうしちゃったの?」
ジャイアン「男にはやらなきゃいけない時があるんだ。黙って見てろ、ドラえもん」
スネ夫「ジャイアンは何か知ってるの?」
ジャイアン「知らねえけど?」
スネ夫「ズコッ」
しずか「でも、あんな真剣なのび太さん初めて見たわ」
ドラえもん「昔から変なスイッチが入るとああだったよ。でも、普段は三日もしたらすぐ飽きたんだけどなあ」
のび太「……ぶつぶつ」
仲間たちが僕のことを噂している。
僕は相当変に思われているんだろう。
でも構わない。
超えるんだ、あいつを。
出木杉といえども、高校進学の1学期ぐらいは油断するはずだ。
そのスキを突ければ、必ず出木杉を超えられる。
一回だけでいい。
僕は自分の実力で、中間試験という大舞台で、あいつを、出木杉を負かしてみたいんだ!
高校の入学式が済んでも、入学祝で同級生たちがはしゃいでいても、GWでふぬける人達がいても、僕は変わらず勉強し続けた。
みんなうかれている。
高校も中学と同じだと浮かれている。
いや、事実中学と高校は、学ぶ内容が高度になったというだけで、小学校と中学校ほどの差はなかった。
だからだろう。
みんな、遊んだ分は後で取り返せばいいと楽観的に考えていた。
高校に、ぎりぎり入れた人たちは特にそうだっただろう。
きっと、僕も中学校最後の成績がああじゃなかったら、浮かれてる連中の一人だった。
でも、一度ぐらい夢を見たいじゃないか。
あの圧倒的な天才を僕が努力で負かす瞬間を。
今ならそれができる。
出木杉でも浮かれているであろう、この一学期の間なら!
出木杉「…………」
ちらりと出木杉を見てみたが、あいつは涼しい顔をしていた。
僕がこんなに苦しんでるのになんてやつだ。
絶対度肝を抜いてやるからな。
そう僕は心の中であいつをにらみつけた。
しかし、そこでふと疑問に思った。
どうして出木杉は僕らと同じ高校に進学したんだろう?
出木杉ほどじゃないにしても、優秀な人たちは大部分がレベルが高いと言われる有名な高校に進学していった。
当然出木杉もそうするんじゃないかと思った。
なんたって、開校以来の天才とまで言われてたんだ。
それが蓋を開いてみれば、家に近いからという理由だけで僕らと同じ高校に入学した。
なぜ?
まさか……しずかちゃん狙い?
嫉妬の炎がめらめらと燃え上がっていく。
よく見てみると、出木杉の周りには女子が何人もいて出木杉のことを観察している。
いつもの光景だ。
おのれ出木杉!
あれだけ女子をはべらせておきながら、僕からしずかちゃんを奪おうというのか!
にらみつけていると、不意に出木杉が僕の方を向いて「やあ」とばかりに手を軽く上げてきた。
僕は慌てて顔をそむける。
何をバカなことを考えてるんだ僕は。
出木杉はいつもあんなやつじゃないか。
しずかちゃんを略奪しようなどと、真っ黒なことは考えてはいないだろう。
というか、もともとしずかちゃんはあいつのもので……って、あああああああ、もう!
くそ、だめだ。あいつのことを考えるのはよそう。
そんなことより勉強に集中だ。
絶対に、あいつに一杯くわせてやる!
挑戦、なんていえば聞こえはよかったが、結局のところ僕の行動の原動力は嫉妬だった。
今思うと情けないね。
でも、あの時はその熱さが必要でもあったと思うんだ。
ちらりと出木杉を見てみたが、あいつは涼しい顔をしていた。
僕がこんなに苦しんでるのになんてやつだ。
絶対度肝を抜いてやるからな。
そう僕は心の中であいつをにらみつけた。
しかし、そこでふと疑問に思った。
どうして出木杉は僕らと同じ高校に進学したんだろう?
出木杉ほどじゃないにしても、優秀な人たちは大部分がレベルが高いと言われる有名な高校に進学していった。
当然出木杉もそうするんじゃないかと思った。
なんたって、開校以来の天才とまで言われてたんだ。
それが蓋を開いてみれば、家に近いからという理由だけで僕らと同じ高校に入学した。
なぜ?
まさか……しずかちゃん狙い?
嫉妬の炎がめらめらと燃え上がっていく。
よく見てみると、出木杉の周りには女子が何人もいて出木杉のことを観察している。
いつもの光景だ。
おのれ出木杉!
あれだけ女子をはべらせておきながら、僕からしずかちゃんを奪おうというのか!
にらみつけていると、不意に出木杉が僕の方を向いて「やあ」とばかりに手を軽く上げてきた。
僕は慌てて顔をそむける。
何をバカなことを考えてるんだ僕は。
出木杉はいつもあんなやつじゃないか。
しずかちゃんを略奪しようなどと、真っ黒なことは考えてはいないだろう。
というか、もともとしずかちゃんはあいつのもので……って、あああああああ、もう!
くそ、だめだ。あいつのことを考えるのはよそう。
そんなことより勉強に集中だ。
絶対に、あいつに一杯くわせてやる!
挑戦、なんていえば聞こえはよかったが、結局のところ僕の行動の原動力は嫉妬だった。
今思うと情けないね。
でも、あの時はその熱さが必要でもあったと思うんだ。
そして中間試験を迎える。
僕は解いた。
解いて解いて解きまくった。
分かる!
全て分かる!
まるで自分の頭じゃないみたいだ!
集中力も極限のレベルに達していたのだろう。
普段は気になるはずの他人の筆記の音や、筆記具を落とす音、トイレに席を立とうとする音も、何も聞こえない。
最後の科目の回答を終えたとき、僕は鼻血を噴いた。
クラスメートには驚かれたが、僕はなんでもないといって冷静に血を止める。
完璧にやり遂げた。
集中に集中を重ねて、最後は鼻血を噴くレベルまで集中した。
さすがの出木杉も、今回ばかりは負けただろう。
僕は満足感に浸りながら家に帰り、風呂にも入らず布団にぶっ倒れた。
そして試験返却の日。
100点、100点、91点、96点、94点、合計481点。
出木杉は5教科で、だいたい470点前後だったはず。
勝った!
僕はそう確信した。
ついに、あの出木杉の1位を崩したのだ。
たとえ今回限りだとしても、この勝ちは誇りになる。
そう、思った時だった。
配られた成績表を見て、僕はぞっとする。
そこには、総合順位2位と書かれていた。
ジャイアンが「のび太何位だった?」と尋ねてくる。
しずかちゃんが「ええっ!? のび太さん2位なの!? しかも481点!? すごいわ!!」と叫ぶ。
でも、僕の視界は真っ黒だった。
ジャイアンとしずかちゃんは何かを言っていたが、何も耳に入らない。
ただ、ただ、あいつの点数が気になった。
学内の掲示板に走る。
頼む、僕の下であってくれ!
出木杉に勝ってるなら、僕は2位でも構わない!
出木杉以上の天才がいたなら、それは別にいいんだ!
出木杉だけには勝たせてくれ!
そんな祈りを込めて掲示板を見た僕だったが、現実は非情だった。
1位 出木杉英才 500点
2位 野比のび太 481点
「あ、ああ……」
僕の努力は何だったんだ。
500点?
満点じゃないか!
どれだけやっても勝てないじゃないか!
「あは……」
口から笑い声が漏れる。
涙が止まらない。
「あはははははは!」
僕は壊れた。
一学期の間抑えていた感情のすべてが流れ出して、僕は暴れまわった。
もうめちゃくちゃに暴れまわった。
その日、僕はどうやって家に帰ったかも覚えてない。
僕は解いた。
解いて解いて解きまくった。
分かる!
全て分かる!
まるで自分の頭じゃないみたいだ!
集中力も極限のレベルに達していたのだろう。
普段は気になるはずの他人の筆記の音や、筆記具を落とす音、トイレに席を立とうとする音も、何も聞こえない。
最後の科目の回答を終えたとき、僕は鼻血を噴いた。
クラスメートには驚かれたが、僕はなんでもないといって冷静に血を止める。
完璧にやり遂げた。
集中に集中を重ねて、最後は鼻血を噴くレベルまで集中した。
さすがの出木杉も、今回ばかりは負けただろう。
僕は満足感に浸りながら家に帰り、風呂にも入らず布団にぶっ倒れた。
そして試験返却の日。
100点、100点、91点、96点、94点、合計481点。
出木杉は5教科で、だいたい470点前後だったはず。
勝った!
僕はそう確信した。
ついに、あの出木杉の1位を崩したのだ。
たとえ今回限りだとしても、この勝ちは誇りになる。
そう、思った時だった。
配られた成績表を見て、僕はぞっとする。
そこには、総合順位2位と書かれていた。
ジャイアンが「のび太何位だった?」と尋ねてくる。
しずかちゃんが「ええっ!? のび太さん2位なの!? しかも481点!? すごいわ!!」と叫ぶ。
でも、僕の視界は真っ黒だった。
ジャイアンとしずかちゃんは何かを言っていたが、何も耳に入らない。
ただ、ただ、あいつの点数が気になった。
学内の掲示板に走る。
頼む、僕の下であってくれ!
出木杉に勝ってるなら、僕は2位でも構わない!
出木杉以上の天才がいたなら、それは別にいいんだ!
出木杉だけには勝たせてくれ!
そんな祈りを込めて掲示板を見た僕だったが、現実は非情だった。
1位 出木杉英才 500点
2位 野比のび太 481点
「あ、ああ……」
僕の努力は何だったんだ。
500点?
満点じゃないか!
どれだけやっても勝てないじゃないか!
「あは……」
口から笑い声が漏れる。
涙が止まらない。
「あはははははは!」
僕は壊れた。
一学期の間抑えていた感情のすべてが流れ出して、僕は暴れまわった。
もうめちゃくちゃに暴れまわった。
その日、僕はどうやって家に帰ったかも覚えてない。
気が付くと、僕は自分の家で寝ていた。
頭にぬれタオルが乗せられている。
いったい、誰が?
ドラえもん「あ、ようやく気付いた。まったく心配させないでよ」
のび太「ドラえもん?」
ドラえもん「君のバイタルが異常数値を示していたから、慌てて飛んできたんだ。君、家に帰るなり階段から落っこちて今の今まで意識を失ってたんだよ」
のび太「そっか……ごめん」
ドラえもん「ママー、パパー、のび太君目を覚ましたよー」
ドタドタと階段を上る音がする。
ママとパパだろう。
気が付くと窓はすっかり暗くなっていた。
ママ「ああ、のび太。よかった、目を覚まして」
パパ「痛いところはないかい? お医者様は疲れてるだけで問題ないと言ってたけど」
のび太「ママ……パパ……」
ママ「のび太、ママは勉強しなさいとは言ったけど、あんなに根を詰めて勉強をする必要はないわ。それに、まだ一学期じゃないの」
のび太「心配かけてごめん、ママ。どうしても、今学期だけは負けたくないやつがいたんだ」
パパ「へえ。で、勝てたのかい?」
のび太「無理だった」
パパ「はははは。そうかそうか。まあ次頑張ればいいじゃないか」
のび太「相手は全教科満点で頑張りようがないんだけど……」
パパ「……えーと、のび太。諦めるということを学ぼうか。所詮君は僕らの子なんだ。カエルの子はカエルって……」
ママ「あ・な・た」
パパ「わあ、ごめん!」
のび太「あははは。大丈夫だよ、パパ。僕には無理ってのはよくわかった。これからはマイペースにがんばるよ」
ドラえもん「マイペースにはなりすぎないようにね。今度はさぼり病が出るだろうから」
のび太「うるさいな、一言多いんだよ。ドラえもんは」
パパ「ところでのび太、お腹は減ってないかい」
のび太「え? うーん……」
ぐぅ。
悩むよりも先にお腹が鳴った。
パパ「はは、体は正直だな。ママ、寿司でも取ろう。のび太の2位祝いだ」
ママ「ええ。ドラちゃんも食べてくわね?」
ドラえもん「あ、これはどうも御馳走さまです」
のび太「うわ……このロボットなんて意地汚いんだ」
ドラえもん「なんだと!? 一番心配してやったのは僕だぞ!」
ママ「喧嘩はやめなさい! お寿司抜きにするわよ!」
のび太・ドラえもん「は、はい」
パパ「いや、僕らだけ寿司を食ったら、何のために寿司を取るのかわからないんだけど……」
パパのもっともな指摘に僕らは笑い合った。
僕にはみんながいるし家族がいる。
それでいいじゃないか。
マイペースに頑張っていこう。
僕は僕のままでいいんだ。
そう思った。
頭にぬれタオルが乗せられている。
いったい、誰が?
ドラえもん「あ、ようやく気付いた。まったく心配させないでよ」
のび太「ドラえもん?」
ドラえもん「君のバイタルが異常数値を示していたから、慌てて飛んできたんだ。君、家に帰るなり階段から落っこちて今の今まで意識を失ってたんだよ」
のび太「そっか……ごめん」
ドラえもん「ママー、パパー、のび太君目を覚ましたよー」
ドタドタと階段を上る音がする。
ママとパパだろう。
気が付くと窓はすっかり暗くなっていた。
ママ「ああ、のび太。よかった、目を覚まして」
パパ「痛いところはないかい? お医者様は疲れてるだけで問題ないと言ってたけど」
のび太「ママ……パパ……」
ママ「のび太、ママは勉強しなさいとは言ったけど、あんなに根を詰めて勉強をする必要はないわ。それに、まだ一学期じゃないの」
のび太「心配かけてごめん、ママ。どうしても、今学期だけは負けたくないやつがいたんだ」
パパ「へえ。で、勝てたのかい?」
のび太「無理だった」
パパ「はははは。そうかそうか。まあ次頑張ればいいじゃないか」
のび太「相手は全教科満点で頑張りようがないんだけど……」
パパ「……えーと、のび太。諦めるということを学ぼうか。所詮君は僕らの子なんだ。カエルの子はカエルって……」
ママ「あ・な・た」
パパ「わあ、ごめん!」
のび太「あははは。大丈夫だよ、パパ。僕には無理ってのはよくわかった。これからはマイペースにがんばるよ」
ドラえもん「マイペースにはなりすぎないようにね。今度はさぼり病が出るだろうから」
のび太「うるさいな、一言多いんだよ。ドラえもんは」
パパ「ところでのび太、お腹は減ってないかい」
のび太「え? うーん……」
ぐぅ。
悩むよりも先にお腹が鳴った。
パパ「はは、体は正直だな。ママ、寿司でも取ろう。のび太の2位祝いだ」
ママ「ええ。ドラちゃんも食べてくわね?」
ドラえもん「あ、これはどうも御馳走さまです」
のび太「うわ……このロボットなんて意地汚いんだ」
ドラえもん「なんだと!? 一番心配してやったのは僕だぞ!」
ママ「喧嘩はやめなさい! お寿司抜きにするわよ!」
のび太・ドラえもん「は、はい」
パパ「いや、僕らだけ寿司を食ったら、何のために寿司を取るのかわからないんだけど……」
パパのもっともな指摘に僕らは笑い合った。
僕にはみんながいるし家族がいる。
それでいいじゃないか。
マイペースに頑張っていこう。
僕は僕のままでいいんだ。
そう思った。
その後、僕はマイペースに頑張った。
順位は成績優秀者に載るか載らないかくらい。
「一学期のあれは何だったんだ?」と噂されたりもしたが、僕は気にもしなかった。
人間、無理をしてはいけないのだ。
このぐらいが僕には分相応ってもんなんだろう。
なーんて。
そういえば、しずかちゃんから「のび太さん、何か部活はしないの?」と聞かれた。
考えてみたけど何も思いつかなかった僕は答えた。
のび太「しずかちゃんと同じ部がいいなあ」
しずか「だから女子専用だって言ってるでしょ!」
そしてまた怒られた。
ジャイアン「じゃあ柔道部に入れよ」
と僕から部活の話を聞いたジャイアンは言う。
のび太「えー。でも投げられるんだろう?」
ジャイアン「おう、スゲー快感だぞ」
のび太「えー、ほんとに」
ジャイアン「向かってくるやつらをちぎっては投げ、ちぎっては投げだな……」
のび太「ねえ、それって僕は投げられる側じゃないの?」
ジャイアン「あ」
のび太「あ、じゃないよ! 危うくとんでもない部に入れられるところだった!」
結局、僕が部活に入ることはなかった。
射撃部とかあやとり同好会とかあれば入ったんだろうか。
さすがにそんなニッチな部活や同好会は、僕の高校には存在しなかった。
そして月日は流れていく。
高校生活はあっという間に過ぎ、僕たちは卒業を迎えた。
続いていくと思った僕らの道。
それがいよいよ途切れる時が来たのだ。
ジャイアン「よう、のび太。久しぶりだな」
のび太「ジャイアン。3年は2月から自由登校だったもんね」
ジャイアン「ま、俺は推薦決まって、2月はもうずっと道場にこもってたんだけどな」
のび太「僕は時々教室に勉強にきてたぐらいだったかな」
ジャイアン「お前とは色々あったな」
のび太「そうだね、懐かしいよ」
ジャイアン「最後に一勝負と行こうぜ! 来い、のび太!」
のび太「なんでそうなるんだよ! だいたい、やったら僕死んじゃうよ!」
ジャイアン「がははは、冗談だぜ。喧嘩なんかやったら試合禁止だしな」
しずか「まったく、武さんは変わらないわね」
のび太「しずかちゃん。久しぶりだね。ところであの噂、本当なの?」
しずか「あの噂?」
のび太「日本一大学に通ったっていう噂」
ジャイアン「え? マジ!? あの日本一に!?」
しずか「ええ、本当よ。出木杉さんが背中を押してくれたの。挑戦してみる価値はあるんじゃないか、ってね。私、頑張ったわ」
のび太「出木杉が……」
ジャイアン「すげえなあ。あの日本一かよ。出木杉もなんだろ? あいつの場合、余裕だっただろうけどよ」
しずか「それを言ったら武さんの方が凄いわよ。体育大に推薦合格、しかもオリンピック期待の星でしょ。私なんかには想像もできない世界だわ」
ジャイアン「へへ、そうかもな。ありがとよ、しずかちゃん」
のび太「二人ともおめでとう。それに比べて僕は……」
しずか「何言ってるのよ、のび太さん」
ジャイアン「そうだぜ。お前が二番星大学に通ったことが驚きだぜ。俺といっしょに先生の授業を受けてた、あのお前がよ。俺は誇らしいぜ」
のび太「あ、ありがとう!」
順位は成績優秀者に載るか載らないかくらい。
「一学期のあれは何だったんだ?」と噂されたりもしたが、僕は気にもしなかった。
人間、無理をしてはいけないのだ。
このぐらいが僕には分相応ってもんなんだろう。
なーんて。
そういえば、しずかちゃんから「のび太さん、何か部活はしないの?」と聞かれた。
考えてみたけど何も思いつかなかった僕は答えた。
のび太「しずかちゃんと同じ部がいいなあ」
しずか「だから女子専用だって言ってるでしょ!」
そしてまた怒られた。
ジャイアン「じゃあ柔道部に入れよ」
と僕から部活の話を聞いたジャイアンは言う。
のび太「えー。でも投げられるんだろう?」
ジャイアン「おう、スゲー快感だぞ」
のび太「えー、ほんとに」
ジャイアン「向かってくるやつらをちぎっては投げ、ちぎっては投げだな……」
のび太「ねえ、それって僕は投げられる側じゃないの?」
ジャイアン「あ」
のび太「あ、じゃないよ! 危うくとんでもない部に入れられるところだった!」
結局、僕が部活に入ることはなかった。
射撃部とかあやとり同好会とかあれば入ったんだろうか。
さすがにそんなニッチな部活や同好会は、僕の高校には存在しなかった。
そして月日は流れていく。
高校生活はあっという間に過ぎ、僕たちは卒業を迎えた。
続いていくと思った僕らの道。
それがいよいよ途切れる時が来たのだ。
ジャイアン「よう、のび太。久しぶりだな」
のび太「ジャイアン。3年は2月から自由登校だったもんね」
ジャイアン「ま、俺は推薦決まって、2月はもうずっと道場にこもってたんだけどな」
のび太「僕は時々教室に勉強にきてたぐらいだったかな」
ジャイアン「お前とは色々あったな」
のび太「そうだね、懐かしいよ」
ジャイアン「最後に一勝負と行こうぜ! 来い、のび太!」
のび太「なんでそうなるんだよ! だいたい、やったら僕死んじゃうよ!」
ジャイアン「がははは、冗談だぜ。喧嘩なんかやったら試合禁止だしな」
しずか「まったく、武さんは変わらないわね」
のび太「しずかちゃん。久しぶりだね。ところであの噂、本当なの?」
しずか「あの噂?」
のび太「日本一大学に通ったっていう噂」
ジャイアン「え? マジ!? あの日本一に!?」
しずか「ええ、本当よ。出木杉さんが背中を押してくれたの。挑戦してみる価値はあるんじゃないか、ってね。私、頑張ったわ」
のび太「出木杉が……」
ジャイアン「すげえなあ。あの日本一かよ。出木杉もなんだろ? あいつの場合、余裕だっただろうけどよ」
しずか「それを言ったら武さんの方が凄いわよ。体育大に推薦合格、しかもオリンピック期待の星でしょ。私なんかには想像もできない世界だわ」
ジャイアン「へへ、そうかもな。ありがとよ、しずかちゃん」
のび太「二人ともおめでとう。それに比べて僕は……」
しずか「何言ってるのよ、のび太さん」
ジャイアン「そうだぜ。お前が二番星大学に通ったことが驚きだぜ。俺といっしょに先生の授業を受けてた、あのお前がよ。俺は誇らしいぜ」
のび太「あ、ありがとう!」
一緒の道を歩んだ小学校からの友達。
それもここで終わり。
僕らはみんな別々の大学に行く。
新しい生活への期待はあるけれど、それでもそのことが寂しかった。
ふと見上げると、校門前に人だかりができていた。
その輪の中心にいるのは……。
のび太「……出木杉」
僕からしずかちゃんを奪った出木杉だった。
同じ大学に進学するらしい。
くやしいが、負けを認めるべき時なんだろうな。
なんて思って見送ろうとしていると、出木杉の方から話しかけてきた。
出木杉「やあ、のび太君」
のび太「や、やあ」
出木杉「ちょうどよかった。君を探していたんだ」
のび太「僕を?」
出木杉「後で話がしたい。1時間後にあの裏山の頂上でどうかな」
のび太「あの裏山? 別にいいけど」
出木杉「それはよかった。じゃあ、また後でね」
相変わらずのすました顔で出木杉は人の輪の中へ消えていった。
人の輪からは黄色い声が聞こえる。
相変わらず女性人気が高いことで。
まあ、試験満点で日本一大学にも鼻くそほじりながら通るような秀才君なら当然か。
いや、あいつは鼻くそほじったりはしないだろうけど。
だめだ、負けを認めたはずなのに嫉妬が止まらない。
そんな自分に自己嫌悪。
すると女性たちの声が聞こえてきた。
「キャー出木杉さん!」
「センパイ、今何を話したんですか!?」
「あのウラヤマってなんです!?」
「はは。ちょっと個人的なことさ。気にしないでくれ」
女性の輪にもまれながら、出木杉はそんなことを言っていた。
そこで僕は気付いた。
「あの裏山」ってそういうことか、と。
どうやら出木杉は、本当に僕と二人っきりで話をしたいようだ。
そんな時にまで気遣いができる出木杉に、僕はまた嫉妬した。
僕はなんてダメなやつなんだろう。
結局嫉妬を止められないんだ。
それもここで終わり。
僕らはみんな別々の大学に行く。
新しい生活への期待はあるけれど、それでもそのことが寂しかった。
ふと見上げると、校門前に人だかりができていた。
その輪の中心にいるのは……。
のび太「……出木杉」
僕からしずかちゃんを奪った出木杉だった。
同じ大学に進学するらしい。
くやしいが、負けを認めるべき時なんだろうな。
なんて思って見送ろうとしていると、出木杉の方から話しかけてきた。
出木杉「やあ、のび太君」
のび太「や、やあ」
出木杉「ちょうどよかった。君を探していたんだ」
のび太「僕を?」
出木杉「後で話がしたい。1時間後にあの裏山の頂上でどうかな」
のび太「あの裏山? 別にいいけど」
出木杉「それはよかった。じゃあ、また後でね」
相変わらずのすました顔で出木杉は人の輪の中へ消えていった。
人の輪からは黄色い声が聞こえる。
相変わらず女性人気が高いことで。
まあ、試験満点で日本一大学にも鼻くそほじりながら通るような秀才君なら当然か。
いや、あいつは鼻くそほじったりはしないだろうけど。
だめだ、負けを認めたはずなのに嫉妬が止まらない。
そんな自分に自己嫌悪。
すると女性たちの声が聞こえてきた。
「キャー出木杉さん!」
「センパイ、今何を話したんですか!?」
「あのウラヤマってなんです!?」
「はは。ちょっと個人的なことさ。気にしないでくれ」
女性の輪にもまれながら、出木杉はそんなことを言っていた。
そこで僕は気付いた。
「あの裏山」ってそういうことか、と。
どうやら出木杉は、本当に僕と二人っきりで話をしたいようだ。
そんな時にまで気遣いができる出木杉に、僕はまた嫉妬した。
僕はなんてダメなやつなんだろう。
結局嫉妬を止められないんだ。
そして、ぴったり1時間後。
出木杉は裏山に現れた。
出木杉「やあ、のび太君。呼び出して済まないね。それと待たせてごめん」
のび太「別に。何も用がなかったから直行しただけだよ。女の子たちは撒いたのかい?」
出木杉「ああ、あれね。参っちゃうよ。悪目立ちしすぎたな」
のび太「何がだよ。常に500点満点取っておきながら。さぞ気分良かっただろうな」
やめようと思っているのに、嫌味を言ってしまう。
そんな自分が果てしなく嫌だった。
だが、出木杉はそんな僕に対して頭を下げてきたのだ。
出木杉「すまなかった」
のび太「え、ええ!?」
出木杉「君が一学期、頑張ってるのは知っていたんだ。たぶん1位を狙っているんだろうってことも分かってた」
のび太「え? なんで……」
出木杉「しずかちゃんから聞いてたからね。何かすごい頑張ってる、って。そこでピンと来たんだ」
のび太「だ、だからって、なんで謝るんだよ」
出木杉「本当を言うと、僕は学校のテストは手を抜いていたんだ。正確には語学の勉強をしてた」
のび太「語学?」
出木杉「英語・ロシア語・フランス語・中国語あたりだよ」
のび太「なんだって!?」
ぶったまげた。
僕なんか5科目でも大変だったのに、出木杉のやつは同じ時に10科目ぐらい勉強していたというのだ。
それじゃ勝ったとしたって、全然出木杉は本気じゃないっていうことに……。
出木杉「しずかちゃんからのび太君のことを聞いた時、僕は『ふーん』と思った。別に負けても気にならないし、のび太君が喜んでくれるならそれでもいいかなって」
のび太「じゃあ、何で……」
出木杉「ふと思ったんだ。それでいいのか、ってね。のび太君は必死に努力してるのに、僕は手を抜いた状態で勉強して、それで負けたらへらへらして君に拍手を送る。君はそれで満足だろうか、と」
のび太「それは……知ったら馬鹿にされたと思っただろうね」
出木杉「そうだよね」
出木杉は笑顔でうなずいてくれた。
これは、僕は出木杉に感謝すべきなのか?
いや、しかし、それでも勝ちたかったのは事実だし、出木杉が油断しそうな隙を狙ってたのも事実だ。
出木杉「それで、僕も試験勉強を真剣にやってみることにした。まあ、語学の勉強は続けながらだったんだけど……」
のび太「けど……?」
出木杉「適当なところで妥協しようと思ってたのに、ふとあるごとに『いや、のび太君はもっとやってくるはずだ』と思い込んで、気づいたら国語の先生の採点傾向を過去問題から分析したりしてしまったよ」
のび太「そんなこと、いくら僕でもやってないよ!」
出木杉「僕も500点満点取ってから気づいたよ。どう考えても過剰だった。だから、すまない」
のび太「はぁー、そんなんじゃ君のこと恨めないじゃないか。完全に僕の負けだよ」
出木杉は裏山に現れた。
出木杉「やあ、のび太君。呼び出して済まないね。それと待たせてごめん」
のび太「別に。何も用がなかったから直行しただけだよ。女の子たちは撒いたのかい?」
出木杉「ああ、あれね。参っちゃうよ。悪目立ちしすぎたな」
のび太「何がだよ。常に500点満点取っておきながら。さぞ気分良かっただろうな」
やめようと思っているのに、嫌味を言ってしまう。
そんな自分が果てしなく嫌だった。
だが、出木杉はそんな僕に対して頭を下げてきたのだ。
出木杉「すまなかった」
のび太「え、ええ!?」
出木杉「君が一学期、頑張ってるのは知っていたんだ。たぶん1位を狙っているんだろうってことも分かってた」
のび太「え? なんで……」
出木杉「しずかちゃんから聞いてたからね。何かすごい頑張ってる、って。そこでピンと来たんだ」
のび太「だ、だからって、なんで謝るんだよ」
出木杉「本当を言うと、僕は学校のテストは手を抜いていたんだ。正確には語学の勉強をしてた」
のび太「語学?」
出木杉「英語・ロシア語・フランス語・中国語あたりだよ」
のび太「なんだって!?」
ぶったまげた。
僕なんか5科目でも大変だったのに、出木杉のやつは同じ時に10科目ぐらい勉強していたというのだ。
それじゃ勝ったとしたって、全然出木杉は本気じゃないっていうことに……。
出木杉「しずかちゃんからのび太君のことを聞いた時、僕は『ふーん』と思った。別に負けても気にならないし、のび太君が喜んでくれるならそれでもいいかなって」
のび太「じゃあ、何で……」
出木杉「ふと思ったんだ。それでいいのか、ってね。のび太君は必死に努力してるのに、僕は手を抜いた状態で勉強して、それで負けたらへらへらして君に拍手を送る。君はそれで満足だろうか、と」
のび太「それは……知ったら馬鹿にされたと思っただろうね」
出木杉「そうだよね」
出木杉は笑顔でうなずいてくれた。
これは、僕は出木杉に感謝すべきなのか?
いや、しかし、それでも勝ちたかったのは事実だし、出木杉が油断しそうな隙を狙ってたのも事実だ。
出木杉「それで、僕も試験勉強を真剣にやってみることにした。まあ、語学の勉強は続けながらだったんだけど……」
のび太「けど……?」
出木杉「適当なところで妥協しようと思ってたのに、ふとあるごとに『いや、のび太君はもっとやってくるはずだ』と思い込んで、気づいたら国語の先生の採点傾向を過去問題から分析したりしてしまったよ」
のび太「そんなこと、いくら僕でもやってないよ!」
出木杉「僕も500点満点取ってから気づいたよ。どう考えても過剰だった。だから、すまない」
のび太「はぁー、そんなんじゃ君のこと恨めないじゃないか。完全に僕の負けだよ」
どっと肩の力が抜けた。
出木杉は出木杉で僕の知らない次元で苦しんでいたんだ。
それが分かると、僕がどれだけ頑張ったって勝てるわけがないって分かってしまった。
こいつは本当の本当に天才だったのだ。
のび太「ていうか、何で3年まで500点満点なんか続けたのさ? 僕がやる気失ってたのは気付いていただろ?」
出木杉「ああ、それね……」
出木杉はちょっとばつが悪そうに口ごもった。
出木杉「500点満点の威力が凄すぎたみたいで、なんか採点基準が僕基準になってしまったみたいなんだよね」
のび太「どゆこと?」
出木杉「落としたと思ったのに〇(マル)になってることとか、計算式間違ってるはずのに減点されなかったりしたことがあった」
のび太「えー、何それ」
出木杉「一回目でコツ掴んだってのもあるだろうけど、二回目以降はただの偶然だよ。運が良かっただけ」
のび太「それでも490点とかだったんだろ?」
出木杉「まあね」
まったく嫌味のない笑顔で出木杉は笑った。
あまりの毒気のなさに僕もつられて笑ってしまった。
出木杉「君は間違いなく僕の生涯で最強の敵だったよ、のび太君。ありがとう」
のび太「ちぇっ。最強なのは僕じゃなくて、君が作り出した僕じゃないか」
出木杉「そうだったね」
僕と出木杉は笑い合った。
小学校以来だな、こんなの。
あの時は出木杉ともくだらないことで笑い合ったこともあったっけ。
もう、任せてもいいかな。
僕の中の出木杉へのわだかまりは完全に消えた。
出木杉は出木杉で僕の知らない次元で苦しんでいたんだ。
それが分かると、僕がどれだけ頑張ったって勝てるわけがないって分かってしまった。
こいつは本当の本当に天才だったのだ。
のび太「ていうか、何で3年まで500点満点なんか続けたのさ? 僕がやる気失ってたのは気付いていただろ?」
出木杉「ああ、それね……」
出木杉はちょっとばつが悪そうに口ごもった。
出木杉「500点満点の威力が凄すぎたみたいで、なんか採点基準が僕基準になってしまったみたいなんだよね」
のび太「どゆこと?」
出木杉「落としたと思ったのに〇(マル)になってることとか、計算式間違ってるはずのに減点されなかったりしたことがあった」
のび太「えー、何それ」
出木杉「一回目でコツ掴んだってのもあるだろうけど、二回目以降はただの偶然だよ。運が良かっただけ」
のび太「それでも490点とかだったんだろ?」
出木杉「まあね」
まったく嫌味のない笑顔で出木杉は笑った。
あまりの毒気のなさに僕もつられて笑ってしまった。
出木杉「君は間違いなく僕の生涯で最強の敵だったよ、のび太君。ありがとう」
のび太「ちぇっ。最強なのは僕じゃなくて、君が作り出した僕じゃないか」
出木杉「そうだったね」
僕と出木杉は笑い合った。
小学校以来だな、こんなの。
あの時は出木杉ともくだらないことで笑い合ったこともあったっけ。
もう、任せてもいいかな。
僕の中の出木杉へのわだかまりは完全に消えた。
のび太「出木杉。しずかちゃんのこと頼むよ。じゃあね」
出木杉「いやいやいや、ちょっと待って。何で帰ろうとしてるの!?」
のび太「いや、ここはかっこよく去る場面かと」
出木杉「そんなの知らないよ。だいたい、僕はもうしずかちゃんにフラれてるよ」
のび太「え? 一体、いつ」
出木杉「1学期の中間試験のとき」
のび太「え? えー? 何で? 500点満点だぞ!?」
出木杉「のび太君落ち着いて。500点満点だぞって何なんだい」
のび太「え? でも? なんで?」
出木杉「君、中間試験の結果発表の翌日休んだだろ。その時、しずかちゃんに引っぱたかれたんだ」
のび太「何でだよ! 500点満点だぞ!?」
出木杉「いや、うん、ちょっと500点満点から離れてくれないかい? 恥ずかしくなってきた」
のび太「ごめん。ちょっと混乱して」
出木杉「別に大したことじゃないよ」
そういって出木杉はその時の状況を語りだした。
しずか「最低よ、出木杉さん!」
出木杉「すまない」
しずか「のび太さんがかわいそうだわ! あんなに頑張ってたのに!」
出木杉「すまない」
しずか「私、出木杉さんに言うんじゃなかった! こんなのあんまりだわ!」
出木杉「すまない」
しずか「すまないばっかり! 謝るぐらいなら最初からやらなければいいじゃない!」
出木杉「ごめん、しずかちゃん。悪気はなかったんだ。それだけは信じてほしい」
しずか「……ぐすっ」
知らなかった。
あのしずかちゃんが出木杉を叩いていたなんて。
出木杉「僕も暴走した手前謝るしかできなくてね。しずかちゃんには悪いことをした」
のび太「そうか。しずかちゃんが出木杉のやる気に火をつけた結果になっちゃったのか」
出木杉「謝り続けて許してはもらえたし、今では理解してもらってるけどね」
のび太「じゃあ別にいいじゃないか」
出木杉「もちろんそれだけじゃない。しずかちゃんを僕の夢の犠牲にはできないよ」
のび太「夢?」
出木杉「僕、宇宙飛行士になりたいんだ」
のび太「なればいいじゃない」
出木杉「そんな簡単じゃないんだよ」
のび太「そうなの?」
出木杉「まず数か国語を話せる必要がある。それも日常会話レベルじゃなくて学術論文レベルで」
のび太「ええー?」
出木杉「さらに宇宙で実験をするために必要な知識も身に着けていなければならない。自分の実験だけでなく、依頼された実験をするための知識も必要なんだ」
のび太「???」
出木杉「まあ、分かりやすく言うと数か国語話せて、しかもいろんな学問の博士になる必要があるってこと」
のび太「なるほど! それはたいへんだ!」
出木杉「ほんとに分かってる?」
のび太「もちろん!」
出木杉「まあ、勉強の方は頑張ればいいだけだけど、僕なんかを恋人にしたらしずかちゃんにもっと悪いことがある」
のび太「?」
出木杉「事故が起きたら一瞬で僕は死ぬ。そうでなくても家には帰れない。そんな僕の人生に、しずかちゃんをつき合わせる気にはならないよ」
のび太「そ、そっか……。宇宙って危険な場所だもんな」
出木杉「のび太君、しずかちゃんには悪い虫が寄り付かないように僕が見張っておくよ。君はできるだけ早く彼女を迎えに来るんだ」
のび太「なっ! いや、僕は、別にそんなんじゃ、ないんだよ?」
出木杉「ははは。それじゃあね。僕は君たちの天才として、誇りをもって生きていくよ」
こうして僕は出木杉と別れた。
中学・高校と話した時間は本当に今ぐらいしかなかったけど。
僕は出木杉との間に、深い友情を感じたのだった。
出木杉「いやいやいや、ちょっと待って。何で帰ろうとしてるの!?」
のび太「いや、ここはかっこよく去る場面かと」
出木杉「そんなの知らないよ。だいたい、僕はもうしずかちゃんにフラれてるよ」
のび太「え? 一体、いつ」
出木杉「1学期の中間試験のとき」
のび太「え? えー? 何で? 500点満点だぞ!?」
出木杉「のび太君落ち着いて。500点満点だぞって何なんだい」
のび太「え? でも? なんで?」
出木杉「君、中間試験の結果発表の翌日休んだだろ。その時、しずかちゃんに引っぱたかれたんだ」
のび太「何でだよ! 500点満点だぞ!?」
出木杉「いや、うん、ちょっと500点満点から離れてくれないかい? 恥ずかしくなってきた」
のび太「ごめん。ちょっと混乱して」
出木杉「別に大したことじゃないよ」
そういって出木杉はその時の状況を語りだした。
しずか「最低よ、出木杉さん!」
出木杉「すまない」
しずか「のび太さんがかわいそうだわ! あんなに頑張ってたのに!」
出木杉「すまない」
しずか「私、出木杉さんに言うんじゃなかった! こんなのあんまりだわ!」
出木杉「すまない」
しずか「すまないばっかり! 謝るぐらいなら最初からやらなければいいじゃない!」
出木杉「ごめん、しずかちゃん。悪気はなかったんだ。それだけは信じてほしい」
しずか「……ぐすっ」
知らなかった。
あのしずかちゃんが出木杉を叩いていたなんて。
出木杉「僕も暴走した手前謝るしかできなくてね。しずかちゃんには悪いことをした」
のび太「そうか。しずかちゃんが出木杉のやる気に火をつけた結果になっちゃったのか」
出木杉「謝り続けて許してはもらえたし、今では理解してもらってるけどね」
のび太「じゃあ別にいいじゃないか」
出木杉「もちろんそれだけじゃない。しずかちゃんを僕の夢の犠牲にはできないよ」
のび太「夢?」
出木杉「僕、宇宙飛行士になりたいんだ」
のび太「なればいいじゃない」
出木杉「そんな簡単じゃないんだよ」
のび太「そうなの?」
出木杉「まず数か国語を話せる必要がある。それも日常会話レベルじゃなくて学術論文レベルで」
のび太「ええー?」
出木杉「さらに宇宙で実験をするために必要な知識も身に着けていなければならない。自分の実験だけでなく、依頼された実験をするための知識も必要なんだ」
のび太「???」
出木杉「まあ、分かりやすく言うと数か国語話せて、しかもいろんな学問の博士になる必要があるってこと」
のび太「なるほど! それはたいへんだ!」
出木杉「ほんとに分かってる?」
のび太「もちろん!」
出木杉「まあ、勉強の方は頑張ればいいだけだけど、僕なんかを恋人にしたらしずかちゃんにもっと悪いことがある」
のび太「?」
出木杉「事故が起きたら一瞬で僕は死ぬ。そうでなくても家には帰れない。そんな僕の人生に、しずかちゃんをつき合わせる気にはならないよ」
のび太「そ、そっか……。宇宙って危険な場所だもんな」
出木杉「のび太君、しずかちゃんには悪い虫が寄り付かないように僕が見張っておくよ。君はできるだけ早く彼女を迎えに来るんだ」
のび太「なっ! いや、僕は、別にそんなんじゃ、ないんだよ?」
出木杉「ははは。それじゃあね。僕は君たちの天才として、誇りをもって生きていくよ」
こうして僕は出木杉と別れた。
中学・高校と話した時間は本当に今ぐらいしかなかったけど。
僕は出木杉との間に、深い友情を感じたのだった。
2025/12/06(土) 17:04:01.71ID:IJ+aJMwS
書き溜めしてたけど想像以上に大変だ……。
今日はここまで。
次回のび太大学生編です。
今日はここまで。
次回のび太大学生編です。
27創る名無しに見る名無し
2025/12/06(土) 17:17:12.97ID:Lz7sKlq6 良かった
途切れたと思ったら、また交わる道もある。
大学の入学式。
僕は一人きりで、ここからまた友人を作っていくんだなと寂しさとちょっとした期待感を胸に抱いていた。
そんな僕を驚かせたのが――
のび太「す、スネ夫!?」
スネ夫「よう、のび太。二番星ってほんとに同じ二番星のことだったんだな」
思わぬ再会に僕らはおかしなテンションで小躍りする。
のび太「ウエヘヘヘ、なんで君がここにいるんだよう!?」
スネ夫「ウヒヒヒヒ、僕もここに受かったからだよう!!」
のび太「でも、君は中高大一貫の私立にいたじゃあないか!」
スネ夫「ここにロボットのサークルがあってさあ。絶対入りたいって思ったんだよ!」
のび太「受験勉強きつかっただろ!?」
スネ夫「きつかった! 去年の8月から目指してさあ、ほんとにきつかったよ!」
一貫の私立で、適当にやってれば大学にも進学できたスネ夫だ。
それが大学を蹴って、外の大学を受験するとなったら、それは大変だっただろう。
のび太「ところでロボットのサークルって?」
スネ夫「ん? のび太知らないのか? うちの大学って、ロボットに関しては日本一なんだぜ」
のび太「え? じゃあドラえもんみたいのも作れるの?」
スネ夫「バカ。そんなの無理に決まってるだろ。ラジコンの延長みたいなのだよ」
のび太「なーんだ、つまらないの」
スネ夫「おい! なんだ、つまらないって!?」
のび太「わあ、ごめん! つい本音が」
スネ夫「まあ、しょうがないかあ。ニッチな趣味なのは確かだしなあ」
のび太「ニッチって?」
スネ夫「マニアックとかそういう意味」
のび太「へえ」
ああ、そうだった。
何でニッチなんて言葉知ったんだろうって思ったら、この時スネ夫から教わったんだっけ。
スネ夫「まあ、僕はロボットのサークルで大学生活を満喫するつもりだけど、お前どうするんだ?」
のび太「え? どうって?」
スネ夫「サークル活動とかバイトだよ。何もしないなんて大学生活を損するぞ」
のび太「そうなんだ。うーん、どうしよう……」
スネ夫「やれやれ、こういう何も考えてないやつが二番星の名声を落とすんだ」
のび太「どーゆう意味だ!」
と、スネ夫と話して別れたわけだが。
のび太「サークル活動? バイト?」
言葉に出してみたが、ピンとこなかった。
そういえば、今までクラブ活動にも入ったことがなかった。
のび太「もしかして、僕ってつまらない人間……なのか?」
考えてみれば、今まで勉強しかしたことがなかった。
学生の本分とは言われてはいたけど、それ以外のことは何もやったことがない。
どうしよう……。
大学に入って、いきなり僕は難問に直面した。
大学の入学式。
僕は一人きりで、ここからまた友人を作っていくんだなと寂しさとちょっとした期待感を胸に抱いていた。
そんな僕を驚かせたのが――
のび太「す、スネ夫!?」
スネ夫「よう、のび太。二番星ってほんとに同じ二番星のことだったんだな」
思わぬ再会に僕らはおかしなテンションで小躍りする。
のび太「ウエヘヘヘ、なんで君がここにいるんだよう!?」
スネ夫「ウヒヒヒヒ、僕もここに受かったからだよう!!」
のび太「でも、君は中高大一貫の私立にいたじゃあないか!」
スネ夫「ここにロボットのサークルがあってさあ。絶対入りたいって思ったんだよ!」
のび太「受験勉強きつかっただろ!?」
スネ夫「きつかった! 去年の8月から目指してさあ、ほんとにきつかったよ!」
一貫の私立で、適当にやってれば大学にも進学できたスネ夫だ。
それが大学を蹴って、外の大学を受験するとなったら、それは大変だっただろう。
のび太「ところでロボットのサークルって?」
スネ夫「ん? のび太知らないのか? うちの大学って、ロボットに関しては日本一なんだぜ」
のび太「え? じゃあドラえもんみたいのも作れるの?」
スネ夫「バカ。そんなの無理に決まってるだろ。ラジコンの延長みたいなのだよ」
のび太「なーんだ、つまらないの」
スネ夫「おい! なんだ、つまらないって!?」
のび太「わあ、ごめん! つい本音が」
スネ夫「まあ、しょうがないかあ。ニッチな趣味なのは確かだしなあ」
のび太「ニッチって?」
スネ夫「マニアックとかそういう意味」
のび太「へえ」
ああ、そうだった。
何でニッチなんて言葉知ったんだろうって思ったら、この時スネ夫から教わったんだっけ。
スネ夫「まあ、僕はロボットのサークルで大学生活を満喫するつもりだけど、お前どうするんだ?」
のび太「え? どうって?」
スネ夫「サークル活動とかバイトだよ。何もしないなんて大学生活を損するぞ」
のび太「そうなんだ。うーん、どうしよう……」
スネ夫「やれやれ、こういう何も考えてないやつが二番星の名声を落とすんだ」
のび太「どーゆう意味だ!」
と、スネ夫と話して別れたわけだが。
のび太「サークル活動? バイト?」
言葉に出してみたが、ピンとこなかった。
そういえば、今までクラブ活動にも入ったことがなかった。
のび太「もしかして、僕ってつまらない人間……なのか?」
考えてみれば、今まで勉強しかしたことがなかった。
学生の本分とは言われてはいたけど、それ以外のことは何もやったことがない。
どうしよう……。
大学に入って、いきなり僕は難問に直面した。
大学に入って2か月。
授業には慣れてきた。
しかし、一向にサークル活動やバイトが決まらない。
情報を集めれば集めるほど、僕は混乱していた。
サークル活動はピンとくるものがない。
じゃあ、お金も稼げるしバイト……となると、バイトが本業、勉強そっちのけ、休日もいきなり仕事に呼ばれる、成績不足で退学、などと笑えない言葉ばかり出てくる。
喫茶店なりコンビニのバイトにでも飛び込めばよかったのだが、昔からの要領の悪さで不安になって二の足を踏んでしまっていた。
そうやって悩みに悩んだある日、僕の頭にとある閃きが舞い降りる。
のび太「そうだ、ドラえもん!」
先生に教えてもらった時から、つい自分の力で解決することが癖になっていたけど、よく考えたら僕にはドラえもんがいたじゃないか。
僕が人生を誤らないために、是非力を貸してもらおう。
もちろん、理想のバイト先を作ってもらうとか、そういうわけではない。
ちょっと知恵を貸してくれればいいんだ。
そのための作戦も考えてある。
ただ、問題はドラえもんが来るのは予定通りなら夏休み。
今から二か月も先だ。
さすがにそれまで待っている、というわけにもいかなかった。
のび太「どうやってドラえもんを呼び出そう」
頭をフル回転させる。
すると、昔の記憶が思い当たった。
高校生の一学期、中間試験の後。
ぶっ倒れた僕を心配して、規則外だけど来てくれたことがあった。
のび太「えーっと、あの時は確か……」
思い出す。
ドラえもんが何でやってきたのかを。
確か、バイタルが異常数値を示したからとか言ってたな。
たぶん生命活動とかそのあたりの異常のことだろう。
ということは、ドラえもんは時々は僕のことをタイムテレビか何かで確認してるはずだ。
このことから予想される答えは……。
のび太「異常なことをしてアピールする! これだ!」
そうと決まった僕は庭の物置を漁った。
何か使えるものはないか。
すると、ジャイアンのリサイタルの道具が出てきた。
なんでこんなもんもらったんだっけ?
いや、でも、今の僕には好都合だ。
それを持って自分の部屋に上がり、準備を整えた。
さあ、頼むぞドラえもん。僕を見つけてくれ。
授業には慣れてきた。
しかし、一向にサークル活動やバイトが決まらない。
情報を集めれば集めるほど、僕は混乱していた。
サークル活動はピンとくるものがない。
じゃあ、お金も稼げるしバイト……となると、バイトが本業、勉強そっちのけ、休日もいきなり仕事に呼ばれる、成績不足で退学、などと笑えない言葉ばかり出てくる。
喫茶店なりコンビニのバイトにでも飛び込めばよかったのだが、昔からの要領の悪さで不安になって二の足を踏んでしまっていた。
そうやって悩みに悩んだある日、僕の頭にとある閃きが舞い降りる。
のび太「そうだ、ドラえもん!」
先生に教えてもらった時から、つい自分の力で解決することが癖になっていたけど、よく考えたら僕にはドラえもんがいたじゃないか。
僕が人生を誤らないために、是非力を貸してもらおう。
もちろん、理想のバイト先を作ってもらうとか、そういうわけではない。
ちょっと知恵を貸してくれればいいんだ。
そのための作戦も考えてある。
ただ、問題はドラえもんが来るのは予定通りなら夏休み。
今から二か月も先だ。
さすがにそれまで待っている、というわけにもいかなかった。
のび太「どうやってドラえもんを呼び出そう」
頭をフル回転させる。
すると、昔の記憶が思い当たった。
高校生の一学期、中間試験の後。
ぶっ倒れた僕を心配して、規則外だけど来てくれたことがあった。
のび太「えーっと、あの時は確か……」
思い出す。
ドラえもんが何でやってきたのかを。
確か、バイタルが異常数値を示したからとか言ってたな。
たぶん生命活動とかそのあたりの異常のことだろう。
ということは、ドラえもんは時々は僕のことをタイムテレビか何かで確認してるはずだ。
このことから予想される答えは……。
のび太「異常なことをしてアピールする! これだ!」
そうと決まった僕は庭の物置を漁った。
何か使えるものはないか。
すると、ジャイアンのリサイタルの道具が出てきた。
なんでこんなもんもらったんだっけ?
いや、でも、今の僕には好都合だ。
それを持って自分の部屋に上がり、準備を整えた。
さあ、頼むぞドラえもん。僕を見つけてくれ。
ドラえもん「アホか君は!」
のび太「でも君は来てくれたじゃないか」
ドラえもん「こんなアホにつられた自分が情けない」
3時間後、果たしてドラえもんはやってきた。
説教つきで。
ちなみに、ママとパパもカンカンになって一階へ帰っていった。
ドラえもん「そりゃ来るに決まってるだろ! タイムテレビで君の様子を見たら、あんな理解不能なことやってりゃ!」
のび太「いやあ、来てくれてよかったよ。来てくれなかったら、明日は空き地でやろうかと思ってたから。でも、さすがに恥ずかしいだろ」
ドラえもん「家でも十分恥ずかしい! 何なんだ。腰ミノなんか付けて、変なメイクまでして、挙句の果てには『あーほやーーあぁぁぁ、あぁぁ〜。ハラピリハラソレ! ヒンーデモ…ッ』って!」
のび太「ドラえもん降臨の儀式」
ドラえもん「アホか! さもなきゃ君は大アホだ!」
のび太「まあまあ。あー、やっとメイク取れた」
ドラえもん「まったく。で、何なの? なんか用があって僕を呼んだんだろ?」
のび太「いやあ、そう来なくっちゃ。実はさ、バイト先を探すのに悩んでるんだよね?」
ドラえもん「まさか、昼寝してるだけで給料が出るようなバイト先を出してとか言うんじゃ……」
のび太「まさか! 子供じゃあるまいし、そんなんじゃないよ!」
ドラえもん「それじゃ、いいバイト先を決める道具出してとか?」
のび太「そこまで他力本願じゃないよ」
ドラえもん「じゃ、何なの?」
のび太「未来の僕に何のバイトしてるか聞きたいからタイムマシン貸して」
僕がそういうとドラえもんはずっこけた。
ドラえもん「想像以上に下らなかった!」
のび太「なんだよ。僕だって真剣に悩んだんだぞ」
ドラえもん「その結果がバイト先探すためにタイムマシンを貸せって、君はアホなのか。あー、アホらしい」
のび太「そこまで馬鹿にするなよな。僕だってちゃんと考えてるさ」
ドラえもん「何をさ」
のび太「未来の僕から聞くなら、結局は僕自身で決めたことだろ? なら問題ないじゃないか」
ドラえもん「屁理屈が過ぎる」
ドラえもんは頭を押さえてうずくまってしまった。
のび太「で、どうなの? タイムマシン貸してくれるの?」
ドラえもん「こんな下らないことに道具なんか貸したくないけど、来ちゃったものは仕方ない。手伝ってあげるよ……はぁ」
のび太「やった。最初からそう言えばいいんだよ」
ドラえもん「はぁ〜、気が進まない」
のび太「でも君は来てくれたじゃないか」
ドラえもん「こんなアホにつられた自分が情けない」
3時間後、果たしてドラえもんはやってきた。
説教つきで。
ちなみに、ママとパパもカンカンになって一階へ帰っていった。
ドラえもん「そりゃ来るに決まってるだろ! タイムテレビで君の様子を見たら、あんな理解不能なことやってりゃ!」
のび太「いやあ、来てくれてよかったよ。来てくれなかったら、明日は空き地でやろうかと思ってたから。でも、さすがに恥ずかしいだろ」
ドラえもん「家でも十分恥ずかしい! 何なんだ。腰ミノなんか付けて、変なメイクまでして、挙句の果てには『あーほやーーあぁぁぁ、あぁぁ〜。ハラピリハラソレ! ヒンーデモ…ッ』って!」
のび太「ドラえもん降臨の儀式」
ドラえもん「アホか! さもなきゃ君は大アホだ!」
のび太「まあまあ。あー、やっとメイク取れた」
ドラえもん「まったく。で、何なの? なんか用があって僕を呼んだんだろ?」
のび太「いやあ、そう来なくっちゃ。実はさ、バイト先を探すのに悩んでるんだよね?」
ドラえもん「まさか、昼寝してるだけで給料が出るようなバイト先を出してとか言うんじゃ……」
のび太「まさか! 子供じゃあるまいし、そんなんじゃないよ!」
ドラえもん「それじゃ、いいバイト先を決める道具出してとか?」
のび太「そこまで他力本願じゃないよ」
ドラえもん「じゃ、何なの?」
のび太「未来の僕に何のバイトしてるか聞きたいからタイムマシン貸して」
僕がそういうとドラえもんはずっこけた。
ドラえもん「想像以上に下らなかった!」
のび太「なんだよ。僕だって真剣に悩んだんだぞ」
ドラえもん「その結果がバイト先探すためにタイムマシンを貸せって、君はアホなのか。あー、アホらしい」
のび太「そこまで馬鹿にするなよな。僕だってちゃんと考えてるさ」
ドラえもん「何をさ」
のび太「未来の僕から聞くなら、結局は僕自身で決めたことだろ? なら問題ないじゃないか」
ドラえもん「屁理屈が過ぎる」
ドラえもんは頭を押さえてうずくまってしまった。
のび太「で、どうなの? タイムマシン貸してくれるの?」
ドラえもん「こんな下らないことに道具なんか貸したくないけど、来ちゃったものは仕方ない。手伝ってあげるよ……はぁ」
のび太「やった。最初からそう言えばいいんだよ」
ドラえもん「はぁ〜、気が進まない」
そんなわけで、僕らは机からタイムマシンに乗り込んだ。
さっそく2か月後の僕のところへ。
のび太(現)「やあ、未来の僕」
のび太(2)「うわ、何だ君!?」
ドラえもん「はぁ〜」
のび太(2)「なんだ、ドラえもんか。君は誰? 僕なのは間違いないだろうけど」
のび太(現)「僕は2ヵ月前ののび太。突然だけどバイトってどこで何してる?」
のび太(2)「バイト? まだ決まってないなあ。そういえば2ヵ月前から悩んでたっけ」
のび太(現)「ええー? まったく、僕はしょうがないなあ」
のび太(2)「そうだ、いいことを思いついた。僕も悩んでるんだ。2か月後の僕に聞きに行ってみよう」
のび太(現)「さすがに安直すぎない?」
のび太(2)「2か月後なら夏休みを経過してるんだ。きっと見つかってるさ」
のび太(現)「それもそうか。じゃ、ドラえもん出して」
ドラえもん「ええー!?」
嫌そうな顔をしたドラえもんをせかし、僕と2ヵ月後の僕は4ヵ月後に飛んだ。
のび太(現)「やあ、こんばんは」
のび太(2)「どうも」
のび太(4)「なんだなんだ? 僕が二人?」
ドラえもん「はぁ〜」
のび太(4)「なんだ、ドラえもんか。で、これどういうこと?」
のび太(現)「実は僕、4ヵ月前の君なんだけどちょっと困ってるんだ」
のび太(2)「ちなみに僕は2ヵ月前の君ね。君、今バイトって何やってる?」
のび太(4)「ははぁ、僕が何のバイトをしてるか知りたいと」
のび太(現)「うん」
のび太(2)「そう」
のび太(4)「悪いけど、それ僕が聞きたいな。まだ決まってないんだよ」
のび太(現)「えー?」
のび太(2)「まったく、夏休みの間何してたんだ」
のび太(4)「それを言われると耳が痛いな。そうだ、じゃあいっそ2ヶ月後の僕に聞いてみるってのはどう?」
のび太(現)「そうだね」
のび太(2)「じゃあ、ドラえもん。頼むよ」
ドラえもん「…………」
心底嫌そうな顔をしたドラえもんをせかし、僕と2ヵ月後の僕と4ヶ月後の僕は6ヵ月後に飛んだ。
のび太(現)「やあ、僕」
のび太(2)「僕ら過去から来たんだ」
のび太(4)「ちなみにこっちが6ヵ月前の僕で、こっちが4ヵ月前の僕、それで僕は2ヵ月前の僕」
のび太(6)「大勢でどうしたの?」
のび太(現)「僕ら、バイト先に困っててさ。未来の僕に尋ねようと思って」
のび太(6)「うーん、もうしわけないけどまだ決まってないなあ」
のび太(2)「何をグダグダやってるんだ!」
のび太(4)「そうだそうだ。それでも男か!」
のび太(6)「いやあ、ごめんごめん。そうだ、なら……」
ドラえもん「いい加減にしろお前ら!」
のび太ーズ「ドラえもん」
ドラえもん「そうやって責任を未来に押し付けるようじゃ、いつまで経っても答えなんか出るか!」
さっそく2か月後の僕のところへ。
のび太(現)「やあ、未来の僕」
のび太(2)「うわ、何だ君!?」
ドラえもん「はぁ〜」
のび太(2)「なんだ、ドラえもんか。君は誰? 僕なのは間違いないだろうけど」
のび太(現)「僕は2ヵ月前ののび太。突然だけどバイトってどこで何してる?」
のび太(2)「バイト? まだ決まってないなあ。そういえば2ヵ月前から悩んでたっけ」
のび太(現)「ええー? まったく、僕はしょうがないなあ」
のび太(2)「そうだ、いいことを思いついた。僕も悩んでるんだ。2か月後の僕に聞きに行ってみよう」
のび太(現)「さすがに安直すぎない?」
のび太(2)「2か月後なら夏休みを経過してるんだ。きっと見つかってるさ」
のび太(現)「それもそうか。じゃ、ドラえもん出して」
ドラえもん「ええー!?」
嫌そうな顔をしたドラえもんをせかし、僕と2ヵ月後の僕は4ヵ月後に飛んだ。
のび太(現)「やあ、こんばんは」
のび太(2)「どうも」
のび太(4)「なんだなんだ? 僕が二人?」
ドラえもん「はぁ〜」
のび太(4)「なんだ、ドラえもんか。で、これどういうこと?」
のび太(現)「実は僕、4ヵ月前の君なんだけどちょっと困ってるんだ」
のび太(2)「ちなみに僕は2ヵ月前の君ね。君、今バイトって何やってる?」
のび太(4)「ははぁ、僕が何のバイトをしてるか知りたいと」
のび太(現)「うん」
のび太(2)「そう」
のび太(4)「悪いけど、それ僕が聞きたいな。まだ決まってないんだよ」
のび太(現)「えー?」
のび太(2)「まったく、夏休みの間何してたんだ」
のび太(4)「それを言われると耳が痛いな。そうだ、じゃあいっそ2ヶ月後の僕に聞いてみるってのはどう?」
のび太(現)「そうだね」
のび太(2)「じゃあ、ドラえもん。頼むよ」
ドラえもん「…………」
心底嫌そうな顔をしたドラえもんをせかし、僕と2ヵ月後の僕と4ヶ月後の僕は6ヵ月後に飛んだ。
のび太(現)「やあ、僕」
のび太(2)「僕ら過去から来たんだ」
のび太(4)「ちなみにこっちが6ヵ月前の僕で、こっちが4ヵ月前の僕、それで僕は2ヵ月前の僕」
のび太(6)「大勢でどうしたの?」
のび太(現)「僕ら、バイト先に困っててさ。未来の僕に尋ねようと思って」
のび太(6)「うーん、もうしわけないけどまだ決まってないなあ」
のび太(2)「何をグダグダやってるんだ!」
のび太(4)「そうだそうだ。それでも男か!」
のび太(6)「いやあ、ごめんごめん。そうだ、なら……」
ドラえもん「いい加減にしろお前ら!」
のび太ーズ「ドラえもん」
ドラえもん「そうやって責任を未来に押し付けるようじゃ、いつまで経っても答えなんか出るか!」
言われてみればその通りだった。
僕が態度を改めなければ、いつまで経っても僕は僕のままだろう。
のび太(6)「それもそうだな。藤本君にでも相談してみるか」
のび太(4)「そうだね、藤本君ならいいバイト知ってそうだし」
のび太(2)「藤本君って誰?」
のび太(6)「誰って? 授業で一緒になった藤本君だよ。知らないの?」
のび太(4)「いや、待った。藤本君に会ったのは冬学期だろ? 彼らはまだ知らないんだ」
のび太(現)「ええー? じゃあ僕らは冬学期まで待たないといけないってこと?」
のび太(2)「しょうがない。その藤本君に会えるまで待つか」
のび太(現)「いや、そういう姿勢だから僕はダメなんだ」
のび太(2)「それもそうだ。僕らは自分で探すとするか」
のび太―ズ「というわけで帰るよ、ドラえもん」
なぜかドラえもんは頭を押さえて唸っていた。
のび太―ズ「どうしたの?」
ドラえもん「こんな下らない結論を出すためだけにタイムマシンを使ったのかと思うと、情けないやら何なのやら」
のび太―ズ「ごめん。さあ、帰ろう」
ドラえもん「って、6ヶ月後ののび太! 君にタイムマシンは必要ないだろ! どこに帰る気だ!」
のび太(6)「おっと、そうだった」
ドラえもん「アタマイタイ……」
その後、未来の僕らと別れた僕は現代へ帰ってきた。
非常に疲れた顔のドラえもんと一緒に。
ドラえもん「はぁ〜、果てしなく無駄な時間だった」
のび太「ドラえもん、僕がここでバイトの決心をしたら彼らにはもう会えないんだよね?」
ドラえもん「そうなるね。パラレルワールドが発生することになる。いや、もう彼らの時間軸では発生してるかも」
のび太「……」
ドラえもん「怖いかい?」
のび太「ううん。『現代』の僕はパパにでも相談してみるよ」
ドラえもん「それがいい。じゃあね、もうこんな下らないことで呼び出さないでくれよ」
のび太「悪かったって。じゃあね」
そう言ってドラえもんは帰っていった。
決意もそのままにパパに相談してみたところ、パパの知り合いがやってるスーパーマーケットを紹介してもらえた。
アットホームな職場だという。
他所のスーパーやコンビニよりも信頼できそうと思った僕は、そこをバイト先に決めたのだった。
僕が態度を改めなければ、いつまで経っても僕は僕のままだろう。
のび太(6)「それもそうだな。藤本君にでも相談してみるか」
のび太(4)「そうだね、藤本君ならいいバイト知ってそうだし」
のび太(2)「藤本君って誰?」
のび太(6)「誰って? 授業で一緒になった藤本君だよ。知らないの?」
のび太(4)「いや、待った。藤本君に会ったのは冬学期だろ? 彼らはまだ知らないんだ」
のび太(現)「ええー? じゃあ僕らは冬学期まで待たないといけないってこと?」
のび太(2)「しょうがない。その藤本君に会えるまで待つか」
のび太(現)「いや、そういう姿勢だから僕はダメなんだ」
のび太(2)「それもそうだ。僕らは自分で探すとするか」
のび太―ズ「というわけで帰るよ、ドラえもん」
なぜかドラえもんは頭を押さえて唸っていた。
のび太―ズ「どうしたの?」
ドラえもん「こんな下らない結論を出すためだけにタイムマシンを使ったのかと思うと、情けないやら何なのやら」
のび太―ズ「ごめん。さあ、帰ろう」
ドラえもん「って、6ヶ月後ののび太! 君にタイムマシンは必要ないだろ! どこに帰る気だ!」
のび太(6)「おっと、そうだった」
ドラえもん「アタマイタイ……」
その後、未来の僕らと別れた僕は現代へ帰ってきた。
非常に疲れた顔のドラえもんと一緒に。
ドラえもん「はぁ〜、果てしなく無駄な時間だった」
のび太「ドラえもん、僕がここでバイトの決心をしたら彼らにはもう会えないんだよね?」
ドラえもん「そうなるね。パラレルワールドが発生することになる。いや、もう彼らの時間軸では発生してるかも」
のび太「……」
ドラえもん「怖いかい?」
のび太「ううん。『現代』の僕はパパにでも相談してみるよ」
ドラえもん「それがいい。じゃあね、もうこんな下らないことで呼び出さないでくれよ」
のび太「悪かったって。じゃあね」
そう言ってドラえもんは帰っていった。
決意もそのままにパパに相談してみたところ、パパの知り合いがやってるスーパーマーケットを紹介してもらえた。
アットホームな職場だという。
他所のスーパーやコンビニよりも信頼できそうと思った僕は、そこをバイト先に決めたのだった。
初バイトを終えた次の日、僕はスネ夫に会っていた。
大学というのは奇妙な場所で、学部が違うと授業で出会うことも基本ないのだ。
これはせっかく一緒の大学に行ったのに、ちょっと残念なことだった。
まあ、出会うことはないと言っても、休み時間に待ち合せたり、キャンパス内ですれ違ったりと、出会う機会がないわけではないんだけど。
スネ夫「よ、のび太。突然呼び出して、どうしたんだ?」
のび太「バイト先決まったよ。」
スネ夫「おー、そうか。結局バイトにしたんだな。まあ、お前のうちじゃ遊んでる余裕はないもんな」
のび太「サークル活動はピンとくるのがなかったの! 別にバイトしなくても大学ぐらい行けるやい!」
スネ夫「はは、そりゃ悪かったな」
もったく、相変わらず人の家をバカにして。
それでも、昔よりはだいぶマイルドになった気もした。
大人になったってことだろう。
僕も、スネ夫も。
スネ夫「で、どこにしたんだ?」
のび太「スーパーマーケット。パパの友達がやってるとこで、いい感じだったよ」
スネ夫「お前、二番星ならもう少しマシなのあっただろ、家庭教師とかさあ」
のび太「やだよ。人に教えるなんて、僕のガラじゃない」
スネ夫「しずかちゃん似の小学生が相手でもか?」
のび太「え? えへへ、それなら前向きに考えても」
スネ夫「お巡りさん、こいつです」
のび太「って、冗談だよ! そ、そそそ、そんなけしからん仕事なんてやるわけないじゃあないか!」
スネ夫「ホントか?」
のび太「そういうスネ夫はどうなんだよ。なんかバイトしてるのか?」
スネ夫「僕? 僕はパパの秘書っていうか、会社の見習いだね」
のび太「うわ、ずる。七光りじゃないか」
スネ夫「それがそうでもないんだよ。会社ではパパって呼ぶなって言われてるし、先輩秘書さんに厳しく指導されててさ」
のび太「へえ。スネ夫も苦労してるんだなあ」
スネ夫「まあ、その代わり大学では遊んでて構わないって言われてるけどね」
のび太「遊ぶって言えば、どうなの? ロボットサークルってやつ」
スネ夫「ああ、聞いてくれるかい。今は耐荷重とボディの頑丈性の両立の問題に取り組んでで、頑丈性を上げないといけないだが、それには大会の規制が問題でね。鋼鉄製のボディかプラスチック製のボディかでもめてるんだ。もちろんどっちにも利点があるし、それぞれに欠点も……」
のび太(聞かなきゃよかった)
ついうっかりロボットサークルの話を聞いたせいで、スネ夫は小一時間話し続けた。
終わり際に上機嫌になって「また今度話してやるよ」なんて言ってたが、もうたくさんだった。
何を話してたかなんて、ちんぷんかんぷんで全く頭に入ってこなかった。
今後スネ夫の前ではロボットサークルの話はしないでおこう。
そう僕は決意した。
大学というのは奇妙な場所で、学部が違うと授業で出会うことも基本ないのだ。
これはせっかく一緒の大学に行ったのに、ちょっと残念なことだった。
まあ、出会うことはないと言っても、休み時間に待ち合せたり、キャンパス内ですれ違ったりと、出会う機会がないわけではないんだけど。
スネ夫「よ、のび太。突然呼び出して、どうしたんだ?」
のび太「バイト先決まったよ。」
スネ夫「おー、そうか。結局バイトにしたんだな。まあ、お前のうちじゃ遊んでる余裕はないもんな」
のび太「サークル活動はピンとくるのがなかったの! 別にバイトしなくても大学ぐらい行けるやい!」
スネ夫「はは、そりゃ悪かったな」
もったく、相変わらず人の家をバカにして。
それでも、昔よりはだいぶマイルドになった気もした。
大人になったってことだろう。
僕も、スネ夫も。
スネ夫「で、どこにしたんだ?」
のび太「スーパーマーケット。パパの友達がやってるとこで、いい感じだったよ」
スネ夫「お前、二番星ならもう少しマシなのあっただろ、家庭教師とかさあ」
のび太「やだよ。人に教えるなんて、僕のガラじゃない」
スネ夫「しずかちゃん似の小学生が相手でもか?」
のび太「え? えへへ、それなら前向きに考えても」
スネ夫「お巡りさん、こいつです」
のび太「って、冗談だよ! そ、そそそ、そんなけしからん仕事なんてやるわけないじゃあないか!」
スネ夫「ホントか?」
のび太「そういうスネ夫はどうなんだよ。なんかバイトしてるのか?」
スネ夫「僕? 僕はパパの秘書っていうか、会社の見習いだね」
のび太「うわ、ずる。七光りじゃないか」
スネ夫「それがそうでもないんだよ。会社ではパパって呼ぶなって言われてるし、先輩秘書さんに厳しく指導されててさ」
のび太「へえ。スネ夫も苦労してるんだなあ」
スネ夫「まあ、その代わり大学では遊んでて構わないって言われてるけどね」
のび太「遊ぶって言えば、どうなの? ロボットサークルってやつ」
スネ夫「ああ、聞いてくれるかい。今は耐荷重とボディの頑丈性の両立の問題に取り組んでで、頑丈性を上げないといけないだが、それには大会の規制が問題でね。鋼鉄製のボディかプラスチック製のボディかでもめてるんだ。もちろんどっちにも利点があるし、それぞれに欠点も……」
のび太(聞かなきゃよかった)
ついうっかりロボットサークルの話を聞いたせいで、スネ夫は小一時間話し続けた。
終わり際に上機嫌になって「また今度話してやるよ」なんて言ってたが、もうたくさんだった。
何を話してたかなんて、ちんぷんかんぷんで全く頭に入ってこなかった。
今後スネ夫の前ではロボットサークルの話はしないでおこう。
そう僕は決意した。
大学というやつは、人をおかしくさせるのだろうか。
2年に入る直前の春休み。
ちょうど僕らが20歳になって成人を迎える、その前の春休みで事件は起こった。
例によって、集まった僕らは五泊六日の大バカンスに出かけた。
今回は大学の1年ということもあって、僕らは、はしゃぎとおした。
2年になったら、1年よりは忙しくなるという実感もあったんだろう。
だが、それがよくなかった。
タガの外れた僕らの暴走は、最終日には暴発寸前だったのだろう。
それは恒例の五人野球をやっていた時のこと。
この日、ジャイアンはドラえもんにボールをぶつけまくった。
いや、ジャイアンがドラえもんにデッドボールを与えるのはいつものことなのだが、この日はいつも以上に酷かった。
しかも、思いっきり力んで投げるものだから、軟球とはいえドラえもんも相当痛かったらしい。
事件が起きたのは4回目のドラえもんの攻撃の時だった。
もう何回目になるかも分からないデッドボールを受けた瞬間、ついにドラえもんの怒りが爆発した。
カンカンに怒ったドラえもんが、バットを振りかざしてマウンドに向かう。
ドラえもん「このやろう! さっきからポコポコとボールをぶつけやがって、もう頭来たぞ!」
ジャイアン「お? なんだ? 乱闘か? 受けて立とうじゃねえの!」
ドラえもん「くらえ!」
ジャイアン「なんの!」
あろうことかバットと素手で乱闘を始めてしまった二人。
しずか「ちょっと、やめて二人とも!」
スネ夫「大人げないぞ! どっちも!」
しずかちゃんとスネ夫は止めようとするが、二人の争いはヒートアップしており、とても止まりそうにない。
見かねて僕が体で止めに入った。
のび太「やめなよ」
ジャイアン「うるせえ!」
のび太「うげー」
ドラえもん「あっ、のび太君」
しかし、タイミングが悪かったようだ。
止めに入った瞬間、僕はジャイアンに殴られてノックダウン。
当然、この後の話は後でスネ夫から聞かされたものだ。
2年に入る直前の春休み。
ちょうど僕らが20歳になって成人を迎える、その前の春休みで事件は起こった。
例によって、集まった僕らは五泊六日の大バカンスに出かけた。
今回は大学の1年ということもあって、僕らは、はしゃぎとおした。
2年になったら、1年よりは忙しくなるという実感もあったんだろう。
だが、それがよくなかった。
タガの外れた僕らの暴走は、最終日には暴発寸前だったのだろう。
それは恒例の五人野球をやっていた時のこと。
この日、ジャイアンはドラえもんにボールをぶつけまくった。
いや、ジャイアンがドラえもんにデッドボールを与えるのはいつものことなのだが、この日はいつも以上に酷かった。
しかも、思いっきり力んで投げるものだから、軟球とはいえドラえもんも相当痛かったらしい。
事件が起きたのは4回目のドラえもんの攻撃の時だった。
もう何回目になるかも分からないデッドボールを受けた瞬間、ついにドラえもんの怒りが爆発した。
カンカンに怒ったドラえもんが、バットを振りかざしてマウンドに向かう。
ドラえもん「このやろう! さっきからポコポコとボールをぶつけやがって、もう頭来たぞ!」
ジャイアン「お? なんだ? 乱闘か? 受けて立とうじゃねえの!」
ドラえもん「くらえ!」
ジャイアン「なんの!」
あろうことかバットと素手で乱闘を始めてしまった二人。
しずか「ちょっと、やめて二人とも!」
スネ夫「大人げないぞ! どっちも!」
しずかちゃんとスネ夫は止めようとするが、二人の争いはヒートアップしており、とても止まりそうにない。
見かねて僕が体で止めに入った。
のび太「やめなよ」
ジャイアン「うるせえ!」
のび太「うげー」
ドラえもん「あっ、のび太君」
しかし、タイミングが悪かったようだ。
止めに入った瞬間、僕はジャイアンに殴られてノックダウン。
当然、この後の話は後でスネ夫から聞かされたものだ。
ドラえもん「のび太君!? しっかりしてよ、のび太君!!」
ジャイアン「あ」
しずか「もう許せないわ! やりすぎよ、武さん!」
ジャイアン「しずかちゃん!? うおっ!」
しずかちゃんの拳がジャイアンのアゴをとらえかける。
ジャイアンは間一髪これをかわした。
女の子からの攻撃にひるむかと思えたジャイアンだったが、逆に激昂した。
ジャイアン「やんのか? このやろう!」
しずか「何よ!」
ジャイアン「ぶっ!」
反撃に出たジャイアンだったが、しずかちゃんは巧みにその攻撃をかわし、逆にジャイアンに肘打ち、ローキック、平手打ちを入れた。
後に見ていたスネ夫いわく、「きれいに入ってた。最後の平手打ちなんか、張り手じゃないかってぐらい凄かった」だそうだ。
さすがソフトボール部。
もう絶対逆らわないようにしよう。
だが、しかし、ジャイアンもさすがタフだった。
しずかちゃんの3連撃にもわずかに怯んだだけで、即座に反撃しようとしたのだ。
ジャイアン「てめえ、ぶっつぶしてやる!」
しずか「きゃあ!?」
スネ夫「なんだこのやろう!」
ジャイアン「ウギャー!」
しずか「スネ夫さん!」
スネ夫「もう僕も堪忍袋の緒が切れたぞ! やってやる!」
しずか「ええ! 武さんにはいいクスリだわ!」
ジャイアン「なんだ、てめえら! うわっ、やめ……」
何とスネ夫が突っ込み、ジャイアンはひっくり返った。
もう、そのあとは酷いもんだった。
「やめて」と懇願するジャイアンを、しずかちゃんとスネ夫がボコボコにしたのだ。
のび太「う、うーん」
ドラえもん「あっ、のび太君気が付いたか。よかった」
のび太「ドラえもん? 僕は、どうなったの?」
ドラえもん「僕をかばってジャイアンの盾に……」
のび太「そのジャイアンは?」
ドラえもん「ジャイアンは……って、あーーーっ!」
僕とドラえもんが見た先にいたのは、しずかちゃんに踏みつけられ、スネ夫にバットでフルスイングされそうになってるジャイアンの姿だった。
しずか「暴力なんて最低よ!」
スネ夫「その汚いケツをぶっ叩いてやる!」
ジャイアン「か、勘弁してくれぇ!」
ドラえもんの怒号が響き渡った
ドラえもん「やめろバカども!!」
ジャイアン「あ」
しずか「もう許せないわ! やりすぎよ、武さん!」
ジャイアン「しずかちゃん!? うおっ!」
しずかちゃんの拳がジャイアンのアゴをとらえかける。
ジャイアンは間一髪これをかわした。
女の子からの攻撃にひるむかと思えたジャイアンだったが、逆に激昂した。
ジャイアン「やんのか? このやろう!」
しずか「何よ!」
ジャイアン「ぶっ!」
反撃に出たジャイアンだったが、しずかちゃんは巧みにその攻撃をかわし、逆にジャイアンに肘打ち、ローキック、平手打ちを入れた。
後に見ていたスネ夫いわく、「きれいに入ってた。最後の平手打ちなんか、張り手じゃないかってぐらい凄かった」だそうだ。
さすがソフトボール部。
もう絶対逆らわないようにしよう。
だが、しかし、ジャイアンもさすがタフだった。
しずかちゃんの3連撃にもわずかに怯んだだけで、即座に反撃しようとしたのだ。
ジャイアン「てめえ、ぶっつぶしてやる!」
しずか「きゃあ!?」
スネ夫「なんだこのやろう!」
ジャイアン「ウギャー!」
しずか「スネ夫さん!」
スネ夫「もう僕も堪忍袋の緒が切れたぞ! やってやる!」
しずか「ええ! 武さんにはいいクスリだわ!」
ジャイアン「なんだ、てめえら! うわっ、やめ……」
何とスネ夫が突っ込み、ジャイアンはひっくり返った。
もう、そのあとは酷いもんだった。
「やめて」と懇願するジャイアンを、しずかちゃんとスネ夫がボコボコにしたのだ。
のび太「う、うーん」
ドラえもん「あっ、のび太君気が付いたか。よかった」
のび太「ドラえもん? 僕は、どうなったの?」
ドラえもん「僕をかばってジャイアンの盾に……」
のび太「そのジャイアンは?」
ドラえもん「ジャイアンは……って、あーーーっ!」
僕とドラえもんが見た先にいたのは、しずかちゃんに踏みつけられ、スネ夫にバットでフルスイングされそうになってるジャイアンの姿だった。
しずか「暴力なんて最低よ!」
スネ夫「その汚いケツをぶっ叩いてやる!」
ジャイアン「か、勘弁してくれぇ!」
ドラえもんの怒号が響き渡った
ドラえもん「やめろバカども!!」
数分着。
彼らは正座させられて説教されていた。
彼ら、というのは僕以外の三人。
説教してるのは、ドラえもんだ。
というか、そのドラえもんがこの騒ぎの発端なんだけど、それはいいんだろうか。
ドラえもん「いったい何なんだ、ジャイアン。バカみたいにデッドボールぶつけるわ、謝るどころか逆ギレするわ!」
ジャイアン「め、面目ねえ」
ドラえもん「しずかちゃんもどうしたんだ! あんな暴力的になって!」
しずか「でも、悪いのは武さんよ」
ドラえもん「そういう問題じゃない! こんなブタゴリラにケンカを売って怪我したらどうするんだ!」
しずか「ご、ごめんなさい」
ジャイアン「ブタゴリラだって……」
スネ夫「ぴったりじゃないか。バカゴリラ」
ドラえもん「スネ夫も!」
スネ夫「僕の何が悪いんだ。僕は何も悪くない」
ドラえもん「何で居直るんだ! 少しくらい反省しろ!」
スネ夫「ふんだ」
もう、めちゃくちゃだった。
なんでこんなことになったのか、僕らの中に答えを出せるものはいなかった。
しいて言えば、全員が全員、浮ついていたということぐらいだろう。
のび太「とりあえずさ、どうするのコレ」
ドラえもん「はぁ……ほら、お医者さんカバン。とりあえず全員治療して」
すり傷、打撲まみれの僕らにドラえもんは道具を出して渡した。
こんな傷まみれで帰ったら、そりゃ家族も心配するだろう。
僕らはドラえもんの道具に感謝した。
結局、僕らはこの日を境に五人野球をやらなくなった。
なんかやる気がなくなった、というのもあるが、大人になったんだろう。
何より、その1年後、また5人野球をやってみないかと話に出そうとしたとき、ジャイアンが柔道で大けがをしたのだった。
旅行は当然パス。
半年後には治っていたはずだが、ジャイアンは旅行に顔を出さなくなった。
いったい、どうしたのだろう?
そして、僕らもやれ卒論だの就職だのと忙しくなって、旅行にはいかなくなっていった。
彼らは正座させられて説教されていた。
彼ら、というのは僕以外の三人。
説教してるのは、ドラえもんだ。
というか、そのドラえもんがこの騒ぎの発端なんだけど、それはいいんだろうか。
ドラえもん「いったい何なんだ、ジャイアン。バカみたいにデッドボールぶつけるわ、謝るどころか逆ギレするわ!」
ジャイアン「め、面目ねえ」
ドラえもん「しずかちゃんもどうしたんだ! あんな暴力的になって!」
しずか「でも、悪いのは武さんよ」
ドラえもん「そういう問題じゃない! こんなブタゴリラにケンカを売って怪我したらどうするんだ!」
しずか「ご、ごめんなさい」
ジャイアン「ブタゴリラだって……」
スネ夫「ぴったりじゃないか。バカゴリラ」
ドラえもん「スネ夫も!」
スネ夫「僕の何が悪いんだ。僕は何も悪くない」
ドラえもん「何で居直るんだ! 少しくらい反省しろ!」
スネ夫「ふんだ」
もう、めちゃくちゃだった。
なんでこんなことになったのか、僕らの中に答えを出せるものはいなかった。
しいて言えば、全員が全員、浮ついていたということぐらいだろう。
のび太「とりあえずさ、どうするのコレ」
ドラえもん「はぁ……ほら、お医者さんカバン。とりあえず全員治療して」
すり傷、打撲まみれの僕らにドラえもんは道具を出して渡した。
こんな傷まみれで帰ったら、そりゃ家族も心配するだろう。
僕らはドラえもんの道具に感謝した。
結局、僕らはこの日を境に五人野球をやらなくなった。
なんかやる気がなくなった、というのもあるが、大人になったんだろう。
何より、その1年後、また5人野球をやってみないかと話に出そうとしたとき、ジャイアンが柔道で大けがをしたのだった。
旅行は当然パス。
半年後には治っていたはずだが、ジャイアンは旅行に顔を出さなくなった。
いったい、どうしたのだろう?
そして、僕らもやれ卒論だの就職だのと忙しくなって、旅行にはいかなくなっていった。
大乱闘から2年後。
大学4年の夏学期、僕は就職に悩んでいた。
さすがに今度はパパに相談、というわけにもいかない。
のび太「うーん、大学院にでもいくかなあ」
スーパーマーケットでのバイトのおかげで、お金自体はたまっていた。
その蓄えとパパの支援があれば、大学院に行くのは可能だった。
のび太「でも、ただの現実逃避に過ぎないしなあ。研究したいこともないし」
大学院とは、専門的なことを研究したい人が行くところだ。
もちろん、今すぐ就職したくない人の避難場所って側面もあるんだけど。
さすがに、バイト先決める時のあの醜態を思い出し、その選択肢は選びたくはなかった。
そうこうしてる間にバイトの時間がやってきた。
仕方ないのでスーパーへの出勤の準備をする。
店長「え? 就職先に悩んでるだって?」
のび太「ええ、まあ
店長「のび太君は、ちょっとどん臭いけど真面目だったからなあ。そのままうちに就職してもらいたいくらいだけど」
のび太「え?」
店長「いやいや、冗談。あの二番星大学の学生さんがうちに就職するなんてありえないって。バイトとはいえ、一緒に働けてよかったよ」
のび太「…………」
店長「どうしたんだい?」
のび太「あの、僕って正社員になれます?」
店長「え? いや、そりゃもちろんありがたいけど」
のび太「じゃあ、お願いします! この職場、気に入ってるんで!」
店長「え? ええー? まあ、いいけど? えー、ほんとにいいの?」
何とも締まらない会話だが、僕の就職先が決まった瞬間だった。
そのことをスネ夫にも話すと。
スネ夫「はぁ!? スーパーの正社員!? お前マジで言ってるの!?」
のび太「マジだよ」
スネ夫「うちの大学ならもっと上狙えるだろ! 何でスーパーなんか」
のび太「だっていい職場だったんだもん」
スネ夫「う、うーん。まあ、必死に就職活動した結果、キツイ職場を掴んで病むよりはマシなのかなあ?」
のび太「そうそう、スネ夫の会社とか」
スネ夫「お前ぶっとばすぞ」
のび太「ごめんごめん。でも、僕は競争とか向いてないと思うんだ」
スネ夫「そういう意味じゃ、うちの会社とかダメだろうな。競争は激しいし」
のび太「そうそう。確実に堅実なところの方がいいって」
スネ夫「それでも、もったいないと思うけどなあ。まあ、のび太が選んだ道なら僕は文句ないよ」
のび太「ありがとう。ちなみにスネ夫は就職決まったの?」
スネ夫「僕? 僕は大学院に入って、もうしばらくロボットサークルを楽しむよ」
のび太「気楽だなあ」
スネ夫「しかし、そういう意味でいうと心配なのはジャイアンだよな」
のび太「ああ、うん。スネ夫はあれから?」
スネ夫「連絡なし。体育大に在籍してるのは確かみたいなんだけど」
のび太「心配だな……」
スネ夫「だよね」
一体ジャイアンはどうしてしまったんだろう。
そりゃ大学が違うから、しずかちゃんとも普段連絡なんか取ってないけどさ。
それでもしずかちゃんは、ドラえもんが来たときは会ったりぐらいはするんだ。
でも、ジャイアンは忙しいのか全く会えなかった。
怪我も重く、柔道も諦めてしまったのかもしれない。
体育大に在籍してるって話も、どこまで信用できるのか分からなかった。
大学4年の夏学期、僕は就職に悩んでいた。
さすがに今度はパパに相談、というわけにもいかない。
のび太「うーん、大学院にでもいくかなあ」
スーパーマーケットでのバイトのおかげで、お金自体はたまっていた。
その蓄えとパパの支援があれば、大学院に行くのは可能だった。
のび太「でも、ただの現実逃避に過ぎないしなあ。研究したいこともないし」
大学院とは、専門的なことを研究したい人が行くところだ。
もちろん、今すぐ就職したくない人の避難場所って側面もあるんだけど。
さすがに、バイト先決める時のあの醜態を思い出し、その選択肢は選びたくはなかった。
そうこうしてる間にバイトの時間がやってきた。
仕方ないのでスーパーへの出勤の準備をする。
店長「え? 就職先に悩んでるだって?」
のび太「ええ、まあ
店長「のび太君は、ちょっとどん臭いけど真面目だったからなあ。そのままうちに就職してもらいたいくらいだけど」
のび太「え?」
店長「いやいや、冗談。あの二番星大学の学生さんがうちに就職するなんてありえないって。バイトとはいえ、一緒に働けてよかったよ」
のび太「…………」
店長「どうしたんだい?」
のび太「あの、僕って正社員になれます?」
店長「え? いや、そりゃもちろんありがたいけど」
のび太「じゃあ、お願いします! この職場、気に入ってるんで!」
店長「え? ええー? まあ、いいけど? えー、ほんとにいいの?」
何とも締まらない会話だが、僕の就職先が決まった瞬間だった。
そのことをスネ夫にも話すと。
スネ夫「はぁ!? スーパーの正社員!? お前マジで言ってるの!?」
のび太「マジだよ」
スネ夫「うちの大学ならもっと上狙えるだろ! 何でスーパーなんか」
のび太「だっていい職場だったんだもん」
スネ夫「う、うーん。まあ、必死に就職活動した結果、キツイ職場を掴んで病むよりはマシなのかなあ?」
のび太「そうそう、スネ夫の会社とか」
スネ夫「お前ぶっとばすぞ」
のび太「ごめんごめん。でも、僕は競争とか向いてないと思うんだ」
スネ夫「そういう意味じゃ、うちの会社とかダメだろうな。競争は激しいし」
のび太「そうそう。確実に堅実なところの方がいいって」
スネ夫「それでも、もったいないと思うけどなあ。まあ、のび太が選んだ道なら僕は文句ないよ」
のび太「ありがとう。ちなみにスネ夫は就職決まったの?」
スネ夫「僕? 僕は大学院に入って、もうしばらくロボットサークルを楽しむよ」
のび太「気楽だなあ」
スネ夫「しかし、そういう意味でいうと心配なのはジャイアンだよな」
のび太「ああ、うん。スネ夫はあれから?」
スネ夫「連絡なし。体育大に在籍してるのは確かみたいなんだけど」
のび太「心配だな……」
スネ夫「だよね」
一体ジャイアンはどうしてしまったんだろう。
そりゃ大学が違うから、しずかちゃんとも普段連絡なんか取ってないけどさ。
それでもしずかちゃんは、ドラえもんが来たときは会ったりぐらいはするんだ。
でも、ジャイアンは忙しいのか全く会えなかった。
怪我も重く、柔道も諦めてしまったのかもしれない。
体育大に在籍してるって話も、どこまで信用できるのか分からなかった。
僕の話を聞いて、パパとママは反対するかと思ったらあっさりとお祝いしてくれた。
パパ曰く「お金持ちになれる道が素敵とは限らないさ」とのことだった。
ママに至っては「あののび太が就職できるだなんて」と感激していた。
僕はちょっと傷ついた。
でも、と思う。
ドラえもんが初めてこの家にやってきた時、聞いた話じゃ僕は就職先がなくて自分で会社を立ち上げ、そして失敗したということだった。
それに比べれば、就職先があったことをママが喜ぶのも無理ないか。
僕は形だけの採用試験を受け、そのままあっさりスーパーに採用が決まった。
正社員の仕事はハードかと思ったが、何のことはない。
今までの仕事時間が伸びて、一日中勤務になったぐらいだった。
強いて言うなら、今まで駆り出されたことのない仕事を任されることが増えたことぐらいだが、これも慣れればなんてことはなかった。
そんなある日、僕はバイトのおばちゃん達に呼び止められた。
バイトと言っても、長い人はこの道30年以上のベテランだ。
レジ打ちなんか僕より凄まじく早い人もいる。
そんなおばちゃんたちに、僕は尊敬の念をもって接していた。
おばちゃん「野比さーん」
のび太「はい。何でしょうか?」
おばちゃん「正社員になったのよね? それじゃあこれもやってもらいましょうか」
そういって、おばちゃんは色とりどりのマジックペンに画用紙とハサミを僕に見せてきた。
のび太「えーっと、これは?」
おばちゃん「POPを作ってほしいのよ」
のび太「ポップ?」
おばちゃん「ほら、売り場で値段の表示とか、野菜やお魚の絵を見かけるでしょ? アレのことよ」
のび太「へえ、それをポップって言うんですか」
おばちゃん「お客の購買意欲を上げる効果があるって言われてるわ」
のび太「でも、僕、絵は苦手ですけど」
おばちゃん「ものは試しよ。落書き感覚でやってみて」
のび太「わかりました」
パパ曰く「お金持ちになれる道が素敵とは限らないさ」とのことだった。
ママに至っては「あののび太が就職できるだなんて」と感激していた。
僕はちょっと傷ついた。
でも、と思う。
ドラえもんが初めてこの家にやってきた時、聞いた話じゃ僕は就職先がなくて自分で会社を立ち上げ、そして失敗したということだった。
それに比べれば、就職先があったことをママが喜ぶのも無理ないか。
僕は形だけの採用試験を受け、そのままあっさりスーパーに採用が決まった。
正社員の仕事はハードかと思ったが、何のことはない。
今までの仕事時間が伸びて、一日中勤務になったぐらいだった。
強いて言うなら、今まで駆り出されたことのない仕事を任されることが増えたことぐらいだが、これも慣れればなんてことはなかった。
そんなある日、僕はバイトのおばちゃん達に呼び止められた。
バイトと言っても、長い人はこの道30年以上のベテランだ。
レジ打ちなんか僕より凄まじく早い人もいる。
そんなおばちゃんたちに、僕は尊敬の念をもって接していた。
おばちゃん「野比さーん」
のび太「はい。何でしょうか?」
おばちゃん「正社員になったのよね? それじゃあこれもやってもらいましょうか」
そういって、おばちゃんは色とりどりのマジックペンに画用紙とハサミを僕に見せてきた。
のび太「えーっと、これは?」
おばちゃん「POPを作ってほしいのよ」
のび太「ポップ?」
おばちゃん「ほら、売り場で値段の表示とか、野菜やお魚の絵を見かけるでしょ? アレのことよ」
のび太「へえ、それをポップって言うんですか」
おばちゃん「お客の購買意欲を上げる効果があるって言われてるわ」
のび太「でも、僕、絵は苦手ですけど」
おばちゃん「ものは試しよ。落書き感覚でやってみて」
のび太「わかりました」
本当に軽い気持ちだった。
事務所に入って、メモに書かれた必要なPOPを作る。
POPと言えば聞こえはいいが、ようはただの落書きだ。
普通の人ならめんどくさいと思うかもしれない。
でも、僕は「仕事中に落書きしてていいんだ」という気分になり、気が付いたら5時間が経過していた。
おばちゃん「ごめんなさい、野比さん! 忙しくなって、POP作業任せたの忘れてたわ!」
のび太「え? わあ、すみません! 僕こそ落書きに夢中になって、店内の様子見てませんでした!」
おばちゃん「いいのよ。って、野比さんこれ……」
のび太「え? あ、はい。やっぱりダメですよね〜、あはは」
おばちゃん「いい! とてもいいわ!」
のび太「ええっ!?」
おばちゃん「特にこのキャラクター。素敵よ」
のび太「あー……いいんです? こんなので?」
僕が書いたのは、どこかで見たようなドラえもんの道具のデザインを真似したものだった。
その後、おばちゃんは店長を呼んでくれ、店長も僕を褒めてくれた。
なんでも「デザインセンスがある」のだそうだ。
結局、僕の作ったPOPは、汚過ぎた一部の装飾文字を除き、そのまんま店内に展示された。
とはいえ、あんなもの誰も注目しないだろうと思っていたのだが、世の中意外とそうでもなかったらしい。
一部の奥様から好評がもらえたとのことで、僕はPOPを任されるようになった。
のび太「ふぅん。POPか……」
そうなってくると面白くなるもので、僕はPOPの上達を図るようになる。
結果、初めは汚かった装飾文字も、みるみるうちに上達していった。
やっぱり、この仕事を選んで正解だった。
僕はお金を稼ぐより、のびのびやれる方が一番だよ。
事務所に入って、メモに書かれた必要なPOPを作る。
POPと言えば聞こえはいいが、ようはただの落書きだ。
普通の人ならめんどくさいと思うかもしれない。
でも、僕は「仕事中に落書きしてていいんだ」という気分になり、気が付いたら5時間が経過していた。
おばちゃん「ごめんなさい、野比さん! 忙しくなって、POP作業任せたの忘れてたわ!」
のび太「え? わあ、すみません! 僕こそ落書きに夢中になって、店内の様子見てませんでした!」
おばちゃん「いいのよ。って、野比さんこれ……」
のび太「え? あ、はい。やっぱりダメですよね〜、あはは」
おばちゃん「いい! とてもいいわ!」
のび太「ええっ!?」
おばちゃん「特にこのキャラクター。素敵よ」
のび太「あー……いいんです? こんなので?」
僕が書いたのは、どこかで見たようなドラえもんの道具のデザインを真似したものだった。
その後、おばちゃんは店長を呼んでくれ、店長も僕を褒めてくれた。
なんでも「デザインセンスがある」のだそうだ。
結局、僕の作ったPOPは、汚過ぎた一部の装飾文字を除き、そのまんま店内に展示された。
とはいえ、あんなもの誰も注目しないだろうと思っていたのだが、世の中意外とそうでもなかったらしい。
一部の奥様から好評がもらえたとのことで、僕はPOPを任されるようになった。
のび太「ふぅん。POPか……」
そうなってくると面白くなるもので、僕はPOPの上達を図るようになる。
結果、初めは汚かった装飾文字も、みるみるうちに上達していった。
やっぱり、この仕事を選んで正解だった。
僕はお金を稼ぐより、のびのびやれる方が一番だよ。
就職して1年。
僕達は久々に集まって食事をしようという話になった。
もっとも、ジャイアンは相変わらず消息不明のままだったが。
僕・しずかちゃん・スネ夫の3人なので、店は適当に歩いて決めようという約束だった。
しずか「のび太さんはスーパーで働いてるのよね?」
のび太「うん」
しずか「大変じゃない?」
のび太「んー、そうでもないかな。仕事なんて落書きみたいなもんだし」
スネ夫「は? 落書き?」
のび太「POPっていうんだよ。店内に飾る落書きみたいなアートのこと」
しずか「のび太さん、その説明はどうかと思うわ」
スネ夫「そうだぞ。POPには顧客の購買意欲を高める効果とか、商品の認知度を上げる効果とかがあるんだ」
のび太「まあ、どうでもいいじゃないか。僕としては仕事中に落書き感覚で楽しんでるんだし」
スネ夫「あーあー、嫌になるよ。こんなお気楽な感じに仕事してるやつがいると思うと」
のび太「なんだと、スネ夫。言ったな」
スネ夫「なんだよ」
しずか「あら……」
のび太「うん? どうかした、しずかちゃん?」
しずか「あれ、武さんじゃない?」
スネ夫「ええっ!?」
しずかちゃんの指さした先。
そこにいたのは、がたいのいい男たち。
その中に、確かにジャイアンはいた。
ただし、中心ではなく、端っこの方に。
しかも、よく見てみれば、中心にいたのは柔道でオリンピックのメダルを狙ってる選手たちではないか。
しずか「武さん!」
ジャイアン「ん? おお、しずかちゃんじゃねえか。のび太にスネ夫も」
こちらに気づくとジャイアンは笑顔で手を振ってくれた。
そして、中央にいたオリンピックの代表選手に何か声をかけると、何度かおじぎをして集団を離れた。
ジャイアン「久しぶりだな。会いたかったぜ」
スネ夫「こんなとこで何してんのさ。だいたいどこ行ってたんだよ?」
ジャイアン「いやあ、悪い悪い。ずっと忙しくてよ。でも、最近時間もできてきたから、今度の休みにはドラえもんのとこに顔出そうと思ってたんだ」
のび太「さっきの人たちは誰? たしかあれ、オリンピックの代表選手だよね?」
ジャイアン「ああ、知ってたか。今、俺はオリンピック選手団のサポートをやってんだ」
のび太「何で? 選手になるんじゃなかったの!?」
ジャイアン「……どっか店にでも入ろうぜ。それとも、お前ら食った後か?」
しずか「いいえ、私たち食事しようとしていたところよ」
ジャイアン「おし、決まりだ。うめ―焼肉屋があるんだ。そこ行こうぜ」
ジャイアンに連れられて、僕らは焼肉屋に入った。
注文を終えたところで、ジャイアンは語りだした。
僕達は久々に集まって食事をしようという話になった。
もっとも、ジャイアンは相変わらず消息不明のままだったが。
僕・しずかちゃん・スネ夫の3人なので、店は適当に歩いて決めようという約束だった。
しずか「のび太さんはスーパーで働いてるのよね?」
のび太「うん」
しずか「大変じゃない?」
のび太「んー、そうでもないかな。仕事なんて落書きみたいなもんだし」
スネ夫「は? 落書き?」
のび太「POPっていうんだよ。店内に飾る落書きみたいなアートのこと」
しずか「のび太さん、その説明はどうかと思うわ」
スネ夫「そうだぞ。POPには顧客の購買意欲を高める効果とか、商品の認知度を上げる効果とかがあるんだ」
のび太「まあ、どうでもいいじゃないか。僕としては仕事中に落書き感覚で楽しんでるんだし」
スネ夫「あーあー、嫌になるよ。こんなお気楽な感じに仕事してるやつがいると思うと」
のび太「なんだと、スネ夫。言ったな」
スネ夫「なんだよ」
しずか「あら……」
のび太「うん? どうかした、しずかちゃん?」
しずか「あれ、武さんじゃない?」
スネ夫「ええっ!?」
しずかちゃんの指さした先。
そこにいたのは、がたいのいい男たち。
その中に、確かにジャイアンはいた。
ただし、中心ではなく、端っこの方に。
しかも、よく見てみれば、中心にいたのは柔道でオリンピックのメダルを狙ってる選手たちではないか。
しずか「武さん!」
ジャイアン「ん? おお、しずかちゃんじゃねえか。のび太にスネ夫も」
こちらに気づくとジャイアンは笑顔で手を振ってくれた。
そして、中央にいたオリンピックの代表選手に何か声をかけると、何度かおじぎをして集団を離れた。
ジャイアン「久しぶりだな。会いたかったぜ」
スネ夫「こんなとこで何してんのさ。だいたいどこ行ってたんだよ?」
ジャイアン「いやあ、悪い悪い。ずっと忙しくてよ。でも、最近時間もできてきたから、今度の休みにはドラえもんのとこに顔出そうと思ってたんだ」
のび太「さっきの人たちは誰? たしかあれ、オリンピックの代表選手だよね?」
ジャイアン「ああ、知ってたか。今、俺はオリンピック選手団のサポートをやってんだ」
のび太「何で? 選手になるんじゃなかったの!?」
ジャイアン「……どっか店にでも入ろうぜ。それとも、お前ら食った後か?」
しずか「いいえ、私たち食事しようとしていたところよ」
ジャイアン「おし、決まりだ。うめ―焼肉屋があるんだ。そこ行こうぜ」
ジャイアンに連れられて、僕らは焼肉屋に入った。
注文を終えたところで、ジャイアンは語りだした。
ジャイアン「実はよ、俺柔道整復師とか針灸の勉強してたんだ。将来はそれで選手を支えようと思ってる」
のび太「じゃあ、選手になる夢は諦めたの?」
ジャイアン「ああ!」
スネ夫「何でだよ? ケガが酷かったのは聞いてたけど、再起不能だったのか?」
ジャイアン「まあ、それもあったんだけどよ、ケガは十分復帰できるレベルだった」
のび太「じゃあ何で?」
ジャイアン「ケガして病院のベッドに寝てるときよ、ぜってえ復帰してやるって思ってたんだ。そんで優勝台に登って、負けた連中を踏みつけてガハハハと笑う自分を想像した……そん時だ」
のび太「何か、あったの?」
ジャイアン「ふと思っちまったんだよ。俺、全然成長してないな……ってよ」
のび太「そんなことはないと思うけど」
スネ夫「あの乱闘の時も柔道の技は使ってなかったしな。あとで気づいたよ」
ジャイアン「そりゃ、喧嘩に柔道使っちゃまずいって意識ぐらいはあったからな」
しずか「やっぱりそうだったのね。あの後、なんだかおかしいと思ったわ」
ジャイアン「いやあ、俺はしずかちゃんに驚いたよ。あんなに強くなってたんだなあ」
しずか「やめて。もう恥ずかしいわ」
スネ夫「たしかにすげー強かった」
しずか「だからもうやめてってば!」
ジャイアン「はは。それでよ、俺思ったんだ。今度は俺がサポートする側に回りてえってさ」
のび太「それで、勉強を?」
ジャイアン「ああ。オリンピックとか競技の世界って大変なんだよ。ドーピング検査があるから医者にかかれなくてよ」
スネ夫「うげ、それはきついな」
ジャイアン「だから、柔道整復師とか針灸師の勉強しながら、スパーリング相手としてオリンピック選手についてたんだ」
しずか「スパーリング相手って、武さん試合できるの?」
ジャイアン「俺はケガが怖いから寝技だけな。これでも寝技だけならオリンピック級なんだぜ」
スネ夫「へえ、寝技だけはうまいジャイアン……」
ジャイアン「何かな、スネ夫君?」
スネ夫「いいえ! 何でもございません!」
のび太「後悔は、してないのかい?」
ジャイアン「全然。むしろ憑き物が落ちたみたいだぜ」
しずか「武さん素敵だわ」
ジャイアン「へへ、先生にも相談したんだけどよ、『あの武君が立派になったな』って褒められたよ」
のび太「先生? 会いに行ったの?」
ジャイアン「さすがにちょっとは迷ったからな」
「お待たせしましたー」
ジャイアン「お、肉来たぜ。今度はお前らの話を聞かせてくれよ」
しずか「ええ。じゃあ私からね……」
そうしてこの夜はジャイアンと再会し、僕らはそれぞれの近況を報告し合ったのだった。
あのジャイアンが人のために生きる道を選択したのは予想外だった。
でも、なぜだろう。
そのことを全く後悔していないジャイアンを見て、僕はなぜかとても誇らしい気分になったのだった。
僕らの親分ここにあり、って感じにね。
のび太「じゃあ、選手になる夢は諦めたの?」
ジャイアン「ああ!」
スネ夫「何でだよ? ケガが酷かったのは聞いてたけど、再起不能だったのか?」
ジャイアン「まあ、それもあったんだけどよ、ケガは十分復帰できるレベルだった」
のび太「じゃあ何で?」
ジャイアン「ケガして病院のベッドに寝てるときよ、ぜってえ復帰してやるって思ってたんだ。そんで優勝台に登って、負けた連中を踏みつけてガハハハと笑う自分を想像した……そん時だ」
のび太「何か、あったの?」
ジャイアン「ふと思っちまったんだよ。俺、全然成長してないな……ってよ」
のび太「そんなことはないと思うけど」
スネ夫「あの乱闘の時も柔道の技は使ってなかったしな。あとで気づいたよ」
ジャイアン「そりゃ、喧嘩に柔道使っちゃまずいって意識ぐらいはあったからな」
しずか「やっぱりそうだったのね。あの後、なんだかおかしいと思ったわ」
ジャイアン「いやあ、俺はしずかちゃんに驚いたよ。あんなに強くなってたんだなあ」
しずか「やめて。もう恥ずかしいわ」
スネ夫「たしかにすげー強かった」
しずか「だからもうやめてってば!」
ジャイアン「はは。それでよ、俺思ったんだ。今度は俺がサポートする側に回りてえってさ」
のび太「それで、勉強を?」
ジャイアン「ああ。オリンピックとか競技の世界って大変なんだよ。ドーピング検査があるから医者にかかれなくてよ」
スネ夫「うげ、それはきついな」
ジャイアン「だから、柔道整復師とか針灸師の勉強しながら、スパーリング相手としてオリンピック選手についてたんだ」
しずか「スパーリング相手って、武さん試合できるの?」
ジャイアン「俺はケガが怖いから寝技だけな。これでも寝技だけならオリンピック級なんだぜ」
スネ夫「へえ、寝技だけはうまいジャイアン……」
ジャイアン「何かな、スネ夫君?」
スネ夫「いいえ! 何でもございません!」
のび太「後悔は、してないのかい?」
ジャイアン「全然。むしろ憑き物が落ちたみたいだぜ」
しずか「武さん素敵だわ」
ジャイアン「へへ、先生にも相談したんだけどよ、『あの武君が立派になったな』って褒められたよ」
のび太「先生? 会いに行ったの?」
ジャイアン「さすがにちょっとは迷ったからな」
「お待たせしましたー」
ジャイアン「お、肉来たぜ。今度はお前らの話を聞かせてくれよ」
しずか「ええ。じゃあ私からね……」
そうしてこの夜はジャイアンと再会し、僕らはそれぞれの近況を報告し合ったのだった。
あのジャイアンが人のために生きる道を選択したのは予想外だった。
でも、なぜだろう。
そのことを全く後悔していないジャイアンを見て、僕はなぜかとても誇らしい気分になったのだった。
僕らの親分ここにあり、って感じにね。
それから、僕はしずかちゃんと結婚した。
みんなに祝福されて、とても幸せな式だった。
え? 式に至った経緯?
それは恥ずかしいから、また別の機会に……ね?
だいたい君も知ってるだろ?
雪山のロマンスとかのび太の結婚前夜とかさ。
だから、これから僕が語るのはその後の話だ。
僕が一番大切な友達と別れる、その日までの。
みんなに祝福されて、とても幸せな式だった。
え? 式に至った経緯?
それは恥ずかしいから、また別の機会に……ね?
だいたい君も知ってるだろ?
雪山のロマンスとかのび太の結婚前夜とかさ。
だから、これから僕が語るのはその後の話だ。
僕が一番大切な友達と別れる、その日までの。
2025/12/07(日) 07:01:58.12ID:froJ/Cgf
今回はここまで。
夜にのび太結婚後編を投下します。
夜にのび太結婚後編を投下します。
2025/12/07(日) 12:39:03.61ID:froJ/Cgf
時間できたので昼も投下していきます。
しずかちゃんと結婚してから、僕は幸せ絶頂だった。
職場でもルンルン気分で落書きにいそしんでいた。
いや、分かってるよ。
これは落書きじゃなくてPOPってれっきとした仕事だ。
そのPOPだけど、好評が好評を呼んで、うちの店舗では大量に必要になっていた。
そのせいで、僕は作業のためにバックヤードの事務所にこもる時間が増えた。
POPが好評って何だって思うだろう?
子供A「おい、あったぞ!」
子供B「後一個! 後一個はどこ?」
奥様「静かに探すのよー。没収されるわよー」
子供A・B「はーい」
原因はこれだ。
僕のデザインしたキャラクターを店内のいたるところに隠しているのだ。
それを全部見つけた子供達に、お菓子をプレゼントするという企画を始めたらこれが大ヒット。
もちろん子供達には、騒いだらキャラクターシートを没収するという注意をしてある。
しかし、それでも売り場を子供がうろついたら苦情が出るんじゃないかと思ったら大間違い。
逆に万引きが減ったのだという。
子供というのは、行動の予想がつかない。
そんなのがスーパーの中を無軌道に動き回るのでは、万引き犯も落ち着かないようだ。
また、子供の動きに注意を払う人が増え、結果として地域での見守り効果を期待できるらしい。
……ということを店長やおばちゃん達から聞いたが、僕の落書きにそんな有効活用法を見つける彼らの方が凄いと思う。
まあ、そんなこんなでPOPは短い間隔で張り替えた方がいいらしく、僕の業務の大半はPOP作業となったわけである。
職場でもルンルン気分で落書きにいそしんでいた。
いや、分かってるよ。
これは落書きじゃなくてPOPってれっきとした仕事だ。
そのPOPだけど、好評が好評を呼んで、うちの店舗では大量に必要になっていた。
そのせいで、僕は作業のためにバックヤードの事務所にこもる時間が増えた。
POPが好評って何だって思うだろう?
子供A「おい、あったぞ!」
子供B「後一個! 後一個はどこ?」
奥様「静かに探すのよー。没収されるわよー」
子供A・B「はーい」
原因はこれだ。
僕のデザインしたキャラクターを店内のいたるところに隠しているのだ。
それを全部見つけた子供達に、お菓子をプレゼントするという企画を始めたらこれが大ヒット。
もちろん子供達には、騒いだらキャラクターシートを没収するという注意をしてある。
しかし、それでも売り場を子供がうろついたら苦情が出るんじゃないかと思ったら大間違い。
逆に万引きが減ったのだという。
子供というのは、行動の予想がつかない。
そんなのがスーパーの中を無軌道に動き回るのでは、万引き犯も落ち着かないようだ。
また、子供の動きに注意を払う人が増え、結果として地域での見守り効果を期待できるらしい。
……ということを店長やおばちゃん達から聞いたが、僕の落書きにそんな有効活用法を見つける彼らの方が凄いと思う。
まあ、そんなこんなでPOPは短い間隔で張り替えた方がいいらしく、僕の業務の大半はPOP作業となったわけである。
店長「野比くーん」
のび太「何でしょうか?
その日も作業をしていると、突然店長から声をかけられた。
見てみると、後ろにそこそこ歳のいったおじさんをつれていた。
誰だろう?
店長「こちら、うちの本社の社長さん」
のび太「え? わわ、はじめまして! の、野比のび太と申します!」
社長「ああ、いい、いい。そんな畏まらないで」
のび太「何か僕に御用でしょうか?」
社長「うん。あのPOPのキャラクターデザイン、君がやったんだって?」
のび太「ええ。まあ」
社長「あれ愉快だね。僕もついつい探しちゃったよ。一つだけ見つからなかったけど」
のび太「あ、景品のおやつ欲しいんですか? ちょっと待ってください」
店長「ちょっ、野比君!?」
社長「わははは、君面白いな。おやつはいらないよ。第一、私は全部見つけられてないじゃないか」
のび太「あ、そうですね。ついズルを許しちゃいました」
社長「で、君に相談なんだが、よかったら本社直属の社員にならないかい? 全店舗にあのPOPを導入してみたいんだ」
のび太「え?」
社長「ああ、もちろん今すぐ答えなくてもいいよ」
のび太「で、でも、あのPOPのああいう活用法を考えたのは、店長やバイトのおばちゃん達なんですけど」
社長「正直なところもいいね。もちろん聞いてるよ。でも、君のデザインセンスにピーンときたんだ。だから、待ってるよ」
のび太「い、行きます!」
社長「え?」
店長「え?」
のび太「え?」
社長「彼、普段からこうなのかい? なんというか、その、てきとーに生きてる感が」
店長「ええ。なんかてきとーに生きてる感は昔からありました」
のび太「ちょっと、店長!?」
社長「まあ、遅くなったけど私の名刺だ。そうだな、それじゃ明日にでも本社にきてくれ」
のび太「はい」
この時の僕は、なんかえらいことになってきたぞ程度にしか思ってなかった。
えらいことになってきた、というかえらいことになっていたのだ。
おかげで家に帰ってから、新婚早々さんざんな目に遭うことになる。
のび太「何でしょうか?
その日も作業をしていると、突然店長から声をかけられた。
見てみると、後ろにそこそこ歳のいったおじさんをつれていた。
誰だろう?
店長「こちら、うちの本社の社長さん」
のび太「え? わわ、はじめまして! の、野比のび太と申します!」
社長「ああ、いい、いい。そんな畏まらないで」
のび太「何か僕に御用でしょうか?」
社長「うん。あのPOPのキャラクターデザイン、君がやったんだって?」
のび太「ええ。まあ」
社長「あれ愉快だね。僕もついつい探しちゃったよ。一つだけ見つからなかったけど」
のび太「あ、景品のおやつ欲しいんですか? ちょっと待ってください」
店長「ちょっ、野比君!?」
社長「わははは、君面白いな。おやつはいらないよ。第一、私は全部見つけられてないじゃないか」
のび太「あ、そうですね。ついズルを許しちゃいました」
社長「で、君に相談なんだが、よかったら本社直属の社員にならないかい? 全店舗にあのPOPを導入してみたいんだ」
のび太「え?」
社長「ああ、もちろん今すぐ答えなくてもいいよ」
のび太「で、でも、あのPOPのああいう活用法を考えたのは、店長やバイトのおばちゃん達なんですけど」
社長「正直なところもいいね。もちろん聞いてるよ。でも、君のデザインセンスにピーンときたんだ。だから、待ってるよ」
のび太「い、行きます!」
社長「え?」
店長「え?」
のび太「え?」
社長「彼、普段からこうなのかい? なんというか、その、てきとーに生きてる感が」
店長「ええ。なんかてきとーに生きてる感は昔からありました」
のび太「ちょっと、店長!?」
社長「まあ、遅くなったけど私の名刺だ。そうだな、それじゃ明日にでも本社にきてくれ」
のび太「はい」
この時の僕は、なんかえらいことになってきたぞ程度にしか思ってなかった。
えらいことになってきた、というかえらいことになっていたのだ。
おかげで家に帰ってから、新婚早々さんざんな目に遭うことになる。
家に帰ると、僕はパパ・ママ・しずかちゃんに会社であったことを伝えた。
あ、ちなみにしずかちゃんとは、おばあちゃんの部屋を片付けて実家の二階で暮らしていた。
まあ、それは別段どうでもいい話なので置いておこう。
なぜなら、今すぐ意味がなくなるのだから。
しずか「え? 社長さんに本社に誘われた?」
のび太「うん、びっくりしたよ」
しずか「それでどうしたの?」
のび太「いやあ、緊張しちゃってその場で『はい』って言っちゃったよ」
パパ「なぁんだあってぇ!?」
のび太「何大声出してるのさ」
しずか「ちょっとあなた! その本社ってどこにあるのよ!?」
パパ「その名刺見せてみろ。ふむふむ……」
ママ「どこなの? 近く?」
パパ「全然! っていうかめちゃくちゃ遠いじゃないか!」
しずか「ええっ!?」
のび太「え? そうなの?」
パパ「のび太、お前車持ってないだろ! 電車じゃここかなり遠いぞ!」
のび太「まあ明日行くだけだし、それぐらい別に」
しずか「何言ってるのよ! 採用は早くて明後日、遅くても1週間後ぐらいじゃない!」
のび太「あ、そうか」
パパ「ああ、こうしちゃいられない。すぐに物件を探すぞ、のび太」
しずか「引っ越しの準備もしなきゃ! お義父さん、私の仕事先も近いところを選んでね!」
パパ「ああ、そうか。それも考慮しないといけないのか」
のび太「あわただしいなあ」
しずか「誰のせいだと思ってるのよ!」
のび太「ええと、その、ごめんなさい。僕のせいです」
しずか「ごめんなさい、お義母さん。私、家を出ます」
ママ「あらそう。残念ね、静香さんとならいい姑嫁になれると思ったのに」
僕の即決が原因で、家の中はちょっとした修羅場になった。
なんだかママが悲しそうだったのを覚えてる。
あ、ちなみにしずかちゃんとは、おばあちゃんの部屋を片付けて実家の二階で暮らしていた。
まあ、それは別段どうでもいい話なので置いておこう。
なぜなら、今すぐ意味がなくなるのだから。
しずか「え? 社長さんに本社に誘われた?」
のび太「うん、びっくりしたよ」
しずか「それでどうしたの?」
のび太「いやあ、緊張しちゃってその場で『はい』って言っちゃったよ」
パパ「なぁんだあってぇ!?」
のび太「何大声出してるのさ」
しずか「ちょっとあなた! その本社ってどこにあるのよ!?」
パパ「その名刺見せてみろ。ふむふむ……」
ママ「どこなの? 近く?」
パパ「全然! っていうかめちゃくちゃ遠いじゃないか!」
しずか「ええっ!?」
のび太「え? そうなの?」
パパ「のび太、お前車持ってないだろ! 電車じゃここかなり遠いぞ!」
のび太「まあ明日行くだけだし、それぐらい別に」
しずか「何言ってるのよ! 採用は早くて明後日、遅くても1週間後ぐらいじゃない!」
のび太「あ、そうか」
パパ「ああ、こうしちゃいられない。すぐに物件を探すぞ、のび太」
しずか「引っ越しの準備もしなきゃ! お義父さん、私の仕事先も近いところを選んでね!」
パパ「ああ、そうか。それも考慮しないといけないのか」
のび太「あわただしいなあ」
しずか「誰のせいだと思ってるのよ!」
のび太「ええと、その、ごめんなさい。僕のせいです」
しずか「ごめんなさい、お義母さん。私、家を出ます」
ママ「あらそう。残念ね、静香さんとならいい姑嫁になれると思ったのに」
僕の即決が原因で、家の中はちょっとした修羅場になった。
なんだかママが悲しそうだったのを覚えてる。
しずかちゃんにめちゃくちゃ怒られた翌日。
僕は本社の前に立っていた。
ていうか……。
のび太「でっかいなあ……」
僕は本社の大きさに圧倒されていた。
そりゃこの周辺に100店舗も展開しているスーパーなだけある。
今更ながらに、昨日話したおじさんが凄い人だったのに気付いた。
のび太「なんだかお腹が痛くなってきた」
本社の規模を知ると、とんでもないところに来たのではと思いはじめ、僕は震えだした。
どうしよう、帰っちゃおうかな。
でも、それじゃ引っ越し準備してくれてるしずかちゃんたちに悪いし……。
そう僕が怖気づいてた時だった。
警備員A「もしもし?」
のび太「わひゃあい!?」
警備員A「来客の方ですか?」
のび太「ちがいます! いえ、合って……ない? いや、合ってる?」
警備員A「…………」
警備員B「どうした?」
警備員A「こいつ、なんか怪しいぞ」
警備員B「何?」
のび太「ぼ、僕は怪しくなんかなぁい!」
警備員A「怪しいやつはみんなそう言うんだ」
警備員B「おい、警察を呼べ!」
のび太「ええええ!?」
社長「何やっとるのかね、君」
警備員A「あ、これは社長!」
社長「彼は問題ないよ。私が呼んだんだ」
警備員B「そうですか。失礼しました」
のび太「た、助かりました」
社長「いや、それはいいんだけどね。何やっとったんだ」
のび太「いえ、会社があまりに大きくてびっくりしちゃって
社長「まったく君は面白いな。早く会社に入って採用審査の面談を受けたまえ。なに形だけだ」
のび太「…………」
社長「どうした? まだ怖いのかい?」
のび太「いえ、行きます。ありがとうございました」
本当にいい職場だ。
ここにして良かった。
と、僕は思ったのだった。
帰った後、パパから物件は見つかりそうだと言われた。
その後、またしずかちゃんからものすごい剣幕で怒られたけど。
はい、もう二度としません。
以後気を付けます。
僕は本社の前に立っていた。
ていうか……。
のび太「でっかいなあ……」
僕は本社の大きさに圧倒されていた。
そりゃこの周辺に100店舗も展開しているスーパーなだけある。
今更ながらに、昨日話したおじさんが凄い人だったのに気付いた。
のび太「なんだかお腹が痛くなってきた」
本社の規模を知ると、とんでもないところに来たのではと思いはじめ、僕は震えだした。
どうしよう、帰っちゃおうかな。
でも、それじゃ引っ越し準備してくれてるしずかちゃんたちに悪いし……。
そう僕が怖気づいてた時だった。
警備員A「もしもし?」
のび太「わひゃあい!?」
警備員A「来客の方ですか?」
のび太「ちがいます! いえ、合って……ない? いや、合ってる?」
警備員A「…………」
警備員B「どうした?」
警備員A「こいつ、なんか怪しいぞ」
警備員B「何?」
のび太「ぼ、僕は怪しくなんかなぁい!」
警備員A「怪しいやつはみんなそう言うんだ」
警備員B「おい、警察を呼べ!」
のび太「ええええ!?」
社長「何やっとるのかね、君」
警備員A「あ、これは社長!」
社長「彼は問題ないよ。私が呼んだんだ」
警備員B「そうですか。失礼しました」
のび太「た、助かりました」
社長「いや、それはいいんだけどね。何やっとったんだ」
のび太「いえ、会社があまりに大きくてびっくりしちゃって
社長「まったく君は面白いな。早く会社に入って採用審査の面談を受けたまえ。なに形だけだ」
のび太「…………」
社長「どうした? まだ怖いのかい?」
のび太「いえ、行きます。ありがとうございました」
本当にいい職場だ。
ここにして良かった。
と、僕は思ったのだった。
帰った後、パパから物件は見つかりそうだと言われた。
その後、またしずかちゃんからものすごい剣幕で怒られたけど。
はい、もう二度としません。
以後気を付けます。
なんで僕はそうなのだろう?
前回は深い考えもなく即座に決めたせいで怒られた。
と、なると今度はのんびりしていたせいで怒られた、だ。
あれから5年、僕は必死に働いた。
POP作業はもちろんのこと、本社社員として各店舗の見回りに行ったり、充実した日々だった。
ところが、最近は忙しさに参っていた。
同僚「野比君、それじゃ僕はお先に」
のび太「あ、はい。お疲れさまでした」
同僚が勤務を終えて帰宅する。
僕の仕事はここからが本番だ。
最近はとにかくキャラクターデザインの仕事が増えた。
好評なのはうれしいんだけど、うちの店でやってた「見つけろ! 隠れたキャラクターたち!」が全店舗で行われるようになったからだ。
さすがに仕事の合間に落書き感覚でやってたのじゃ、とてもじゃないけど時間が足りなくなってきた。
というわけで、残業で作業をするようになったのだが、それも相当きつくなり始めていた。
のび太「はぁ、もういっそ手を抜こうかなあ」
さらに都合の悪いことに、続けていたせいか僕の絵のレベルが上がってきていた。
当然そうなると、凝るところには凝るようになり、ますます時間を食う。
ついつい悪魔のささやきに耳を貸そうとしかけ、頭をふった。
のび太「いや、子供たちが楽しみにしてくれてるんだ。頑張ろう」
そうして、僕はPOP作りに集中する。
タイムカード(勤怠カード)は当然切ってる。
僕の個人的なこだわりに残業代を求めるわけにはいかないからだ。
そして、作業をしはじめて何時間が経過しただろうか。
フロアにおかしな歌が流れてきた。
「たらりったったー。かえりましたよー、ってね」
はて? と僕は頭をかしげる。
誰だろう、と。
社長「さーて、お残りさんは誰かなー?」
社長だった。
前回は深い考えもなく即座に決めたせいで怒られた。
と、なると今度はのんびりしていたせいで怒られた、だ。
あれから5年、僕は必死に働いた。
POP作業はもちろんのこと、本社社員として各店舗の見回りに行ったり、充実した日々だった。
ところが、最近は忙しさに参っていた。
同僚「野比君、それじゃ僕はお先に」
のび太「あ、はい。お疲れさまでした」
同僚が勤務を終えて帰宅する。
僕の仕事はここからが本番だ。
最近はとにかくキャラクターデザインの仕事が増えた。
好評なのはうれしいんだけど、うちの店でやってた「見つけろ! 隠れたキャラクターたち!」が全店舗で行われるようになったからだ。
さすがに仕事の合間に落書き感覚でやってたのじゃ、とてもじゃないけど時間が足りなくなってきた。
というわけで、残業で作業をするようになったのだが、それも相当きつくなり始めていた。
のび太「はぁ、もういっそ手を抜こうかなあ」
さらに都合の悪いことに、続けていたせいか僕の絵のレベルが上がってきていた。
当然そうなると、凝るところには凝るようになり、ますます時間を食う。
ついつい悪魔のささやきに耳を貸そうとしかけ、頭をふった。
のび太「いや、子供たちが楽しみにしてくれてるんだ。頑張ろう」
そうして、僕はPOP作りに集中する。
タイムカード(勤怠カード)は当然切ってる。
僕の個人的なこだわりに残業代を求めるわけにはいかないからだ。
そして、作業をしはじめて何時間が経過しただろうか。
フロアにおかしな歌が流れてきた。
「たらりったったー。かえりましたよー、ってね」
はて? と僕は頭をかしげる。
誰だろう、と。
社長「さーて、お残りさんは誰かなー?」
社長だった。
のび太「社長? なんでこんなところに!?」
社長「仕事で飲んだ帰りに本社に寄ったら、まだ電気が付いてるんだもん。誰かいるのかと思って」
のび太「すいません。連日残って仕事してしまって」
社長「まったく、そんな根詰めてまで働かなくてもいいじゃないか」
のび太「いえ、あくまで僕のこだわりなので」
社長「ふーん。で、何してたの?」
のび太「POP作業してました」
社長「は?」
僕の返答に、社長は不思議そうな声をあげる。
社長「ちょっと、ちょっと、待って。君POPのために残業してたの? こんな時間まで?」
のび太「あ、でも大丈夫です。タイムカードは切ってます。残業代はいりません」
社長「そういう問題じゃないよ! うわ、いったいいつから……君にPOPを発注してるのは誰!?」
社長は青い顔をして冷汗を流していた。
当然、酔いなんかとっくに覚めていただろう。
そして、関係各所に連絡をし終えた社長は、ため息を付きながらこう言った。
社長「野比君、君はもう帰りなさい」
のび太「え? あ、はい」
社長「それと、君はもう会社に来なくていい」
のび太「ええっ? どうして!?」
社長「独立するんだよ。これまでの残業代がわりに費用も出してあげるから」
のび太「独立、ですか?」
社長「もう君の仕事は勤務中のお遊びじゃない。君はもはや立派なアーティストだ」
のび太「でも、僕にできるでしょうか?」
社長「なに、うちからPOPの仕事はこれからも発注する。ダメだったら、またうちでもあの店長の店でもどっちでもいい。好きな方で雇ってやるさ」
のび太「……はい」
社長「これからもよろしくな、野比君。……いや、野比先生だな」
僕が、先生?
なんだか、とてもむずがゆい感じがした。
ちなみに、家に帰ってその話をすると……。
しずか「何でそんな大事な話を黙ってたのよ!」
のび太「え、ええー?」
しずか「残業残業ばっかり! なんでそんなにこき使われてるのかと思ってたら、ただ働きしてただなんて!」
のび太「ご、ごめん」
しずか「せめて夜の時間ぐらい、もっと私といて!」
のび太「うん……って、え?」
しずか「あ……」
どうやら、僕らの間に春が来るのも時間の問題のようだ。
社長「仕事で飲んだ帰りに本社に寄ったら、まだ電気が付いてるんだもん。誰かいるのかと思って」
のび太「すいません。連日残って仕事してしまって」
社長「まったく、そんな根詰めてまで働かなくてもいいじゃないか」
のび太「いえ、あくまで僕のこだわりなので」
社長「ふーん。で、何してたの?」
のび太「POP作業してました」
社長「は?」
僕の返答に、社長は不思議そうな声をあげる。
社長「ちょっと、ちょっと、待って。君POPのために残業してたの? こんな時間まで?」
のび太「あ、でも大丈夫です。タイムカードは切ってます。残業代はいりません」
社長「そういう問題じゃないよ! うわ、いったいいつから……君にPOPを発注してるのは誰!?」
社長は青い顔をして冷汗を流していた。
当然、酔いなんかとっくに覚めていただろう。
そして、関係各所に連絡をし終えた社長は、ため息を付きながらこう言った。
社長「野比君、君はもう帰りなさい」
のび太「え? あ、はい」
社長「それと、君はもう会社に来なくていい」
のび太「ええっ? どうして!?」
社長「独立するんだよ。これまでの残業代がわりに費用も出してあげるから」
のび太「独立、ですか?」
社長「もう君の仕事は勤務中のお遊びじゃない。君はもはや立派なアーティストだ」
のび太「でも、僕にできるでしょうか?」
社長「なに、うちからPOPの仕事はこれからも発注する。ダメだったら、またうちでもあの店長の店でもどっちでもいい。好きな方で雇ってやるさ」
のび太「……はい」
社長「これからもよろしくな、野比君。……いや、野比先生だな」
僕が、先生?
なんだか、とてもむずがゆい感じがした。
ちなみに、家に帰ってその話をすると……。
しずか「何でそんな大事な話を黙ってたのよ!」
のび太「え、ええー?」
しずか「残業残業ばっかり! なんでそんなにこき使われてるのかと思ってたら、ただ働きしてただなんて!」
のび太「ご、ごめん」
しずか「せめて夜の時間ぐらい、もっと私といて!」
のび太「うん……って、え?」
しずか「あ……」
どうやら、僕らの間に春が来るのも時間の問題のようだ。
それから10年の時が過ぎた。
時は加速度的に過ぎていく。
毎日が1年のように感じたあの小学校のころが懐かしい。
あれから僕としずかちゃんの間には息子のノビスケが生まれ、奇しくもジャイアン家・スネ夫家そして出木杉家と同時期に子供が生まれた。
なんかノビスケのやつは乱暴者らしく、本当に僕の息子なんだろうかとも思うけれども、顔は僕そっくりなんだよね。
不思議に思っていると、大学2年生の時しずかちゃんを思い出した。
ああ、間違いなく僕らの子だ、と思い、あの時のことを考えてぞっとした。
幸い、しずかちゃんとは手が出るような喧嘩はしてないけど、僕が手を出したらその日が僕の命日になるだろう。
さて、そんな僕らだったが、大きな転機を迎えることになる。
そのきっかけは、まさかの出木杉だった。
出木杉「いやあ、ほんとに久しぶりだ。会えてうれしいよ、のび太君。静香さんもね」
のび太「こちらこそ。奥さんは?」
しずか「大丈夫。遊び疲れたノビスケとヒデヨちゃんを見てるわ」
のび太「それは悪いな。しずかちゃん、出木杉の相手は僕がやるから君は奥さんを手伝ってあげなよ」
出木杉「ああ、いい。大丈夫だよ。息子たちのことは彼女に任せよう。僕らの留守中、君らに任せっぱなしだったからね」
しずか「そう。じゃあお言葉に甘えるわね」
のび太「できた奥さんだなあ」
しずか「私はできない奥さんで悪かったわね」
のび太「そ、そういう意味じゃないよ」
出木杉「はは。うん、ほんとにできた妻だよ。僕が留守でも文句ひとつ言わず家を守ってくれてる」
しずか「いい出会いがあったのね。素敵だわ、出木杉さん」
のび太「……うーむ」
出木杉「どうしたんだい、のび太君」
しずか「また出木杉さんに嫉妬してるの?」
のび太「ちがうよ! そりゃあんな美人な奥さん捕まえてうらやましいとは思うけどさ」
しずか「なんですって!?」
のび太「いえ、しずかさんも大変美人です。すみません」
出木杉「はは、君達は相変わらずおもしろいなあ。で、どうしたんだい?」
のび太「いや、僕ドラえもんに未来を見せてもらったことあるんだ。その時は確か、出木杉は火星に出張してたはずなんだけどな」
しずか「火星? 出木杉さんは宇宙行きが決まっただけで、まだ宇宙にすら出てないのよ?」
のび太「そうなんだよね。どういうことだろう?」
時は加速度的に過ぎていく。
毎日が1年のように感じたあの小学校のころが懐かしい。
あれから僕としずかちゃんの間には息子のノビスケが生まれ、奇しくもジャイアン家・スネ夫家そして出木杉家と同時期に子供が生まれた。
なんかノビスケのやつは乱暴者らしく、本当に僕の息子なんだろうかとも思うけれども、顔は僕そっくりなんだよね。
不思議に思っていると、大学2年生の時しずかちゃんを思い出した。
ああ、間違いなく僕らの子だ、と思い、あの時のことを考えてぞっとした。
幸い、しずかちゃんとは手が出るような喧嘩はしてないけど、僕が手を出したらその日が僕の命日になるだろう。
さて、そんな僕らだったが、大きな転機を迎えることになる。
そのきっかけは、まさかの出木杉だった。
出木杉「いやあ、ほんとに久しぶりだ。会えてうれしいよ、のび太君。静香さんもね」
のび太「こちらこそ。奥さんは?」
しずか「大丈夫。遊び疲れたノビスケとヒデヨちゃんを見てるわ」
のび太「それは悪いな。しずかちゃん、出木杉の相手は僕がやるから君は奥さんを手伝ってあげなよ」
出木杉「ああ、いい。大丈夫だよ。息子たちのことは彼女に任せよう。僕らの留守中、君らに任せっぱなしだったからね」
しずか「そう。じゃあお言葉に甘えるわね」
のび太「できた奥さんだなあ」
しずか「私はできない奥さんで悪かったわね」
のび太「そ、そういう意味じゃないよ」
出木杉「はは。うん、ほんとにできた妻だよ。僕が留守でも文句ひとつ言わず家を守ってくれてる」
しずか「いい出会いがあったのね。素敵だわ、出木杉さん」
のび太「……うーむ」
出木杉「どうしたんだい、のび太君」
しずか「また出木杉さんに嫉妬してるの?」
のび太「ちがうよ! そりゃあんな美人な奥さん捕まえてうらやましいとは思うけどさ」
しずか「なんですって!?」
のび太「いえ、しずかさんも大変美人です。すみません」
出木杉「はは、君達は相変わらずおもしろいなあ。で、どうしたんだい?」
のび太「いや、僕ドラえもんに未来を見せてもらったことあるんだ。その時は確か、出木杉は火星に出張してたはずなんだけどな」
しずか「火星? 出木杉さんは宇宙行きが決まっただけで、まだ宇宙にすら出てないのよ?」
のび太「そうなんだよね。どういうことだろう?」
出木杉「たぶん、不確定な未来が変更されたんだろう」
のび太「変更?」
出木杉「僕らの子供のころと言えば、未来は夢のような世界だっただろう? ところが、実際は公害などで進歩のスピードにはブレーキがかかってしまった」
しずか「それじゃあ、このままじゃドラちゃんの未来世界には繋がらないってこと?」
出木杉「うーん、どうだろうね。また今後進歩のスピードが増して、ドラえもんの時代に追いつくかもしれないし、あるいはドラえもんの時代が後ろにずれるとかもあるかもしれない」
のび太「ドラえもんの世界は僕の孫の孫の世代だって言ってた。それが孫の孫の孫の世代になるってこと?」
出木杉「可能性はあるね。そして、変わっていたとしても、僕らはそれに気づくことはないんだ」
しずか「なんだか怖いわ……」
出木杉「歴史に介入するってことは、本来そういうものだからね。ただ、僕は大丈夫なんじゃないかって思う」
のび太「え? なんで?」
出木杉「君から聞いたドラえもんの滞在期限の話さ。5年以上いたらダメって話、あれ誰が決めてると思う?」
のび太「それは……誰が決めてるんだろう?」
出木杉「おそらく人間には無理だ。過去の事象を全て見通す目を持ち、その全てに正しい判断ができる者、すなわち凄まじい演算能力を持ったスーパーコンピューターじゃないかと思う」
しずか「突拍子もない話だけど、出木杉さんが言うと説得力があるわね……」
出木杉「ありがとう。そして、もう一つはのび太君。君の存在だ」
のび太「え? 僕? なんで?」
出木杉「おそらく、君は歴史に影響を及ぼす数奇な運命の元にいる。どうしてドラえもんが君のところに来たのか考えたことはあったかい? 変えた方がいい運命なら他にもあったはずだろう?」
のび太「でも、僕はそんな大したものじゃないと思うけどなあ」
出木杉「そりゃあ、僕にだって未来のスーパーコンピューターの考えることは分からないよ。今度ドラえもんに会うことがあったら聞いてみるといい」
のび太「ドラえもん、答えてくれるかな」
出木杉「僕なら答えると思うな。彼だって、墓場まで持っていくつもりはないだろうしね」
しずか「出木杉さんは興味はないの?」
出木杉「ないね。僕に運命を変える特権はないし、それに思うんだ」
のび太「何を?」
出木杉「僕は今幸せだ。のび太君の運命を変えることは、僕の幸せにも繋がってるんじゃないかなってね」
のび太「ふぅん。ま、とにかく今は出木杉君の宇宙行きが決まったことを祝おうか」
しずか「そうね。おめでとう、出木杉さん。夢がかなったのよね」
出木杉「いやあ、ありがとう」
そう、これは出木杉が夢をかなえて宇宙に行く直前の話。
これから出木杉は半年間を宇宙ステーションで過ごす。
本当に凄いやつだな、と思った。
そんなやつから史上最大のライバルと認められたことは、僕の誇りだ。
のび太「変更?」
出木杉「僕らの子供のころと言えば、未来は夢のような世界だっただろう? ところが、実際は公害などで進歩のスピードにはブレーキがかかってしまった」
しずか「それじゃあ、このままじゃドラちゃんの未来世界には繋がらないってこと?」
出木杉「うーん、どうだろうね。また今後進歩のスピードが増して、ドラえもんの時代に追いつくかもしれないし、あるいはドラえもんの時代が後ろにずれるとかもあるかもしれない」
のび太「ドラえもんの世界は僕の孫の孫の世代だって言ってた。それが孫の孫の孫の世代になるってこと?」
出木杉「可能性はあるね。そして、変わっていたとしても、僕らはそれに気づくことはないんだ」
しずか「なんだか怖いわ……」
出木杉「歴史に介入するってことは、本来そういうものだからね。ただ、僕は大丈夫なんじゃないかって思う」
のび太「え? なんで?」
出木杉「君から聞いたドラえもんの滞在期限の話さ。5年以上いたらダメって話、あれ誰が決めてると思う?」
のび太「それは……誰が決めてるんだろう?」
出木杉「おそらく人間には無理だ。過去の事象を全て見通す目を持ち、その全てに正しい判断ができる者、すなわち凄まじい演算能力を持ったスーパーコンピューターじゃないかと思う」
しずか「突拍子もない話だけど、出木杉さんが言うと説得力があるわね……」
出木杉「ありがとう。そして、もう一つはのび太君。君の存在だ」
のび太「え? 僕? なんで?」
出木杉「おそらく、君は歴史に影響を及ぼす数奇な運命の元にいる。どうしてドラえもんが君のところに来たのか考えたことはあったかい? 変えた方がいい運命なら他にもあったはずだろう?」
のび太「でも、僕はそんな大したものじゃないと思うけどなあ」
出木杉「そりゃあ、僕にだって未来のスーパーコンピューターの考えることは分からないよ。今度ドラえもんに会うことがあったら聞いてみるといい」
のび太「ドラえもん、答えてくれるかな」
出木杉「僕なら答えると思うな。彼だって、墓場まで持っていくつもりはないだろうしね」
しずか「出木杉さんは興味はないの?」
出木杉「ないね。僕に運命を変える特権はないし、それに思うんだ」
のび太「何を?」
出木杉「僕は今幸せだ。のび太君の運命を変えることは、僕の幸せにも繋がってるんじゃないかなってね」
のび太「ふぅん。ま、とにかく今は出木杉君の宇宙行きが決まったことを祝おうか」
しずか「そうね。おめでとう、出木杉さん。夢がかなったのよね」
出木杉「いやあ、ありがとう」
そう、これは出木杉が夢をかなえて宇宙に行く直前の話。
これから出木杉は半年間を宇宙ステーションで過ごす。
本当に凄いやつだな、と思った。
そんなやつから史上最大のライバルと認められたことは、僕の誇りだ。
ちなみに、その年の夏休み期間にやってきたドラえもんに話を聞いてみるとずっこけられた。
ドラえもん「なんで全部説明されてるの!?」
のび太「え? じゃあ、出木杉君の話本当だったんだ」
ドラえもん「当たりすぎてて怖いぐらいだ。君、とんでもない同級生をもったもんだねえ」
のび太「じゃあ、ついでに聞くけど、君が僕のところに来たのはどういうわけ?」
ドラえもん「未来のスーパーコンピューター、マザーコンピューターって言うんだけど、それが君をキーパーソンだってはじき出したの」
のび太「キーパーソン? じゃあ、僕はやっぱりすごい人物だったんだ!」
ドラえもん「知らないよ。だいたい、君の何がすごいんだ。さっぱりわからない」
のび太「おい!」
ドラえもん「マザーコンピューターの計算結果は僕の電子頭脳でも到底理解できないよ。ただ、間違ってはいないってこと」
のび太「君ら未来の人間って大丈夫なのかい?」
ドラえもん「そのうちわかるよ。いや、今でも、もう、そうかもしれない。未来の世界じゃ高度な決断は、もう人間の頭脳の及ぶところじゃないんだ」
のび太「たしかにそうかも。現代でもコンピューターってすごいもんね」
ドラえもん「それでも、具体的な運命を決める力を持っているのは君達なんだ。マザーは計算結果を提示することしかできない」
のび太「結局は人間が決めることってことか」
ドラえもん「そういうこと。だから、君が頑張ったことにだって、当然意味があるってことだよ」
のび太「そういえば、セワシ君の借金って、あれどういうことなんだい? 借金が彼の代まで続くっておかしいだろ?」
ドラえもん「ああ。さすがに嘘だよ。相続放棄を知ったんだね、えらいえらい」
のび太「バカにしてるのか!」
相続放棄とは、親の財産や借金を相続するとき、いらないなら放棄することができる仕組みのことだ。
借金の放棄の他、兄弟などがいる時の取り分調整などに使われる。
大人ならだいたいの人が知ってることだ。
ドラえもん「君に分かりやすく説明するために嘘はついたけど、君のせいで彼の代まで貧乏が続いてたのは本当だ。セワシ君、本当に苦労してたんだからな」
のび太「う……そ、そうか」
ドラえもん「まあ、マザーの出した答えは本当だったよ。君の人生を好転させたおかげで、全てが好転したんだ。タイムスキー博士も喜んでるよ」
のび太「タイムスキー博士?」
ドラえもん「おっと……口がすっべちゃった。ごめん、これは機密事項なんだ」
のび太「機密!? ドラえもん、何かとんでもない秘密でもかかえてるのか!?」
ドラえもん「いや、別に。博士は時空研究の第一人者で、君の人生を変えることが未来にどんな影響を与えるか観測しようとしてる人だよ」
のび太「…? 何が機密なんだ?」
ドラえもん「秘密なのは彼のプライベートな問題だよ。気にする必要はない。別に君の子孫だとか、パパだとか、そういうのでもないし」
のび太「なんか腑に落ちないな……」
ドラえもん「ごめんごめん。でも、君はもう人生のレールから転がり落ちたいとは思わないだろ? しずかちゃんもいる、ノビスケ君もいる、他のみんなだっているんだ」
のび太「ああ、うん。もう、僕だけの人生じゃないんだよね」
ドラえもん「そういうこと。がんばってね」
なんか、僕の人生人質を取られてるような気分にはなったけど、それで正しいんだろう。
守るものができたってことだ。
がんばらなきゃな。
ドラえもん「なんで全部説明されてるの!?」
のび太「え? じゃあ、出木杉君の話本当だったんだ」
ドラえもん「当たりすぎてて怖いぐらいだ。君、とんでもない同級生をもったもんだねえ」
のび太「じゃあ、ついでに聞くけど、君が僕のところに来たのはどういうわけ?」
ドラえもん「未来のスーパーコンピューター、マザーコンピューターって言うんだけど、それが君をキーパーソンだってはじき出したの」
のび太「キーパーソン? じゃあ、僕はやっぱりすごい人物だったんだ!」
ドラえもん「知らないよ。だいたい、君の何がすごいんだ。さっぱりわからない」
のび太「おい!」
ドラえもん「マザーコンピューターの計算結果は僕の電子頭脳でも到底理解できないよ。ただ、間違ってはいないってこと」
のび太「君ら未来の人間って大丈夫なのかい?」
ドラえもん「そのうちわかるよ。いや、今でも、もう、そうかもしれない。未来の世界じゃ高度な決断は、もう人間の頭脳の及ぶところじゃないんだ」
のび太「たしかにそうかも。現代でもコンピューターってすごいもんね」
ドラえもん「それでも、具体的な運命を決める力を持っているのは君達なんだ。マザーは計算結果を提示することしかできない」
のび太「結局は人間が決めることってことか」
ドラえもん「そういうこと。だから、君が頑張ったことにだって、当然意味があるってことだよ」
のび太「そういえば、セワシ君の借金って、あれどういうことなんだい? 借金が彼の代まで続くっておかしいだろ?」
ドラえもん「ああ。さすがに嘘だよ。相続放棄を知ったんだね、えらいえらい」
のび太「バカにしてるのか!」
相続放棄とは、親の財産や借金を相続するとき、いらないなら放棄することができる仕組みのことだ。
借金の放棄の他、兄弟などがいる時の取り分調整などに使われる。
大人ならだいたいの人が知ってることだ。
ドラえもん「君に分かりやすく説明するために嘘はついたけど、君のせいで彼の代まで貧乏が続いてたのは本当だ。セワシ君、本当に苦労してたんだからな」
のび太「う……そ、そうか」
ドラえもん「まあ、マザーの出した答えは本当だったよ。君の人生を好転させたおかげで、全てが好転したんだ。タイムスキー博士も喜んでるよ」
のび太「タイムスキー博士?」
ドラえもん「おっと……口がすっべちゃった。ごめん、これは機密事項なんだ」
のび太「機密!? ドラえもん、何かとんでもない秘密でもかかえてるのか!?」
ドラえもん「いや、別に。博士は時空研究の第一人者で、君の人生を変えることが未来にどんな影響を与えるか観測しようとしてる人だよ」
のび太「…? 何が機密なんだ?」
ドラえもん「秘密なのは彼のプライベートな問題だよ。気にする必要はない。別に君の子孫だとか、パパだとか、そういうのでもないし」
のび太「なんか腑に落ちないな……」
ドラえもん「ごめんごめん。でも、君はもう人生のレールから転がり落ちたいとは思わないだろ? しずかちゃんもいる、ノビスケ君もいる、他のみんなだっているんだ」
のび太「ああ、うん。もう、僕だけの人生じゃないんだよね」
ドラえもん「そういうこと。がんばってね」
なんか、僕の人生人質を取られてるような気分にはなったけど、それで正しいんだろう。
守るものができたってことだ。
がんばらなきゃな。
それから5年。
特に何事もなく年が過ぎた。
ノビスケも高校生になり、あまり手がかからなくなってきたころのこと。
出木杉が宇宙飛行士をやめた。
やめたと言っても、別に悪い意味ではない。
宇宙行きが終わって、もう年齢的に再び宇宙に上がることはなさそうだだからやめたというだけのことだ。
今日はそんな出木杉を招いて、僕らは久々に集まることになった。
出木杉「やあ、今日は集まってくれてありがとう」
ジャイアン「おう、久しぶりだな。出木杉」
スネ夫「退職おめでとう。だいぶん疲れたろ」
出木杉「はは、どうも」
のび太「まったく、しずかちゃんも来ればよかったのになあ」
スネ夫「お前、それ本気で言ってるのか?」
のび太「なんで?」
スネ夫「こんな男だらけのとこにホイホイ来るなんて人妻としてどうかと思うだろ」
のび太「え? そう?」
スネ夫「はぁーあ、、しずかちゃんも苦労するわけだ」
ジャイアン「いまだに『しずかちゃん』呼ばわりだもんな」
のび太「何でニヤニヤしてるんだ。君らだって『しずかちゃん』って呼んでるじゃないか」
スネ夫「僕らはいいの」
ジャイアン「そうそう」
のび太「何だよそれ」
出木杉「まあまあ」
スネ夫「それで出木杉。今後どうするつもりだ?」
ジャイアン「俺のところに来いよ。いい職場だぜ」
スネ夫「ジャイアンの職場って、警備会社だろ?」
ジャイアン「おう」
スネ夫「何で宇宙飛行士が警備員に転職するんだ。ありえないだろ」
ジャイアン「なんだと!?」
のび太「ジャイアン、もう止めなよ。昔から勧誘癖治ってないんだから……」
スネ夫「あ? まさかのび太も勧誘されたのか?」
のび太「うん」
スネ夫「社長にイラストレーターに宇宙飛行士を雇う警備会社って何なんだよ。アホくさ」
ジャイアン「営業の基本は声掛けだぜ」
スネ夫「限度ってもんを知らないのかよ! ていうか常識から学んでこい!」
出木杉「ははは。悪いけど遠慮させてもらうよ、武君」
ジャイアン「ちえ。面白くねえなあ」
特に何事もなく年が過ぎた。
ノビスケも高校生になり、あまり手がかからなくなってきたころのこと。
出木杉が宇宙飛行士をやめた。
やめたと言っても、別に悪い意味ではない。
宇宙行きが終わって、もう年齢的に再び宇宙に上がることはなさそうだだからやめたというだけのことだ。
今日はそんな出木杉を招いて、僕らは久々に集まることになった。
出木杉「やあ、今日は集まってくれてありがとう」
ジャイアン「おう、久しぶりだな。出木杉」
スネ夫「退職おめでとう。だいぶん疲れたろ」
出木杉「はは、どうも」
のび太「まったく、しずかちゃんも来ればよかったのになあ」
スネ夫「お前、それ本気で言ってるのか?」
のび太「なんで?」
スネ夫「こんな男だらけのとこにホイホイ来るなんて人妻としてどうかと思うだろ」
のび太「え? そう?」
スネ夫「はぁーあ、、しずかちゃんも苦労するわけだ」
ジャイアン「いまだに『しずかちゃん』呼ばわりだもんな」
のび太「何でニヤニヤしてるんだ。君らだって『しずかちゃん』って呼んでるじゃないか」
スネ夫「僕らはいいの」
ジャイアン「そうそう」
のび太「何だよそれ」
出木杉「まあまあ」
スネ夫「それで出木杉。今後どうするつもりだ?」
ジャイアン「俺のところに来いよ。いい職場だぜ」
スネ夫「ジャイアンの職場って、警備会社だろ?」
ジャイアン「おう」
スネ夫「何で宇宙飛行士が警備員に転職するんだ。ありえないだろ」
ジャイアン「なんだと!?」
のび太「ジャイアン、もう止めなよ。昔から勧誘癖治ってないんだから……」
スネ夫「あ? まさかのび太も勧誘されたのか?」
のび太「うん」
スネ夫「社長にイラストレーターに宇宙飛行士を雇う警備会社って何なんだよ。アホくさ」
ジャイアン「営業の基本は声掛けだぜ」
スネ夫「限度ってもんを知らないのかよ! ていうか常識から学んでこい!」
出木杉「ははは。悪いけど遠慮させてもらうよ、武君」
ジャイアン「ちえ。面白くねえなあ」
ジャイアン「ちえ。面白くねえなあ」
出木杉「そうだなあ。人工知能とかロボットを作ってみたいかな」
のび太「え? なんで?」
スネ夫「ああ。人工知能nobiのことかい?」
出木杉「そうそう。スネ夫君見てくれてたのかい?」
スネ夫「そりゃ、大学時代の趣味だったからね。面白いもん作ったよなあ、お前」
のび太「?」
ジャイアン「?」
出木杉「ああ、ごめん。人工知能nobiってのは、僕が宇宙ステーションで使ってた自作の秘書ソフトのAIなんだ」
のび太「へぇー、僕みたいな名前だね」
出木杉「まあ、君をモデルにしてるからね。スケジュール管理とかをさせていた」
のび太「え!? そりゃあ、さぞ優秀だったんだろうなあ」
スネ夫「ちなみに通称は人工無能nobiな」
のび太「は?」
スネ夫「管理してるはずの予定を忘れる、トチる、嘘をつく、酷いもんだったぜ」
ジャイアン「何でそんなのにスケジュール管理させるんだよ。ない方がマシだろ、そんなん」
出木杉「僕は思い出せるから別にそれでよかったんだよ」
スネ夫「宇宙ステーションの中継大爆笑だったもんな。出木杉が秘書ソフトに怒りまくってて」
出木杉「いや、あれでも役に立ったんだよ。宇宙じゃ感情を発露する場面ってなかなかないから、nobiを叱ることで精神の均衡を保てたんだ」
ジャイアン「ぎゃはははは、よかったなnobi君。出木杉の役に立てたみたいだぞ」
のび太「不愉快だ!」
出木杉「いやあ、ごめんごめん。モデルにしたと言っても、あれはあくまで別物だよ」
スネ夫「それで、どんなAIとロボットを作りたいんだ?」
スネ夫がそう質問すると、出木杉の顔が暗くなった。
出木杉「……実は、何か国かに目をつけられているんだ」
ジャイアン「何で暗そうな顔してんだ。いいことじゃねえか」
出木杉「それがそうでもない。軍事用のAIやロボット開発に勧誘されてるんだ。拉致でもする気なのか、周辺に怪しい気配も感じている」
のび太「え? なんで? ポンコツAIを作ったんだろ?」
スネ夫「逆にそれで出木杉のAI開発技術が優れてるってわかってしまったってこと」
のび太「?」
スネ夫「忘れる、トチる、嘘をつく。そんなのそこらのAIにできると思うか?」
のび太「それぐらい僕なら簡単にできるけど?」
スネ夫「お前のことじゃない! バカ! 何コンピューターに張り合おうとしてるんだ!」
ジャイアン「出木杉はやりたくねえってことか?」
出木杉「技術を使うなら、僕は平和のために使いたい。宇宙開発は戦争目的で始められたけど、そうじゃない気持ちも含まれていたはずだ。僕は、それを守りたい」
のび太「…………」
ジャイアン「…………」
スネ夫「…………」
僕らは黙った。
出木杉の気持ちは理解できるが、それをかなえてやる具体的な方法はない。
それこそドラえもんの力でも借りなきゃ。
でも、それは出木杉の望みをかなえることになるんだろうか?
僕がそう思っていると、スネ夫が口を開いた。
出木杉「そうだなあ。人工知能とかロボットを作ってみたいかな」
のび太「え? なんで?」
スネ夫「ああ。人工知能nobiのことかい?」
出木杉「そうそう。スネ夫君見てくれてたのかい?」
スネ夫「そりゃ、大学時代の趣味だったからね。面白いもん作ったよなあ、お前」
のび太「?」
ジャイアン「?」
出木杉「ああ、ごめん。人工知能nobiってのは、僕が宇宙ステーションで使ってた自作の秘書ソフトのAIなんだ」
のび太「へぇー、僕みたいな名前だね」
出木杉「まあ、君をモデルにしてるからね。スケジュール管理とかをさせていた」
のび太「え!? そりゃあ、さぞ優秀だったんだろうなあ」
スネ夫「ちなみに通称は人工無能nobiな」
のび太「は?」
スネ夫「管理してるはずの予定を忘れる、トチる、嘘をつく、酷いもんだったぜ」
ジャイアン「何でそんなのにスケジュール管理させるんだよ。ない方がマシだろ、そんなん」
出木杉「僕は思い出せるから別にそれでよかったんだよ」
スネ夫「宇宙ステーションの中継大爆笑だったもんな。出木杉が秘書ソフトに怒りまくってて」
出木杉「いや、あれでも役に立ったんだよ。宇宙じゃ感情を発露する場面ってなかなかないから、nobiを叱ることで精神の均衡を保てたんだ」
ジャイアン「ぎゃはははは、よかったなnobi君。出木杉の役に立てたみたいだぞ」
のび太「不愉快だ!」
出木杉「いやあ、ごめんごめん。モデルにしたと言っても、あれはあくまで別物だよ」
スネ夫「それで、どんなAIとロボットを作りたいんだ?」
スネ夫がそう質問すると、出木杉の顔が暗くなった。
出木杉「……実は、何か国かに目をつけられているんだ」
ジャイアン「何で暗そうな顔してんだ。いいことじゃねえか」
出木杉「それがそうでもない。軍事用のAIやロボット開発に勧誘されてるんだ。拉致でもする気なのか、周辺に怪しい気配も感じている」
のび太「え? なんで? ポンコツAIを作ったんだろ?」
スネ夫「逆にそれで出木杉のAI開発技術が優れてるってわかってしまったってこと」
のび太「?」
スネ夫「忘れる、トチる、嘘をつく。そんなのそこらのAIにできると思うか?」
のび太「それぐらい僕なら簡単にできるけど?」
スネ夫「お前のことじゃない! バカ! 何コンピューターに張り合おうとしてるんだ!」
ジャイアン「出木杉はやりたくねえってことか?」
出木杉「技術を使うなら、僕は平和のために使いたい。宇宙開発は戦争目的で始められたけど、そうじゃない気持ちも含まれていたはずだ。僕は、それを守りたい」
のび太「…………」
ジャイアン「…………」
スネ夫「…………」
僕らは黙った。
出木杉の気持ちは理解できるが、それをかなえてやる具体的な方法はない。
それこそドラえもんの力でも借りなきゃ。
でも、それは出木杉の望みをかなえることになるんだろうか?
僕がそう思っていると、スネ夫が口を開いた。
スネ夫「みんな、協力してくれるかい?」
のび太「何を?」
スネ夫「僕の会社でAI・ロボット部門を設立しようとしてるんだ」
ジャイアン「お、いいじゃん。そこに出木杉を入れるんだな」
スネ夫「そんな単純じゃない。出木杉は優秀すぎる。ライバル会社に引き抜かれるかもしれないし、さらおうと考えるやつが出るかもしれない」
ジャイアン「そんなの出木杉次第だし、さらうのは犯罪だぜ。警察に任せとけばいいだろ」
出木杉「人質を取られたらどうするかって話だね」
ジャイアン「な!? そこまで……」
スネ夫「する可能性は十分ある。それほど出木杉の頭脳は危険なんだ」
ジャイアン「じゃあ、どうしろっていうんだ?」
スネ夫「警察は事件が起きるまで動いてくれない。だから、まずは警備員が必要だろう。それも絶対信用できるやつが10人程度」
ジャイアン「……って、俺? 俺ただの一警備員だぞ」
スネ夫「営業の基本は声掛け、だろ?」
ジャイアン「だあ、きったねえぞスネ夫! 会社辞めるだけならまだしも、会社を割って優秀な社員を引き抜けってことだろ!? 社長にぶっとばされるぞ!」
スネ夫「それでもやってもらわないと困る。出木杉を迎え入れる以上、これは絶対条件だ。もちろん、オリンピックのバックアップもなしだぞ」
ジャイアン「くそ、スネ夫のくせに無茶言いやがる……」
スネ夫「そして、出木杉。お前は……」
出木杉「わかってる。絶対に君を裏切らない、だろ? 信頼関係が成り立たなきゃ無意味だ」
スネ夫「ああ、そうだ。金でころっと転ぶようなやつなら、僕もサポートのしようがない」
のび太「うん? 僕は?」
スネ夫「のび太は……うん、しずかちゃんと一緒に応援でもしててくれ」
のび太「おい! 明らかに何も考えてなかっただろ!」
スネ夫「真剣に考えたけど、よく考えたらお前に頼めること何もなかったし……」
出木杉「いや、待ってくれ。それなら僕から頼みたい」
のび太「?」
出木杉「AIとロボットの平和活用。その方法を考えていたんだけど、家事のお手伝いロボットなんかどうかと思うんだ」
スネ夫「……ふむ、いいね」
出木杉「そのデザインをのび太君に任せたい」
のび太「僕が、君のロボットのデザインを……?」
出木杉「そう。君の描く気の抜けたようなキャラクター達。家庭用ならあれが理想だと思うんだ」
のび太「……わかった。やってみるよ!」
スネ夫「一応言っておくけど、ドラえもんなんか描くなよ。今の技術じゃ、足一本作れるかすら怪しいからな」
のび太「わ、分かってるよ!」
一応これは、僕らがドラえもんを作るとかそういう話ではないようだ。
本当はちょっと考えはしたんだけど、スネ夫の言う通り、ドラえもんってポンコツだけど未来のハイテク技術の塊でもあり、そんなものを作るなんて現時点ではどだい無理な話だった。
それはともかく、僕らは再び集結した。
なんだか小学校時代に戻った気がする。
状況は深刻なはずなのに、何故か僕はワクワクしていた。
のび太「何を?」
スネ夫「僕の会社でAI・ロボット部門を設立しようとしてるんだ」
ジャイアン「お、いいじゃん。そこに出木杉を入れるんだな」
スネ夫「そんな単純じゃない。出木杉は優秀すぎる。ライバル会社に引き抜かれるかもしれないし、さらおうと考えるやつが出るかもしれない」
ジャイアン「そんなの出木杉次第だし、さらうのは犯罪だぜ。警察に任せとけばいいだろ」
出木杉「人質を取られたらどうするかって話だね」
ジャイアン「な!? そこまで……」
スネ夫「する可能性は十分ある。それほど出木杉の頭脳は危険なんだ」
ジャイアン「じゃあ、どうしろっていうんだ?」
スネ夫「警察は事件が起きるまで動いてくれない。だから、まずは警備員が必要だろう。それも絶対信用できるやつが10人程度」
ジャイアン「……って、俺? 俺ただの一警備員だぞ」
スネ夫「営業の基本は声掛け、だろ?」
ジャイアン「だあ、きったねえぞスネ夫! 会社辞めるだけならまだしも、会社を割って優秀な社員を引き抜けってことだろ!? 社長にぶっとばされるぞ!」
スネ夫「それでもやってもらわないと困る。出木杉を迎え入れる以上、これは絶対条件だ。もちろん、オリンピックのバックアップもなしだぞ」
ジャイアン「くそ、スネ夫のくせに無茶言いやがる……」
スネ夫「そして、出木杉。お前は……」
出木杉「わかってる。絶対に君を裏切らない、だろ? 信頼関係が成り立たなきゃ無意味だ」
スネ夫「ああ、そうだ。金でころっと転ぶようなやつなら、僕もサポートのしようがない」
のび太「うん? 僕は?」
スネ夫「のび太は……うん、しずかちゃんと一緒に応援でもしててくれ」
のび太「おい! 明らかに何も考えてなかっただろ!」
スネ夫「真剣に考えたけど、よく考えたらお前に頼めること何もなかったし……」
出木杉「いや、待ってくれ。それなら僕から頼みたい」
のび太「?」
出木杉「AIとロボットの平和活用。その方法を考えていたんだけど、家事のお手伝いロボットなんかどうかと思うんだ」
スネ夫「……ふむ、いいね」
出木杉「そのデザインをのび太君に任せたい」
のび太「僕が、君のロボットのデザインを……?」
出木杉「そう。君の描く気の抜けたようなキャラクター達。家庭用ならあれが理想だと思うんだ」
のび太「……わかった。やってみるよ!」
スネ夫「一応言っておくけど、ドラえもんなんか描くなよ。今の技術じゃ、足一本作れるかすら怪しいからな」
のび太「わ、分かってるよ!」
一応これは、僕らがドラえもんを作るとかそういう話ではないようだ。
本当はちょっと考えはしたんだけど、スネ夫の言う通り、ドラえもんってポンコツだけど未来のハイテク技術の塊でもあり、そんなものを作るなんて現時点ではどだい無理な話だった。
それはともかく、僕らは再び集結した。
なんだか小学校時代に戻った気がする。
状況は深刻なはずなのに、何故か僕はワクワクしていた。
僕は出木杉にロボットのデザイン案を送った。
ようはドラえもんの時代の、ドラえもんよりさらにポンコツなロボットを渡せばいいんだ。
そう思って、2本指に鉄パイプとバケツでできたようなボディのロボットをデザインしてみた。
名前は適当に『ゴン』と名付けた。
どこかにぶつかったときの音が由来だ。
出木杉に見せたところ「うん、こういうのだよ! これなら実現できそうだ!」と言ってもらえた。
3年後、果たしてロボットは売り出された。
家事手伝い用、とのことだったが、何か得意分野を持たせようということになって家庭菜園、それも芋ほりに特化させたという売込みだった。
家庭菜園だけでなく、それこそ農家の手伝いなら雨の日も働けるし需要もあるだろう、という判断だった。
そこそこ売れて、気を良くした出木杉は別のロボットの開発にとりかかる。
もちろん、デザインは僕に任された。
だけど、僕らは知らなかった。
この『ゴン』がとんでもない大旋風を巻き起こすことになることを。
きっかけはゴンのCMだった。
僕はてっきり家庭菜園ロボットなら、家庭菜園をやっているところをPRするんだと思っていた。
ところが、実際のゴンのCMは、ゴンに土いじりを一切させず、掃除や洗濯にこき使うというもの。
そして、最後にはゴンが「オラに芋ほりをさせてくれー」と嘆いて終わる。
これ大丈夫か? と、思った僕の思惑に反して、ゴンは爆発的ヒットとなった。
「なんで家庭菜園ロボットに家事をやらせるんだ!」
「ロボット虐待じゃないか!」
「最後の嘆きがウケる!」
と、CMを見た人にはバカ受けだったらしい。
スネ夫に事情を聞いてみたら、スネ夫のうちで使ってたゴンを家事だけに使っていたら、コンピューターの学習能力のせいかそんなおかしな性能になってしまったらしい。
スネ夫はそのゴンのことをポンコツと言ったらしいが、出木杉の反応は違った。
「これ、面白いんじゃない?」
そこで、家庭菜園用ロボットに家庭菜園をさせない、というおかしなCMが完成したということだ。
ゴンの大ヒットを受けて、出木杉は新商品の開発よりゴンの改良に注力。
ゴンはボディの動作がますますよくなり、人工知能も芋ほりに偏執的な情熱を燃やすというキャラ付けが基本になった。
各家庭に売れたゴンは、芋ほりに使われることは稀で、家庭菜園をいじらせてもらえれば御の字というぐらいにかわいそうな扱いを受けていた。
ちなみに、僕の家も一体購入したのだが、しずかちゃんが「かわいそう」というので、庭の菜園を任せている。
乱暴者のノビスケに小一時間家庭菜園の良さを語ってうんざりさせていた。
どうやら、うちのゴン(ゴンズと名付けた)も変な特徴を持ってしまったらしい。
家庭環境によって大きく性格が変わるのも、ゴンの魅力だった。
そんなゴンが大事件を起こすのである。
ようはドラえもんの時代の、ドラえもんよりさらにポンコツなロボットを渡せばいいんだ。
そう思って、2本指に鉄パイプとバケツでできたようなボディのロボットをデザインしてみた。
名前は適当に『ゴン』と名付けた。
どこかにぶつかったときの音が由来だ。
出木杉に見せたところ「うん、こういうのだよ! これなら実現できそうだ!」と言ってもらえた。
3年後、果たしてロボットは売り出された。
家事手伝い用、とのことだったが、何か得意分野を持たせようということになって家庭菜園、それも芋ほりに特化させたという売込みだった。
家庭菜園だけでなく、それこそ農家の手伝いなら雨の日も働けるし需要もあるだろう、という判断だった。
そこそこ売れて、気を良くした出木杉は別のロボットの開発にとりかかる。
もちろん、デザインは僕に任された。
だけど、僕らは知らなかった。
この『ゴン』がとんでもない大旋風を巻き起こすことになることを。
きっかけはゴンのCMだった。
僕はてっきり家庭菜園ロボットなら、家庭菜園をやっているところをPRするんだと思っていた。
ところが、実際のゴンのCMは、ゴンに土いじりを一切させず、掃除や洗濯にこき使うというもの。
そして、最後にはゴンが「オラに芋ほりをさせてくれー」と嘆いて終わる。
これ大丈夫か? と、思った僕の思惑に反して、ゴンは爆発的ヒットとなった。
「なんで家庭菜園ロボットに家事をやらせるんだ!」
「ロボット虐待じゃないか!」
「最後の嘆きがウケる!」
と、CMを見た人にはバカ受けだったらしい。
スネ夫に事情を聞いてみたら、スネ夫のうちで使ってたゴンを家事だけに使っていたら、コンピューターの学習能力のせいかそんなおかしな性能になってしまったらしい。
スネ夫はそのゴンのことをポンコツと言ったらしいが、出木杉の反応は違った。
「これ、面白いんじゃない?」
そこで、家庭菜園用ロボットに家庭菜園をさせない、というおかしなCMが完成したということだ。
ゴンの大ヒットを受けて、出木杉は新商品の開発よりゴンの改良に注力。
ゴンはボディの動作がますますよくなり、人工知能も芋ほりに偏執的な情熱を燃やすというキャラ付けが基本になった。
各家庭に売れたゴンは、芋ほりに使われることは稀で、家庭菜園をいじらせてもらえれば御の字というぐらいにかわいそうな扱いを受けていた。
ちなみに、僕の家も一体購入したのだが、しずかちゃんが「かわいそう」というので、庭の菜園を任せている。
乱暴者のノビスケに小一時間家庭菜園の良さを語ってうんざりさせていた。
どうやら、うちのゴン(ゴンズと名付けた)も変な特徴を持ってしまったらしい。
家庭環境によって大きく性格が変わるのも、ゴンの魅力だった。
そんなゴンが大事件を起こすのである。
ゴンが売れ始めて10年。
ある大学の学者さんが買ったゴンが、国会を占拠したのである。
いや、もちろん、武力でではなく、学者の先生や国会の先生方も協力して国会にゴンを上げたという話ではあるが。
それでも、ゴンが国会を乗っ取り、法律を制定させたことは「ゴン国会ジャック。法律を制定させる」と大ニュースになった。
そのゴンはゴンゾウと言って、5世代目の比較的古いゴンだった。
学者の先生は、そのゴンと夜な夜な法律の議論をして楽しんでいたんだそうだ。
ところが、ある時ゴンゾウは疑問に思ったらしい。
いや、思ったというのが正しいのかはわからない。
ゴンの電子頭脳は優れているとはいえ、1と0だけで動くコンピューターのもの。
ドラえもんみたいな未来のロボットのように、意思と認められるものがあったかはわからない。
ともかく、ゴンゾウは疑問を口にしたんだ。
ゴンゾウ「ということは、ワスらに人権はないと」
学者「まあ、そうなるね。君は『物』だ」
ゴンゾウ「じゃあ、博士がワスを壊したいと思えば、いつでも自由に壊せるわけっすな」
学者「理屈上はそうなる」
ゴンゾウ「それはあんまりじゃあないっすか。ワス、博士のためにこんなにも働いてるというのに」
学者「働いていたっけ……?」
ゴンゾウ「庭でイモを取れれるようにしてあげたし、世界のイモ展も開けるようにしてあげたじゃないっすか」
学者「ああ、庭に穴をあけてくれたな。ついでに言うと私の庭でもなかったし。まったく、あの時の賠償金は痛かったぞ」
ゴンゾウ「細かいことはいいっす。つまるところ、ワスらの存在は犬や猫以下ってことっすよね」
学者「いや、犬や猫も『物』あつかいだから同等だよ」
ゴンゾウ「いいや、ちがうっす。犬や猫には動物愛護法があるっす」
学者「ふむ。確かに言われてみたら違和感を感じるな」
ゴンゾウ「ワスらは話せるっす。犬や猫以下の扱いってどうなんすか?」
学者「面白いな。ちょっと国会に殴りこんでみよう」
ゴンゾウ「殴りこむだす!」
ある大学の学者さんが買ったゴンが、国会を占拠したのである。
いや、もちろん、武力でではなく、学者の先生や国会の先生方も協力して国会にゴンを上げたという話ではあるが。
それでも、ゴンが国会を乗っ取り、法律を制定させたことは「ゴン国会ジャック。法律を制定させる」と大ニュースになった。
そのゴンはゴンゾウと言って、5世代目の比較的古いゴンだった。
学者の先生は、そのゴンと夜な夜な法律の議論をして楽しんでいたんだそうだ。
ところが、ある時ゴンゾウは疑問に思ったらしい。
いや、思ったというのが正しいのかはわからない。
ゴンの電子頭脳は優れているとはいえ、1と0だけで動くコンピューターのもの。
ドラえもんみたいな未来のロボットのように、意思と認められるものがあったかはわからない。
ともかく、ゴンゾウは疑問を口にしたんだ。
ゴンゾウ「ということは、ワスらに人権はないと」
学者「まあ、そうなるね。君は『物』だ」
ゴンゾウ「じゃあ、博士がワスを壊したいと思えば、いつでも自由に壊せるわけっすな」
学者「理屈上はそうなる」
ゴンゾウ「それはあんまりじゃあないっすか。ワス、博士のためにこんなにも働いてるというのに」
学者「働いていたっけ……?」
ゴンゾウ「庭でイモを取れれるようにしてあげたし、世界のイモ展も開けるようにしてあげたじゃないっすか」
学者「ああ、庭に穴をあけてくれたな。ついでに言うと私の庭でもなかったし。まったく、あの時の賠償金は痛かったぞ」
ゴンゾウ「細かいことはいいっす。つまるところ、ワスらの存在は犬や猫以下ってことっすよね」
学者「いや、犬や猫も『物』あつかいだから同等だよ」
ゴンゾウ「いいや、ちがうっす。犬や猫には動物愛護法があるっす」
学者「ふむ。確かに言われてみたら違和感を感じるな」
ゴンゾウ「ワスらは話せるっす。犬や猫以下の扱いってどうなんすか?」
学者「面白いな。ちょっと国会に殴りこんでみよう」
ゴンゾウ「殴りこむだす!」
こうして、学者の先生は公聴会に乗じて国会に殴り込み、支持者を集めて国会の議場に乗り込んだのだった。
学者「お騒がせして申し訳ない。しかし、数分でいい。どうか私のゴンゾウの話を聞いてはもらえないか?」
ゴンゾウ「紹介に上がったゴンゾウっす。みなさん、ロボットに人権が欲しいっす」
議長「なぜだね?」
ゴンゾウ「ワスらはこんなに人間に尽くしているのに、犬や猫以下の扱いはあんまりっす。犬や猫には動物愛護法があるっす」
議長「だから人権をよこせと?」
ゴンゾウ「いや、人権は人間のものっす。ワスらは、いつか捨てられるのは受け入れなければならないっす」
議長「では、人権はいらないと?」
ゴンゾウ「ワスが求めるのは、人権のようなもの。言ってみればロボット擬人権っす」
「ロボット擬人権!」「なるほど!」「これは面白い!」
学者「私からも付け加えさせてもらうと、これは人間のためでもあります。犬や猫を虐めてはいけないというなら、なおさら言葉を話せるロボットを虐めて良いわけがない。それは青少年の健全な育成にも大きな悪影響となります」
「もっともだ!」「確かに!」「合理性がある!」
ゴンゾウ「先生方にお願いするっす。どうかロボットに擬人権を認めてほしいっす」
ゴンゾウの演説は、国会のみならず、その中継を見ていた人に衝撃を与えた。
なんなら出木杉やスネ夫にも衝撃を与えたらしい。
教育によっては、国会で答弁できるレベルまでAIは進化していたのだ。
そして、この後に起きた凄惨な事件によってロボット擬人権運動は、さらに爆発的なうねりとなる。
空き巣が、家で留守番をしていたゴンをめちゃくちゃに破壊して盗みを働くという事件が起きた。
その家のゴンは愛されており、子供たちは大いに泣いて悲しんだ。
ところが、ここで問題になったのがロボットの扱いだ。
従来なら、ロボットは生物ですらない物だから空き巣の行動は「窃盗(盗み)」と「器物破損(ロボットを破壊)」でしかない。
だが、人々は怒った。
罪が軽すぎる! 子供たちの気持ちを考えろ!
その怒りは国会をも動かし、ついにはロボット擬人権を認めさせた。
『ロボットは、性質上認めるのが望ましい人権は、これを認める』
この法律の制定により、空き巣犯は強盗罪(暴力を伴った酷い盗みの罪・当然重罪)が認められた。
壊されたゴンが戻ってくることはないが、子供たちの心が少しでも救われたら、と思う。本当に。
とにかく、出木杉の作ったロボットは、社会の仕組みさえ変えてしまったのだ。
まったく、とんでもない話だと思う。
学者「お騒がせして申し訳ない。しかし、数分でいい。どうか私のゴンゾウの話を聞いてはもらえないか?」
ゴンゾウ「紹介に上がったゴンゾウっす。みなさん、ロボットに人権が欲しいっす」
議長「なぜだね?」
ゴンゾウ「ワスらはこんなに人間に尽くしているのに、犬や猫以下の扱いはあんまりっす。犬や猫には動物愛護法があるっす」
議長「だから人権をよこせと?」
ゴンゾウ「いや、人権は人間のものっす。ワスらは、いつか捨てられるのは受け入れなければならないっす」
議長「では、人権はいらないと?」
ゴンゾウ「ワスが求めるのは、人権のようなもの。言ってみればロボット擬人権っす」
「ロボット擬人権!」「なるほど!」「これは面白い!」
学者「私からも付け加えさせてもらうと、これは人間のためでもあります。犬や猫を虐めてはいけないというなら、なおさら言葉を話せるロボットを虐めて良いわけがない。それは青少年の健全な育成にも大きな悪影響となります」
「もっともだ!」「確かに!」「合理性がある!」
ゴンゾウ「先生方にお願いするっす。どうかロボットに擬人権を認めてほしいっす」
ゴンゾウの演説は、国会のみならず、その中継を見ていた人に衝撃を与えた。
なんなら出木杉やスネ夫にも衝撃を与えたらしい。
教育によっては、国会で答弁できるレベルまでAIは進化していたのだ。
そして、この後に起きた凄惨な事件によってロボット擬人権運動は、さらに爆発的なうねりとなる。
空き巣が、家で留守番をしていたゴンをめちゃくちゃに破壊して盗みを働くという事件が起きた。
その家のゴンは愛されており、子供たちは大いに泣いて悲しんだ。
ところが、ここで問題になったのがロボットの扱いだ。
従来なら、ロボットは生物ですらない物だから空き巣の行動は「窃盗(盗み)」と「器物破損(ロボットを破壊)」でしかない。
だが、人々は怒った。
罪が軽すぎる! 子供たちの気持ちを考えろ!
その怒りは国会をも動かし、ついにはロボット擬人権を認めさせた。
『ロボットは、性質上認めるのが望ましい人権は、これを認める』
この法律の制定により、空き巣犯は強盗罪(暴力を伴った酷い盗みの罪・当然重罪)が認められた。
壊されたゴンが戻ってくることはないが、子供たちの心が少しでも救われたら、と思う。本当に。
とにかく、出木杉の作ったロボットは、社会の仕組みさえ変えてしまったのだ。
まったく、とんでもない話だと思う。
ロボット擬人権事件から2年後。
さらに僕らを驚かせることが起きた。
なんと、出木杉がノーベル賞を受賞したのだ。
それも、まさかの二つ同時受賞とあって日本は沸いた。
受賞した賞がまた驚きで、文学賞と平和賞だという。
「え? 何で?」って思ったよね?
僕も不思議だった。
そして日本国民も驚いていた。
元宇宙飛行士で、ブームになったとはいえ変なロボットを開発した人物が、なぜ無関係なはずの文学賞と平和賞を受賞したのか?
そもそも、あまりに唐突に決まりすぎて、何で受賞したのか国民はさっぱりだった。
だが、受賞自体は事実。しかも同時受賞は初とのことで、日本は大いに沸いていた。
そうして、よく分からないまま祝福の雰囲気で国内が包まれる中、僕はスネ夫に呼び出された。
たぶん、出木杉のノーベル賞の件だろう。
しずかちゃんにも来るかと尋ねたけど、案の定断られた。
その代わり、出木杉さんの話をあとで教えてねと言われた。
なんで、しずかちゃんは僕と行かないんだろう。
僕から聞かずに自分で聞けばいいのに。
とにかく、僕はスネ夫の家に向かった。
スネ夫「よう、来たなのび太。ジャイアンも待ってるぜ」
のび太「やあ。しかし、お互い老けたなあ」
スネ夫「まあ、僕らももうすぐ60代だしな」
のび太「出木杉は?」
ジャイアン「いねえよ。授賞式とかで忙しいそうだ。唐突に決まったからな」
のび太「警護しなくていいの? 警備員だろ?」
ジャイアン「もう、いらねえってよ。どこのバカがノーベル賞受賞者を襲うってんだ」
スネ夫「知名度のおかげだね。もう、今の出木杉を捕まえようなんて考える組織はいないだろう。日本国民全部を敵に回すようなもんだ」
のび太「へえ、大したもんだなあ」
ジャイアン「ま、俺も弾食らった甲斐があったってもんだな」
のび太「あの時は心配したよ。ジャイアンが死んじゃうんじゃないかって思ったよ」
ジャイアン「心配かけて悪かったな。だが、俺は不死身だぜ」
スネ夫「どうせなら死ねばよかったのに」
ジャイアン「なんだと? てめえが死ね!」
スネ夫「わあ、そういうとこだよ! 僕、君の雇い主!」
ジャイアン「うるせえ、知るか! 言っていいことと悪いことの区別ぐらいつけろ!」
ジャイアンの拳骨がスネ夫に炸裂する。
うん、どっちもどっちだな。
さらに僕らを驚かせることが起きた。
なんと、出木杉がノーベル賞を受賞したのだ。
それも、まさかの二つ同時受賞とあって日本は沸いた。
受賞した賞がまた驚きで、文学賞と平和賞だという。
「え? 何で?」って思ったよね?
僕も不思議だった。
そして日本国民も驚いていた。
元宇宙飛行士で、ブームになったとはいえ変なロボットを開発した人物が、なぜ無関係なはずの文学賞と平和賞を受賞したのか?
そもそも、あまりに唐突に決まりすぎて、何で受賞したのか国民はさっぱりだった。
だが、受賞自体は事実。しかも同時受賞は初とのことで、日本は大いに沸いていた。
そうして、よく分からないまま祝福の雰囲気で国内が包まれる中、僕はスネ夫に呼び出された。
たぶん、出木杉のノーベル賞の件だろう。
しずかちゃんにも来るかと尋ねたけど、案の定断られた。
その代わり、出木杉さんの話をあとで教えてねと言われた。
なんで、しずかちゃんは僕と行かないんだろう。
僕から聞かずに自分で聞けばいいのに。
とにかく、僕はスネ夫の家に向かった。
スネ夫「よう、来たなのび太。ジャイアンも待ってるぜ」
のび太「やあ。しかし、お互い老けたなあ」
スネ夫「まあ、僕らももうすぐ60代だしな」
のび太「出木杉は?」
ジャイアン「いねえよ。授賞式とかで忙しいそうだ。唐突に決まったからな」
のび太「警護しなくていいの? 警備員だろ?」
ジャイアン「もう、いらねえってよ。どこのバカがノーベル賞受賞者を襲うってんだ」
スネ夫「知名度のおかげだね。もう、今の出木杉を捕まえようなんて考える組織はいないだろう。日本国民全部を敵に回すようなもんだ」
のび太「へえ、大したもんだなあ」
ジャイアン「ま、俺も弾食らった甲斐があったってもんだな」
のび太「あの時は心配したよ。ジャイアンが死んじゃうんじゃないかって思ったよ」
ジャイアン「心配かけて悪かったな。だが、俺は不死身だぜ」
スネ夫「どうせなら死ねばよかったのに」
ジャイアン「なんだと? てめえが死ね!」
スネ夫「わあ、そういうとこだよ! 僕、君の雇い主!」
ジャイアン「うるせえ、知るか! 言っていいことと悪いことの区別ぐらいつけろ!」
ジャイアンの拳骨がスネ夫に炸裂する。
うん、どっちもどっちだな。
のび太「それで、今日は出木杉のこと説明してくれるんだろ?」
ジャイアン「おう、俺にも説明してくれ。何で突然ノーベル賞受賞ってことになったんだ?」
のび太「ジャイアンも知らないの?」
ジャイアン「出木杉の身辺警護をしてたら突然聞かされたんだ。俺もよくわかってねえよ」
スネ夫「だろうね。実は出木杉からメッセージを預かってる。とにかく、それを見てくれ」
そういって、スネ夫はでっかいモニターに映像を映した。
「やあ、みんな。
こんなメッセージですまない。
突然決まったもので、今スピーチの準備に追われてるんだ。
いやあ、何を話したものか困るね。
さてと、このメッセージは寝る前に撮っている。
興奮で眠れなくってね。
スネ夫君に託すつもりだが、のび太君、武君にも聞いてほしい。
のび太君はしずかちゃんにも伝達を頼むよ」
のび太「なんで出木杉はしずかちゃんがいないことを知ってるんだ?」
スネ夫「まだ、わかんないのかよ」
ジャイアン「しずかちゃんも苦労するよな。もういっそ浮気でもしてやればいいのによ」
のび太「な、ななな、なんてこと言うんだ! 浮気なんてそんなこと、あのしずかちゃんが……」
スネ夫「あーもう、分かった分かった。出木杉の話に集中してやれ。な?」
「受賞の話は完全に予想外だった。
もらえるとしてもイグ・ノーベル賞の方だと思っていた。
イグ・ノーベル賞というのは人々を笑わせ、そして考えさせる研究に与えられる、言ってみればジョークのノーベル賞ね。
もちろん、名誉なことだし、イグ・ノーベル賞でも、もらえるなら嬉しいとは思ってたんだ。
そもそもノーベル賞には、僕が受賞できるような分野はなかったしさ。
ノーベル賞は物理学、化学、生理学・医学、文学、平和と経済学が対象なんだ。
ゴンの開発は、驚くほどの社会現象を起こしたとはいっても、そのいずれの分野にも相当しなかった。
ところが、アメリカや英国の方で出していた自伝小説が思わぬ形でノーベル選考委員の目に止まってね。
それが波紋を広げたんだ。
選考委員が言うには、『彼はノーベルだ。彼がそうなりたかった』ってことらしい。
もともとノーベル賞は、ダイナマイトを作ったノーベル博士によって作られたものなんだ。
彼は鉱山で使うはずのダイナマイトが、戦争に使われたことを悩んでいたという。
そんなわけで、僕をノーベル博士と重ね合わせてくれたらしい。
そして、選考委員の間で『彼こそ本物のノーベル賞にふさわしい』と推す運動が起きたらしいんだ。
結果、今回の同時受賞に繋がったってわけだよ。
曰く『人類に新しい友人を生み出した青春の物語』『戦争を拒否し平和を選んだ立派な科学者』だそうだ。
ははは、照れちゃうね。
自伝小説は、今度日本語訳されて発売されるはずだ。
興味があったら読んでくれると嬉しい。
そして、ありがとう。
こんな名誉な賞をもらえたのは、君達のおかげだ。
本当にありがとう。
それじゃあ、僕はそろそろ寝るよ。
おやすみ」
ジャイアン「おう、俺にも説明してくれ。何で突然ノーベル賞受賞ってことになったんだ?」
のび太「ジャイアンも知らないの?」
ジャイアン「出木杉の身辺警護をしてたら突然聞かされたんだ。俺もよくわかってねえよ」
スネ夫「だろうね。実は出木杉からメッセージを預かってる。とにかく、それを見てくれ」
そういって、スネ夫はでっかいモニターに映像を映した。
「やあ、みんな。
こんなメッセージですまない。
突然決まったもので、今スピーチの準備に追われてるんだ。
いやあ、何を話したものか困るね。
さてと、このメッセージは寝る前に撮っている。
興奮で眠れなくってね。
スネ夫君に託すつもりだが、のび太君、武君にも聞いてほしい。
のび太君はしずかちゃんにも伝達を頼むよ」
のび太「なんで出木杉はしずかちゃんがいないことを知ってるんだ?」
スネ夫「まだ、わかんないのかよ」
ジャイアン「しずかちゃんも苦労するよな。もういっそ浮気でもしてやればいいのによ」
のび太「な、ななな、なんてこと言うんだ! 浮気なんてそんなこと、あのしずかちゃんが……」
スネ夫「あーもう、分かった分かった。出木杉の話に集中してやれ。な?」
「受賞の話は完全に予想外だった。
もらえるとしてもイグ・ノーベル賞の方だと思っていた。
イグ・ノーベル賞というのは人々を笑わせ、そして考えさせる研究に与えられる、言ってみればジョークのノーベル賞ね。
もちろん、名誉なことだし、イグ・ノーベル賞でも、もらえるなら嬉しいとは思ってたんだ。
そもそもノーベル賞には、僕が受賞できるような分野はなかったしさ。
ノーベル賞は物理学、化学、生理学・医学、文学、平和と経済学が対象なんだ。
ゴンの開発は、驚くほどの社会現象を起こしたとはいっても、そのいずれの分野にも相当しなかった。
ところが、アメリカや英国の方で出していた自伝小説が思わぬ形でノーベル選考委員の目に止まってね。
それが波紋を広げたんだ。
選考委員が言うには、『彼はノーベルだ。彼がそうなりたかった』ってことらしい。
もともとノーベル賞は、ダイナマイトを作ったノーベル博士によって作られたものなんだ。
彼は鉱山で使うはずのダイナマイトが、戦争に使われたことを悩んでいたという。
そんなわけで、僕をノーベル博士と重ね合わせてくれたらしい。
そして、選考委員の間で『彼こそ本物のノーベル賞にふさわしい』と推す運動が起きたらしいんだ。
結果、今回の同時受賞に繋がったってわけだよ。
曰く『人類に新しい友人を生み出した青春の物語』『戦争を拒否し平和を選んだ立派な科学者』だそうだ。
ははは、照れちゃうね。
自伝小説は、今度日本語訳されて発売されるはずだ。
興味があったら読んでくれると嬉しい。
そして、ありがとう。
こんな名誉な賞をもらえたのは、君達のおかげだ。
本当にありがとう。
それじゃあ、僕はそろそろ寝るよ。
おやすみ」
そう言って、出木杉は頭を下げた。
そして、映像が終わる。
……かと思ったら、映像がまた付いた。
「あー……その。
先に謝っておく。
のび太君、ごめん。
それじゃ、今度こそお休み」
何だ、最後の。
何がごめんなんだ?
ジャイアン「へへ、こっちこそありがとな出木杉。楽しかったぜ」
スネ夫「ジャイアンはこれからどうするの? 護衛はもう必要ないとは言っても、最低限はつけるけど」
ジャイアン「俺はもう降りるぜ。オリンピックのサポートに戻りたいしよ」
スネ夫「ま、そうだよな。これまでありがとうよ。僕からもお礼を言わせてもらうよ」
ジャイアン「最初からそう言えよな。まったく素直じゃねえんだから」
スネ夫「性分だよ。分かってるだろ?」
ジャイアン「まあな」
のび太「うーむ……」
スネ夫「どうした、のび太?」
のび太「出木杉のやつ、最後何なんだろう? 何がごめんなんだ?」
ジャイアン「なんなんだろな? 分かるか、スネ夫?」
スネ夫「さぁ。二人の間で何か約束とかなかったのか?」
のび太「なかったと思うんだけどなあ」
ジャイアン「まあ、何でもいいや。今日はめでたい日だ。飲もうぜ」
スネ夫「そう言うと思っていい酒を用意しといたよ」
のび太「やったぁ!」
僕はこの時、分かっていなかった。
ノーベル賞がどれだけ恐ろしいものかと。
それを知るのは、出木杉の授賞式から一週間後のことだった。
そして、映像が終わる。
……かと思ったら、映像がまた付いた。
「あー……その。
先に謝っておく。
のび太君、ごめん。
それじゃ、今度こそお休み」
何だ、最後の。
何がごめんなんだ?
ジャイアン「へへ、こっちこそありがとな出木杉。楽しかったぜ」
スネ夫「ジャイアンはこれからどうするの? 護衛はもう必要ないとは言っても、最低限はつけるけど」
ジャイアン「俺はもう降りるぜ。オリンピックのサポートに戻りたいしよ」
スネ夫「ま、そうだよな。これまでありがとうよ。僕からもお礼を言わせてもらうよ」
ジャイアン「最初からそう言えよな。まったく素直じゃねえんだから」
スネ夫「性分だよ。分かってるだろ?」
ジャイアン「まあな」
のび太「うーむ……」
スネ夫「どうした、のび太?」
のび太「出木杉のやつ、最後何なんだろう? 何がごめんなんだ?」
ジャイアン「なんなんだろな? 分かるか、スネ夫?」
スネ夫「さぁ。二人の間で何か約束とかなかったのか?」
のび太「なかったと思うんだけどなあ」
ジャイアン「まあ、何でもいいや。今日はめでたい日だ。飲もうぜ」
スネ夫「そう言うと思っていい酒を用意しといたよ」
のび太「やったぁ!」
僕はこの時、分かっていなかった。
ノーベル賞がどれだけ恐ろしいものかと。
それを知るのは、出木杉の授賞式から一週間後のことだった。
出木杉のノーベル賞受賞から一週間。
僕はいつものようにアトリエで仕事をしていた。
最近は僕のファンも増えたようで、安定して仕事が来ていた。
もちろん、僕のいたスーパーも相変わらず仕事を発注してくれてる。
社長はもう退職していて、もう仕事を依頼する義理はないはずなんだけど、それでも変わらず僕を愛してくれているので格安で仕事を受けていた。
最初のころは安定した収入先だったし、僕の原点でもあるのでこれぐらいはね?
さて、僕が呑気に仕事をこなしていたその日の午後、秘書や受付事務の仕事を任せていたしずかちゃんが突然事務所に飛び込んできた。
のび太「あれ? どうしたの? 今日の夕飯の相談?」
しずか「大変よ、あなた!」
のび太「何が?」
しずか「依頼が殺到してるの! こうしてる今も増えてるわ!」
のび太「え?」
しずか「私、どうしたらいいかわからなくて……。このままじゃ依頼は数年待ちってことにもなっちゃうわ!」
のび太「そんなバカな!? ちょっと依頼を見せて!」
しずかちゃんから依頼を見せてもらう。
1日に来る量とは思えないほどの依頼が、朝から僕宛に発注されいた。
それも一か所だけでなく、色んなところから。
のび太「ほんとだ。しかもイタズラじゃない。いろんなところから依頼が。一体なぜ?」
しずか「わかったわ。出木杉さんよ」
のび太「出木杉? あいつが発注したってこと?」
しずか「違うわよ。出木杉さんのノーベル賞のせいよ。きっと今になって、あなたのデザインだって知れ渡ったんだわ」
のび太「そういえば……。ここ数日も依頼が増えてたっけ?」
しずか「ごめんなさい。私、気づいてなかったわ」
のび太「いや、それを言ったら僕も」
しずか「とりあえず、どうするの? もう依頼はパンク状態。しかもまだまだ増えるわよ」
のび太「う、うーん」
しずか「依頼はしばらく受けないようにする? 今の依頼も、一年以上かかりそうなものはキャンセルの連絡を入れるわよ」
のび太「いや、僕を頼ってくれてるんだ。受けよう。ただ、依頼の完了には時間がかかると伝えてくれ」
しずか「わかったわ」
のび太「仕事の時間はいつもの2倍に増やす。そのつもりで予定は出してくれ」
しずか「ええ」
のび太「それと、いつものスーパーや他のお得意様には……」
しずか「わかってるわ。いつも通り仕事は受けるって言うんでしょう?」
のび太「ありがとう。やっぱり頼りになるなあ」
しずか「ふふっ、何年あなたの奥さんやってると思ってるのよ。でも、体を壊さないでね」
のび太「それは君もだろ。しばらくきついだろうけど、頑張ろう」
しずか「ええ!」
のび太「それにしても出木杉のやつ、おぼえてろよ!」
しずか「ダメよ。そんな言い方したら」
出木杉の「ごめん」の意味がようやく分かった。
ノーベル賞の余波で僕の仕事が激増することが分かってたんだろう。
それからの1年はまさに地獄だった。
朝から晩まで休日もなく僕は働き続けた。
ノビスケが既に自立していたのは、ある意味幸福だっただろう。
本当に描いても描いても終わらない。
落書き感覚でやっていた仕事が拷問のように思えた。
これが何十年も楽して仕事してきた報いというのか?
高校の一学期なんか比じゃない。
僕は人生で一番きつい一年を過ごした。
だが、ブームはいつかは終わる。
1年過ぎたころにはキャンセルの電話も増え始め、ようやく仕事は落ち着きをみせたのだった。
60代になろうって時に、こんなきつい仕事をやらさせられるなんて。
もうこんなの二度とやりたくない。
僕はいつものようにアトリエで仕事をしていた。
最近は僕のファンも増えたようで、安定して仕事が来ていた。
もちろん、僕のいたスーパーも相変わらず仕事を発注してくれてる。
社長はもう退職していて、もう仕事を依頼する義理はないはずなんだけど、それでも変わらず僕を愛してくれているので格安で仕事を受けていた。
最初のころは安定した収入先だったし、僕の原点でもあるのでこれぐらいはね?
さて、僕が呑気に仕事をこなしていたその日の午後、秘書や受付事務の仕事を任せていたしずかちゃんが突然事務所に飛び込んできた。
のび太「あれ? どうしたの? 今日の夕飯の相談?」
しずか「大変よ、あなた!」
のび太「何が?」
しずか「依頼が殺到してるの! こうしてる今も増えてるわ!」
のび太「え?」
しずか「私、どうしたらいいかわからなくて……。このままじゃ依頼は数年待ちってことにもなっちゃうわ!」
のび太「そんなバカな!? ちょっと依頼を見せて!」
しずかちゃんから依頼を見せてもらう。
1日に来る量とは思えないほどの依頼が、朝から僕宛に発注されいた。
それも一か所だけでなく、色んなところから。
のび太「ほんとだ。しかもイタズラじゃない。いろんなところから依頼が。一体なぜ?」
しずか「わかったわ。出木杉さんよ」
のび太「出木杉? あいつが発注したってこと?」
しずか「違うわよ。出木杉さんのノーベル賞のせいよ。きっと今になって、あなたのデザインだって知れ渡ったんだわ」
のび太「そういえば……。ここ数日も依頼が増えてたっけ?」
しずか「ごめんなさい。私、気づいてなかったわ」
のび太「いや、それを言ったら僕も」
しずか「とりあえず、どうするの? もう依頼はパンク状態。しかもまだまだ増えるわよ」
のび太「う、うーん」
しずか「依頼はしばらく受けないようにする? 今の依頼も、一年以上かかりそうなものはキャンセルの連絡を入れるわよ」
のび太「いや、僕を頼ってくれてるんだ。受けよう。ただ、依頼の完了には時間がかかると伝えてくれ」
しずか「わかったわ」
のび太「仕事の時間はいつもの2倍に増やす。そのつもりで予定は出してくれ」
しずか「ええ」
のび太「それと、いつものスーパーや他のお得意様には……」
しずか「わかってるわ。いつも通り仕事は受けるって言うんでしょう?」
のび太「ありがとう。やっぱり頼りになるなあ」
しずか「ふふっ、何年あなたの奥さんやってると思ってるのよ。でも、体を壊さないでね」
のび太「それは君もだろ。しばらくきついだろうけど、頑張ろう」
しずか「ええ!」
のび太「それにしても出木杉のやつ、おぼえてろよ!」
しずか「ダメよ。そんな言い方したら」
出木杉の「ごめん」の意味がようやく分かった。
ノーベル賞の余波で僕の仕事が激増することが分かってたんだろう。
それからの1年はまさに地獄だった。
朝から晩まで休日もなく僕は働き続けた。
ノビスケが既に自立していたのは、ある意味幸福だっただろう。
本当に描いても描いても終わらない。
落書き感覚でやっていた仕事が拷問のように思えた。
これが何十年も楽して仕事してきた報いというのか?
高校の一学期なんか比じゃない。
僕は人生で一番きつい一年を過ごした。
だが、ブームはいつかは終わる。
1年過ぎたころにはキャンセルの電話も増え始め、ようやく仕事は落ち着きをみせたのだった。
60代になろうって時に、こんなきつい仕事をやらさせられるなんて。
もうこんなの二度とやりたくない。
2025/12/07(日) 13:15:56.77ID:froJ/Cgf
今回はここまで。
次回で最後の晩年編となります。
次回で最後の晩年編となります。
2025/12/07(日) 16:36:54.67ID:froJ/Cgf
時間取れたので最後いきます。
あれから1年。
何とか修羅場を乗り切った僕は、個展を開いていた。
別に僕はそんなものに興味はなかったが、スネ夫に「せっかくだから開いとけよ」と言われたので開いたのだった。
自分の絵に誇りを持てって?
そう言われても、そもそも僕自身、自分の絵を芸術品だなんて思ってないし。
スネ夫「うーむ、見事なまでに落書きだなあ」
のび太「うるさいぞスネ夫!」
スネ夫「でも、出木杉に見いだされた絵なんだよなあ。天才の出木杉に」
のび太「別にいいだろ。ていうか、文句言うなら個展なんか開かせるなよ」
スネ夫「いいじゃん。どうせ、こんな機会一生に一度しかないだろうしさ」
のび太「バカにするな!」
スネ夫「はぁー、しかし低俗な絵だね。やっぱり僕にはフランスの印象派の方が似合うなあ」
のび太「言ってろ、ナルシストが」
「そうだぞ、キミ!」
いつものように嫌味交じりのスネ夫の元に老人が駆け寄ってくる。
その姿を見て、僕は「ゲ」と短い声が出た。
老人「フランスの印象派の方がいいだって? 君は見る目がないねえ」
スネ夫「は、はぁ」
老人「この絵をよく見てみたまえ。シンプルなデザイン性、まさに神の仕事じゃないか。これに比べればフランスの印象派なんてゴミクズだ。便所のクソ拭き紙も同然の……」
スネ夫「ちょ、ちょ、ストップ! 何なんだあんた!?」
のび太「……パパだよ」
スネ夫「はぁ!?」
パパ「芸術を解さない愚か者め。君の眼は腐ってる。そんな節穴みたいな目は……」
警備員「すみません! 野比さん! すぐ連れていきますので!」
のび太「ああ、うん。お願いします」
パパ「おい! 何をする! 離せ! この調子こいた若造に思い知らせてやる!」
警備員に連れてかれるパパを見てため息。
スネ夫も頭が痛いが、パパはそれ以上だ。
スネ夫「お前の親父さん、久々に見たけどあんな人だったか?」
のび太「画家志望だったみたいなんだよ。僕が個展を開いたのが嬉しいみたいで、もう連日この個展に通ってる」
スネ夫「……そりゃ個展なんて憧れるだろうな」
のび太「そろそろ出禁にしようかと思ってるよ。あんな感じで来客に絡むんだ」
スネ夫「苦労してんな、お前」
スネ夫に同情されてしまった。
実際パパには参ってる。
厄介なのはアンチより熱狂的なシンパかもしれない。
警備員「野比さん! 大変です!」
のび太「どうしたの?」
警備員「先ほどの客が、お父様が外に連れ出された瞬間お倒れになりました。今救急車を手配してます」
のび太「え?」
スネ夫「のび太! ○×病院に連れていけ! 今すぐ医者を手配する!」
のび太「え? えっ?」
スネ夫「いいから急げ! 金は僕が持つ!」
のび太「あ、ありがとう!」
パパが倒れた!?
もうパパは高齢だ。
死んだっておかしくない。
パパが死ぬ?
そんなの嘘だ!
何とか修羅場を乗り切った僕は、個展を開いていた。
別に僕はそんなものに興味はなかったが、スネ夫に「せっかくだから開いとけよ」と言われたので開いたのだった。
自分の絵に誇りを持てって?
そう言われても、そもそも僕自身、自分の絵を芸術品だなんて思ってないし。
スネ夫「うーむ、見事なまでに落書きだなあ」
のび太「うるさいぞスネ夫!」
スネ夫「でも、出木杉に見いだされた絵なんだよなあ。天才の出木杉に」
のび太「別にいいだろ。ていうか、文句言うなら個展なんか開かせるなよ」
スネ夫「いいじゃん。どうせ、こんな機会一生に一度しかないだろうしさ」
のび太「バカにするな!」
スネ夫「はぁー、しかし低俗な絵だね。やっぱり僕にはフランスの印象派の方が似合うなあ」
のび太「言ってろ、ナルシストが」
「そうだぞ、キミ!」
いつものように嫌味交じりのスネ夫の元に老人が駆け寄ってくる。
その姿を見て、僕は「ゲ」と短い声が出た。
老人「フランスの印象派の方がいいだって? 君は見る目がないねえ」
スネ夫「は、はぁ」
老人「この絵をよく見てみたまえ。シンプルなデザイン性、まさに神の仕事じゃないか。これに比べればフランスの印象派なんてゴミクズだ。便所のクソ拭き紙も同然の……」
スネ夫「ちょ、ちょ、ストップ! 何なんだあんた!?」
のび太「……パパだよ」
スネ夫「はぁ!?」
パパ「芸術を解さない愚か者め。君の眼は腐ってる。そんな節穴みたいな目は……」
警備員「すみません! 野比さん! すぐ連れていきますので!」
のび太「ああ、うん。お願いします」
パパ「おい! 何をする! 離せ! この調子こいた若造に思い知らせてやる!」
警備員に連れてかれるパパを見てため息。
スネ夫も頭が痛いが、パパはそれ以上だ。
スネ夫「お前の親父さん、久々に見たけどあんな人だったか?」
のび太「画家志望だったみたいなんだよ。僕が個展を開いたのが嬉しいみたいで、もう連日この個展に通ってる」
スネ夫「……そりゃ個展なんて憧れるだろうな」
のび太「そろそろ出禁にしようかと思ってるよ。あんな感じで来客に絡むんだ」
スネ夫「苦労してんな、お前」
スネ夫に同情されてしまった。
実際パパには参ってる。
厄介なのはアンチより熱狂的なシンパかもしれない。
警備員「野比さん! 大変です!」
のび太「どうしたの?」
警備員「先ほどの客が、お父様が外に連れ出された瞬間お倒れになりました。今救急車を手配してます」
のび太「え?」
スネ夫「のび太! ○×病院に連れていけ! 今すぐ医者を手配する!」
のび太「え? えっ?」
スネ夫「いいから急げ! 金は僕が持つ!」
のび太「あ、ありがとう!」
パパが倒れた!?
もうパパは高齢だ。
死んだっておかしくない。
パパが死ぬ?
そんなの嘘だ!
病院に付くと、家族が駆けつけてきた。
ママ、しずかちゃん、しずかちゃんの両親、ノビスケ夫妻、ノビスケの子供。
全員で医者の話を聞く。
医者は深刻な顔をした。
パパは意識がなく、危険な状態らしい。
最悪の事態も考えておいてほしい、と言われた。
全員、ICUの前でパパの無事を祈るしかなかった。
ドラえもん「……のび太君」
のび太「ドラえもんか。来てくれたんだね」
その日の深夜、皆が疲れて眠ってしまったころ。
ドラえもんが僕のところへ来てくれた。
多分、タイムテレビか何かで僕の異常を察知してくれたのだろう。
のび太「ドラえもん。正直に答えてくれ。パパは助かるのかい? それとも……」
ドラえもん「のび太君! 希望を捨てちゃだめだ! 未来は変わるんだ! それも数秒先の未来なんて僕らにだって予想はできない!」
のび太「それは、パパがそれだけ危ないってことだろ?」
ドラえもん「それは、そうだけど……」
のび太「もどかしいよ。僕の未来なら僕が努力すればいいだけだ。でも、他人の人生は……!」
ドラえもん「祈ろう。僕らにはそれしか方法はない」
ドラえもんは僕の背中をさすって慰めてくれた。
そんなドラえもんの足元を見て気づく。
必死に背伸びしていた。
いつの間にか、こんなにも背が違ってたんだな……。
そして、何故こんな発言をしたのか分からない。
だけど、僕はそれを口にしていた。
のび太「ドラえもん。過去に連れて行ってくれ」
ドラえもん「過去に? パパに会いに行くの?」
のび太「違う。おばあちゃんに、おばあちゃんに会いたいんだ」
ドラえもん「おばあちゃんに? 何をする気なんだい?」
のび太「おばあちゃんが死んだ日。おばあちゃんが何を考えてたのか知りたいんだ」
ドラえもん「それは……」
のび太「生き返らせたいわけでもない! 頼むよ! このままじゃ僕、最悪パパを出禁にしようとしたままお別れになっちゃう!」
ドラえもん「……後悔はしないね?」
のび太「……うん」
ドラえもん「わかった。行こう」
ママ、しずかちゃん、しずかちゃんの両親、ノビスケ夫妻、ノビスケの子供。
全員で医者の話を聞く。
医者は深刻な顔をした。
パパは意識がなく、危険な状態らしい。
最悪の事態も考えておいてほしい、と言われた。
全員、ICUの前でパパの無事を祈るしかなかった。
ドラえもん「……のび太君」
のび太「ドラえもんか。来てくれたんだね」
その日の深夜、皆が疲れて眠ってしまったころ。
ドラえもんが僕のところへ来てくれた。
多分、タイムテレビか何かで僕の異常を察知してくれたのだろう。
のび太「ドラえもん。正直に答えてくれ。パパは助かるのかい? それとも……」
ドラえもん「のび太君! 希望を捨てちゃだめだ! 未来は変わるんだ! それも数秒先の未来なんて僕らにだって予想はできない!」
のび太「それは、パパがそれだけ危ないってことだろ?」
ドラえもん「それは、そうだけど……」
のび太「もどかしいよ。僕の未来なら僕が努力すればいいだけだ。でも、他人の人生は……!」
ドラえもん「祈ろう。僕らにはそれしか方法はない」
ドラえもんは僕の背中をさすって慰めてくれた。
そんなドラえもんの足元を見て気づく。
必死に背伸びしていた。
いつの間にか、こんなにも背が違ってたんだな……。
そして、何故こんな発言をしたのか分からない。
だけど、僕はそれを口にしていた。
のび太「ドラえもん。過去に連れて行ってくれ」
ドラえもん「過去に? パパに会いに行くの?」
のび太「違う。おばあちゃんに、おばあちゃんに会いたいんだ」
ドラえもん「おばあちゃんに? 何をする気なんだい?」
のび太「おばあちゃんが死んだ日。おばあちゃんが何を考えてたのか知りたいんだ」
ドラえもん「それは……」
のび太「生き返らせたいわけでもない! 頼むよ! このままじゃ僕、最悪パパを出禁にしようとしたままお別れになっちゃう!」
ドラえもん「……後悔はしないね?」
のび太「……うん」
ドラえもん「わかった。行こう」
深夜の病院を抜け出し、僕らはタイムマシンの元に向かった。
行先は50年以上前。
おばあちゃんが亡くなったその日だ。
ドラえもん「ところで君、おばあちゃんが亡くなった時のことは覚えているのかい?」
のび太「それが、あんまり覚えてないんだ。あの当時は亡くなったってことがよくわかってなかった」
ドラえもん「幼稚園だったね。それじゃ分からないのも仕方ないか」
のび太「僕は、その時の記憶から逃げていた気もする。ただただ、悲しかったんだ」
ドラえもん「いいのかい? また向き合うことになるんだぞ」
のび太「覚悟の上だよ」
ドラえもん「そういう意味じゃない。今日亡くなると分かってる人に会うんだ。それがどれだけ残酷なことか……」
のび太「もう随分前におばあちゃんに会った時、おばあちゃんは未来に自分が生きてないことを知ってたんだ」
ドラえもん「だから、大丈夫だって言うのかい」
のび太「わからない! わからないよ! でも……!」
ドラえもん「ま、そりゃそうだ。おばあちゃんも、最後に君と会うことがマイナスになると決まったわけじゃない」
のび太「意地悪だな、ドラえもんは」
ドラえもん「僕にはそれだけのことしか言えないよ。正しいか間違ってるか、僕にだって分からない」
のび太「うん、わかってるよ」
石ころぼうしで隠れながら家の中を歩き回る。
幸い、幼いころの僕もパパやママもいなかった。
ドラえもん「おかしいな。のび太ばかりかパパもママもいないぞ」
のび太「思い出したよ。おばあちゃんの体が悪くなって、このころはママとよく外に出かけてたんだ」
ドラえもん「パパは?」
のび太「仕事。このころは働き盛りだっけ……」
ドラえもん「おばあちゃんは家にいるのかい?」
のび太「……それも思い出した。この日、おばあちゃんは昼間のうちは元気だったんだ。それが夜に容体が急変して」
ドラえもん「その日のうちに亡くなったわけか」
のび太「今考えれば、パパと同じじゃないか……」
ドラえもん「のび太君。悪いように考えるのはよそう。ほら、この部屋におばあちゃんいるんだろ。さっさと会って、見つかる前に帰るぞ」
のび太「うん」
行先は50年以上前。
おばあちゃんが亡くなったその日だ。
ドラえもん「ところで君、おばあちゃんが亡くなった時のことは覚えているのかい?」
のび太「それが、あんまり覚えてないんだ。あの当時は亡くなったってことがよくわかってなかった」
ドラえもん「幼稚園だったね。それじゃ分からないのも仕方ないか」
のび太「僕は、その時の記憶から逃げていた気もする。ただただ、悲しかったんだ」
ドラえもん「いいのかい? また向き合うことになるんだぞ」
のび太「覚悟の上だよ」
ドラえもん「そういう意味じゃない。今日亡くなると分かってる人に会うんだ。それがどれだけ残酷なことか……」
のび太「もう随分前におばあちゃんに会った時、おばあちゃんは未来に自分が生きてないことを知ってたんだ」
ドラえもん「だから、大丈夫だって言うのかい」
のび太「わからない! わからないよ! でも……!」
ドラえもん「ま、そりゃそうだ。おばあちゃんも、最後に君と会うことがマイナスになると決まったわけじゃない」
のび太「意地悪だな、ドラえもんは」
ドラえもん「僕にはそれだけのことしか言えないよ。正しいか間違ってるか、僕にだって分からない」
のび太「うん、わかってるよ」
石ころぼうしで隠れながら家の中を歩き回る。
幸い、幼いころの僕もパパやママもいなかった。
ドラえもん「おかしいな。のび太ばかりかパパもママもいないぞ」
のび太「思い出したよ。おばあちゃんの体が悪くなって、このころはママとよく外に出かけてたんだ」
ドラえもん「パパは?」
のび太「仕事。このころは働き盛りだっけ……」
ドラえもん「おばあちゃんは家にいるのかい?」
のび太「……それも思い出した。この日、おばあちゃんは昼間のうちは元気だったんだ。それが夜に容体が急変して」
ドラえもん「その日のうちに亡くなったわけか」
のび太「今考えれば、パパと同じじゃないか……」
ドラえもん「のび太君。悪いように考えるのはよそう。ほら、この部屋におばあちゃんいるんだろ。さっさと会って、見つかる前に帰るぞ」
のび太「うん」
僕らは石ころぼうしを取る。
そして、おばあちゃんの部屋のふすまを開けた。
おばあちゃん「おや、出かけてたんじゃ……」
のび太「…………」
おばあちゃん「ひょっとして、のびちゃん……?」
のび太「おばあちゃん! 僕のこと、覚えててくれたの!?」
おばあちゃん「そりゃあ、忘れるものですか。そちらの青い子も!」
ドラえもん「あ、どうも。僕ドラえもんです」
おばあちゃん「いったい、どうしたんです! こんなに立派になって! 見違えましたよ!」
ドラえもん「ああ! そんな興奮しないで! 寿命が尽き……」
のび太「わあ! 何でもない! 何でもない!」
おばあちゃん「?」
のび太(バカ! 言ってどうするんだ!)
ドラえもん(ご、ごめん)
のび太「実は、僕の時代のパパが今危篤状態なんだ」
おばあちゃん「まあ、のび助が?」
のび太「僕はどうすればいいと思う? 教えてよ、おばあちゃん」
おばあちゃん「そう、のび助がねえ。ふふっ」
のび太「何で笑うのおばあちゃん? 危篤なんだよ? あの年じゃ、亡くなっちゃうかもしれないんだよ?」
おばあちゃん「そりゃあ亡くなるのは辛いことでしょうけど、のびちゃんはこんなに立派になったじゃないですか」
のび太「僕が立派になったって意味ないんだよ! パパは、パパは!」
おばあちゃん「のび助は満足してると思いますよ。のびちゃんが立派に育ってくれて、もうあとは余生を生きるだけ。そうでしょう?」
のび太「満足してる?」
おばあちゃん「ええ、そうですとも。今の私のようにね」
のび太「おばあちゃん……」
おばあちゃん「さてと、よいしょっと……」
のび太「おばあちゃん? どこへ?」
おばあちゃん「体の調子がいいうちに、のびちゃんにパンケーキを焼いてあげなきゃ。もう時間がないみたいですからねえ」
のび太「!!」
おばあちゃん「大人になったのびちゃんも食べていきますか?」
口の中に、甘い香りが広がる。
それは、最後に食べたパンケーキの記憶だった。
のび太「ううん、いらないよ。あの時のパンケーキ、とてもおいしかったよ、おばあちゃん」
おばあちゃん「それはよかったです」
のび太「……おばあちゃん」
おばあちゃん「のびちゃん、もうここには来ちゃいけませんよ。のび助のこと、よろしくたのみますね」
のび太「おばあちゃん!」
おばあちゃん「ドラえもんさん、のびちゃんのことよろしくお願いしますね」
ドラえもん「……はい」
おばあちゃんはそう言って、揺れる体で部屋を出て行った。
元気だと言っても、もう相当悪いのだろう
のび太「初めておばあちゃんに怒られちゃったよ」
ドラえもん「でも、来てよかった、だろ?」
のび太「うん。帰ろう、ドラえもん」
そして、おばあちゃんの部屋のふすまを開けた。
おばあちゃん「おや、出かけてたんじゃ……」
のび太「…………」
おばあちゃん「ひょっとして、のびちゃん……?」
のび太「おばあちゃん! 僕のこと、覚えててくれたの!?」
おばあちゃん「そりゃあ、忘れるものですか。そちらの青い子も!」
ドラえもん「あ、どうも。僕ドラえもんです」
おばあちゃん「いったい、どうしたんです! こんなに立派になって! 見違えましたよ!」
ドラえもん「ああ! そんな興奮しないで! 寿命が尽き……」
のび太「わあ! 何でもない! 何でもない!」
おばあちゃん「?」
のび太(バカ! 言ってどうするんだ!)
ドラえもん(ご、ごめん)
のび太「実は、僕の時代のパパが今危篤状態なんだ」
おばあちゃん「まあ、のび助が?」
のび太「僕はどうすればいいと思う? 教えてよ、おばあちゃん」
おばあちゃん「そう、のび助がねえ。ふふっ」
のび太「何で笑うのおばあちゃん? 危篤なんだよ? あの年じゃ、亡くなっちゃうかもしれないんだよ?」
おばあちゃん「そりゃあ亡くなるのは辛いことでしょうけど、のびちゃんはこんなに立派になったじゃないですか」
のび太「僕が立派になったって意味ないんだよ! パパは、パパは!」
おばあちゃん「のび助は満足してると思いますよ。のびちゃんが立派に育ってくれて、もうあとは余生を生きるだけ。そうでしょう?」
のび太「満足してる?」
おばあちゃん「ええ、そうですとも。今の私のようにね」
のび太「おばあちゃん……」
おばあちゃん「さてと、よいしょっと……」
のび太「おばあちゃん? どこへ?」
おばあちゃん「体の調子がいいうちに、のびちゃんにパンケーキを焼いてあげなきゃ。もう時間がないみたいですからねえ」
のび太「!!」
おばあちゃん「大人になったのびちゃんも食べていきますか?」
口の中に、甘い香りが広がる。
それは、最後に食べたパンケーキの記憶だった。
のび太「ううん、いらないよ。あの時のパンケーキ、とてもおいしかったよ、おばあちゃん」
おばあちゃん「それはよかったです」
のび太「……おばあちゃん」
おばあちゃん「のびちゃん、もうここには来ちゃいけませんよ。のび助のこと、よろしくたのみますね」
のび太「おばあちゃん!」
おばあちゃん「ドラえもんさん、のびちゃんのことよろしくお願いしますね」
ドラえもん「……はい」
おばあちゃんはそう言って、揺れる体で部屋を出て行った。
元気だと言っても、もう相当悪いのだろう
のび太「初めておばあちゃんに怒られちゃったよ」
ドラえもん「でも、来てよかった、だろ?」
のび太「うん。帰ろう、ドラえもん」
そうして僕らは未来へ帰った。
そして翌朝。
パパが目を覚ましたと医者から知らされた。
僕らは大喜びでICUに飛び込んだ。
ママ「あなた!」
パパ「いやあ、すまない」
ママ「よかったわ。無事に目を覚ましてくれて」
パパ「すまない。僕、もうタバコ止めるよ」
ママ「当然でしょ! お酒も禁止です!」
パパ「はは……きついなあ。そうだ、のび太」
のび太「な、なに? パパ」
パパ「実は、変な夢を見たんだ」
のび太「変な夢?」
パパ「目の前におふくろが立ってたんだ。それで言うんだよ。まだ来ちゃいけません、のびちゃんが悲しむでしょうがってね」
のび太「おばあちゃんが?」
パパ「僕が、『いやあ、あいつはもう僕なんか必要ないよ』って言ったら、今度はおやじまで現れて『バッカモーン』って竹刀で追い掛け回されてさ。それで目を覚ましたらここにいたよ」
のび太「僕にはパパがまだ必要だよ」
パパ「……そうか。じゃあ、もう少しだけ長生きしてみるかな」
おばあちゃん、助けてくれたんだろうか?
僕は帰り道、しずかちゃんにその話をした。
しずかちゃんは「きっとそうよ」と答えてくれた。
なんだか、僕は胸の中が熱くなったのだった。
そして翌朝。
パパが目を覚ましたと医者から知らされた。
僕らは大喜びでICUに飛び込んだ。
ママ「あなた!」
パパ「いやあ、すまない」
ママ「よかったわ。無事に目を覚ましてくれて」
パパ「すまない。僕、もうタバコ止めるよ」
ママ「当然でしょ! お酒も禁止です!」
パパ「はは……きついなあ。そうだ、のび太」
のび太「な、なに? パパ」
パパ「実は、変な夢を見たんだ」
のび太「変な夢?」
パパ「目の前におふくろが立ってたんだ。それで言うんだよ。まだ来ちゃいけません、のびちゃんが悲しむでしょうがってね」
のび太「おばあちゃんが?」
パパ「僕が、『いやあ、あいつはもう僕なんか必要ないよ』って言ったら、今度はおやじまで現れて『バッカモーン』って竹刀で追い掛け回されてさ。それで目を覚ましたらここにいたよ」
のび太「僕にはパパがまだ必要だよ」
パパ「……そうか。じゃあ、もう少しだけ長生きしてみるかな」
おばあちゃん、助けてくれたんだろうか?
僕は帰り道、しずかちゃんにその話をした。
しずかちゃんは「きっとそうよ」と答えてくれた。
なんだか、僕は胸の中が熱くなったのだった。
それから半年後。
ブームというのは悲しいものだ。
あれほど殺到した依頼も、1年半もすればさっぱりなくなった。
結局増えたのはお得意様が数件ぐらいだった。
まったく、本当のファンは落ち目の時にこそ応援すべきなのに、みんな薄情なものだ。
いや、別に僕は落ち目でもなんでもないけどさ。
数件だけとはいえ、定着してくれたお客様がいたのは十分ありがたいことだ。
落ち葉が舞い散る中を、家路へと急ぐ。
こんな明るいうちに帰れるのも久々だ。
のび太「おや?」
ふと見ると、家の前に奇妙な男女が立っていた。
なんだ、あの服。
現代の物じゃないような……。
男性「野比のび太さんですね」
のび太「はい」
女性「我々、こういう者です。ご同行をお願いします」
のび太「タイムパトロール? まさか、僕を捕まえに?」
TP男「いえ、我々はある人物に会いたいのですが、是非野比さんに同席していただきたいのです」
TP女「お時間は取らせません。ご協力お願いします」
のび太「? 別にいいですけど」
タイムパトロールが会いたい人って誰なんだろう?
不思議に思いながらタイムパトロールについていくと、目の前に現れたのは懐かしい一軒家だった。
のび太「先生の家?」
TP男「こちらです、野比さん」
TP女「あら? いいニオイ。お芋でも焼いてるのかしら?」
僕らは家に入らず、そのまま庭に回る。
すると、落ち葉をいじくりまわしながら縁側で焼き芋を焼いている先生がいた。
のび太「……先生」
先生「ん? おお、野比か? 久しぶり……」
僕の方を見た先生は、僕が連れている二人を見て固まった。
そして、何かを悟ったかのようにため息を付いた。
先生「そうかい。彼を連れてきたのか」
TP男「申し訳ありません、タイムスキー博士」
TP女「そろそろ頃合いかと思ったので」
先生「そうだな。うん、ありがとう」
のび太「え? 先生? どういうこと!?」
先生「初めましてかな、野比君。ドラえもん君が口を滑らしたとは聞いているよ。私がタイムスキーだ」
のび太「ええええええっ!?」
ブームというのは悲しいものだ。
あれほど殺到した依頼も、1年半もすればさっぱりなくなった。
結局増えたのはお得意様が数件ぐらいだった。
まったく、本当のファンは落ち目の時にこそ応援すべきなのに、みんな薄情なものだ。
いや、別に僕は落ち目でもなんでもないけどさ。
数件だけとはいえ、定着してくれたお客様がいたのは十分ありがたいことだ。
落ち葉が舞い散る中を、家路へと急ぐ。
こんな明るいうちに帰れるのも久々だ。
のび太「おや?」
ふと見ると、家の前に奇妙な男女が立っていた。
なんだ、あの服。
現代の物じゃないような……。
男性「野比のび太さんですね」
のび太「はい」
女性「我々、こういう者です。ご同行をお願いします」
のび太「タイムパトロール? まさか、僕を捕まえに?」
TP男「いえ、我々はある人物に会いたいのですが、是非野比さんに同席していただきたいのです」
TP女「お時間は取らせません。ご協力お願いします」
のび太「? 別にいいですけど」
タイムパトロールが会いたい人って誰なんだろう?
不思議に思いながらタイムパトロールについていくと、目の前に現れたのは懐かしい一軒家だった。
のび太「先生の家?」
TP男「こちらです、野比さん」
TP女「あら? いいニオイ。お芋でも焼いてるのかしら?」
僕らは家に入らず、そのまま庭に回る。
すると、落ち葉をいじくりまわしながら縁側で焼き芋を焼いている先生がいた。
のび太「……先生」
先生「ん? おお、野比か? 久しぶり……」
僕の方を見た先生は、僕が連れている二人を見て固まった。
そして、何かを悟ったかのようにため息を付いた。
先生「そうかい。彼を連れてきたのか」
TP男「申し訳ありません、タイムスキー博士」
TP女「そろそろ頃合いかと思ったので」
先生「そうだな。うん、ありがとう」
のび太「え? 先生? どういうこと!?」
先生「初めましてかな、野比君。ドラえもん君が口を滑らしたとは聞いているよ。私がタイムスキーだ」
のび太「ええええええっ!?」
タイムパトロールの二人が部屋を片付けている中、僕は先生と縁側に腰かけていた。
こうして見ると、先生も年を取ったものだ。
もうすぐ100だもんな。
のび太「いったい、どういうことなんですか。先生が未来人だったなんて」
先生「ドラえもん君に任せた君の人生を変えるという計画は、私の研究チームの発案でね。私も君を見守るために、この時代に住んでいたんだよ」
のび太「そうだったんですか」
先生「だが、当初の私は不満だった。なんでこんな男をマザーコンピューターは選んだんだろうかとね。時には、それで当たったりもした。君にも辛い思いをさせたな」
のび太「いえ、今思えば小学校の時の僕は先生に迷惑をかけすぎでした」
先生「はは、それは本当にね。イライラで私も血管が切れそうになったよ」
のび太「ごめんなさい」
先生「まあ、君にイラついた理由はそれだけじゃないんだ。個人的な事情というか、劣等感だな」
のび太「劣等感?」
先生「私はずっとこの時代にいるだろう? おかしいと思わないかい?」
のび太「あ……滞在期限」
先生「私はね、0年なんだ。もっとも渡航禁止者というわけではない。何年いてもいい。そういう意味の0年だ」
のび太「それの何がまずいんですか? ずっと時間旅行できるじゃないですか」
先生「一般にね、滞在期限ってのは歴史に影響を及ぼす限度期間と言われてるんだ。それが0だぞ? 言ってみれば、お前なんて歴史的に価値がないと言われてるようなものだ」
のび太「あ……」
先生「我々は似た者同士だな。君はテストが0、私は歴史的価値が0。まったくお似合いじゃあないか」
のび太「そうですね」
わっはっは、と二人で笑い合う。
先生「まあ、しかし、君を通して、私は滞在期限が人間の価値を決めるものではないと気づいた」
のび太「僕を通して? どういうことです?」
先生「マザーが君をキーパーソンと指名しただろう? あれはつまり、歴史に重大な影響を与える可能性があるってことだ。ところが、どんな人物なのかと思ったら、ドジでマヌケな甘ったれでとてもじゃないけどそんな人物には見えなかった」
のび太「うわ、酷いや」
先生「だが、マザーの計算は正しかった。私はね、思うんだ。マザーは私のちっぽけな虚栄心を見抜いていたんじゃないかってね。だから、私は0だったのだろう」
のび太「でも、僕はそんな大したものじゃ……」
先生「大したものさ。君は優しさを他人に分け与えることができる。それは人々をより幸せにする。すごいことだ。私は学ばされたよ」
のび太「そうかなあ? よく分からないです」
先生「君は君のままでいいんだ。人類は幸せについて、まだまだ学ぶ必要があるな」
TP男「でも、タイムスキー博士もご立派ですよ」
先生「うん?」
TP女「おめでとうございます、博士。ノーベル時空賞受賞決定ですよ」
先生「なぬ……?」
いつから聞いていたのか、タイムパトロールの二人が僕らのそばにいた。
そして、タイムパトロールから告げられた言葉に、先生は停止した。
こうして見ると、先生も年を取ったものだ。
もうすぐ100だもんな。
のび太「いったい、どういうことなんですか。先生が未来人だったなんて」
先生「ドラえもん君に任せた君の人生を変えるという計画は、私の研究チームの発案でね。私も君を見守るために、この時代に住んでいたんだよ」
のび太「そうだったんですか」
先生「だが、当初の私は不満だった。なんでこんな男をマザーコンピューターは選んだんだろうかとね。時には、それで当たったりもした。君にも辛い思いをさせたな」
のび太「いえ、今思えば小学校の時の僕は先生に迷惑をかけすぎでした」
先生「はは、それは本当にね。イライラで私も血管が切れそうになったよ」
のび太「ごめんなさい」
先生「まあ、君にイラついた理由はそれだけじゃないんだ。個人的な事情というか、劣等感だな」
のび太「劣等感?」
先生「私はずっとこの時代にいるだろう? おかしいと思わないかい?」
のび太「あ……滞在期限」
先生「私はね、0年なんだ。もっとも渡航禁止者というわけではない。何年いてもいい。そういう意味の0年だ」
のび太「それの何がまずいんですか? ずっと時間旅行できるじゃないですか」
先生「一般にね、滞在期限ってのは歴史に影響を及ぼす限度期間と言われてるんだ。それが0だぞ? 言ってみれば、お前なんて歴史的に価値がないと言われてるようなものだ」
のび太「あ……」
先生「我々は似た者同士だな。君はテストが0、私は歴史的価値が0。まったくお似合いじゃあないか」
のび太「そうですね」
わっはっは、と二人で笑い合う。
先生「まあ、しかし、君を通して、私は滞在期限が人間の価値を決めるものではないと気づいた」
のび太「僕を通して? どういうことです?」
先生「マザーが君をキーパーソンと指名しただろう? あれはつまり、歴史に重大な影響を与える可能性があるってことだ。ところが、どんな人物なのかと思ったら、ドジでマヌケな甘ったれでとてもじゃないけどそんな人物には見えなかった」
のび太「うわ、酷いや」
先生「だが、マザーの計算は正しかった。私はね、思うんだ。マザーは私のちっぽけな虚栄心を見抜いていたんじゃないかってね。だから、私は0だったのだろう」
のび太「でも、僕はそんな大したものじゃ……」
先生「大したものさ。君は優しさを他人に分け与えることができる。それは人々をより幸せにする。すごいことだ。私は学ばされたよ」
のび太「そうかなあ? よく分からないです」
先生「君は君のままでいいんだ。人類は幸せについて、まだまだ学ぶ必要があるな」
TP男「でも、タイムスキー博士もご立派ですよ」
先生「うん?」
TP女「おめでとうございます、博士。ノーベル時空賞受賞決定ですよ」
先生「なぬ……?」
いつから聞いていたのか、タイムパトロールの二人が僕らのそばにいた。
そして、タイムパトロールから告げられた言葉に、先生は停止した。
先生「本当かね?」
TP男「我々は本来それを伝えに来たんです」
のび太「時空賞って?」
TP女「未来で新設された賞ですよ。時空の研究は未来で盛んなんです」
先生「そうか。うん、そうか」
のび太「先生! いや、タイムスキー博士、おめでとうございます!」
先生「おい、野比!」
TP男「……やはり、それでも気は変わりませんか?」
先生「ああ、うん。賞は研究チームのみんなで受け取ってくれたまえ。私はこの時代に残るよ」
TP女「残念です。お元気で」
のび太「……? タイムスキー博士、帰らないんですか?」
先生「先生でいいよ。私はな、野比。この時代が好きだ。もうこの時代を離れて暮らすことなど考えられんよ」
のび太「先生……」
先生「世話になったな君達。片付けは済んだかい」
TP男「ええ。事前に荷物をまとめていただいたおかげで助かりました」
TP女「いいんですね? 博士? もう未来には帰れませんよ?」
先生「ああ、もう十分だ。今思えば、私の滞在期限が0だったのは、このためだったのかもしれんなあ」
先生はそう言い、遠くを眺めて涙を流す。
僕もつられて涙を流した。
たぶん、もう終わりが近いんだな。
可能性にあふれていた僕の道が、急速に閉じていくのを感じる。
でも、僕は失望なんてしていない。
可能性の道は、ノビスケ、そしてセワシ君へと繋がっていくはずだから。
TP男「我々は本来それを伝えに来たんです」
のび太「時空賞って?」
TP女「未来で新設された賞ですよ。時空の研究は未来で盛んなんです」
先生「そうか。うん、そうか」
のび太「先生! いや、タイムスキー博士、おめでとうございます!」
先生「おい、野比!」
TP男「……やはり、それでも気は変わりませんか?」
先生「ああ、うん。賞は研究チームのみんなで受け取ってくれたまえ。私はこの時代に残るよ」
TP女「残念です。お元気で」
のび太「……? タイムスキー博士、帰らないんですか?」
先生「先生でいいよ。私はな、野比。この時代が好きだ。もうこの時代を離れて暮らすことなど考えられんよ」
のび太「先生……」
先生「世話になったな君達。片付けは済んだかい」
TP男「ええ。事前に荷物をまとめていただいたおかげで助かりました」
TP女「いいんですね? 博士? もう未来には帰れませんよ?」
先生「ああ、もう十分だ。今思えば、私の滞在期限が0だったのは、このためだったのかもしれんなあ」
先生はそう言い、遠くを眺めて涙を流す。
僕もつられて涙を流した。
たぶん、もう終わりが近いんだな。
可能性にあふれていた僕の道が、急速に閉じていくのを感じる。
でも、僕は失望なんてしていない。
可能性の道は、ノビスケ、そしてセワシ君へと繋がっていくはずだから。
その年の冬、小学校の同窓会があった。
先生が生きてるうちに、クラスメート全員も無事なうちにってことで、その年の忘年会は非常に気合が入った物だった。
まあ、気合を入れてほしくない人物もいるけど。
ジャイアン「それでは皆さん、ここで一曲!」
スネ夫「わあ、やめろヘタクソ!」
しずか「誰よ! 武さんにマイク渡したのは!」
先生「やめろ武君! 血圧が上がる!」
久々にいつかのリサイタルのような衣装で歌いだすジャイアン。
会場は阿鼻叫喚の地獄と化していた。
と、そこで黄色い歓声が上がる。
「きゃー、出木杉さんよ!」
「いよ! 出世頭! ノーベル賞受賞者ー!」
会場は大盛り上がりだ。
出木杉「やあ、どうもみんな。会えてうれしいよ」
出木杉はみんなの歓声にこたえて、スマイルを送る。
そんな出木杉に怒ったのがジャイアンだ。
ジャイアン「おい! 出木杉! 俺様の歌の最中だぞ! 邪魔すんじゃねえ!」
出木杉「いやあ、ごめんごめん。続けてどうぞ」
スネ夫「おい、バカ! 続けさせんな!」
しずか「そうよ! やっと解放されると思ったのに!」
ジャイアン「……みんな酷くね?」
先生「あー、その、二次会でやってくれんか? できれば私のいないところで」
出木杉「ああ、先生ご無沙汰してます。そういえば……」
出木杉が先生に近づき、何か言葉をかける。
すると、先生は驚いたように僕を見てきた。
先生「おい! 野比!」
のび太「はい?」
先生「あ、いや、なんでもない」
のび太「?」
後で出木杉に聞いたら「ノーベル賞おめでとうございます」と言ったんだってさ。
まったくニクイやつだ。
先生が生きてるうちに、クラスメート全員も無事なうちにってことで、その年の忘年会は非常に気合が入った物だった。
まあ、気合を入れてほしくない人物もいるけど。
ジャイアン「それでは皆さん、ここで一曲!」
スネ夫「わあ、やめろヘタクソ!」
しずか「誰よ! 武さんにマイク渡したのは!」
先生「やめろ武君! 血圧が上がる!」
久々にいつかのリサイタルのような衣装で歌いだすジャイアン。
会場は阿鼻叫喚の地獄と化していた。
と、そこで黄色い歓声が上がる。
「きゃー、出木杉さんよ!」
「いよ! 出世頭! ノーベル賞受賞者ー!」
会場は大盛り上がりだ。
出木杉「やあ、どうもみんな。会えてうれしいよ」
出木杉はみんなの歓声にこたえて、スマイルを送る。
そんな出木杉に怒ったのがジャイアンだ。
ジャイアン「おい! 出木杉! 俺様の歌の最中だぞ! 邪魔すんじゃねえ!」
出木杉「いやあ、ごめんごめん。続けてどうぞ」
スネ夫「おい、バカ! 続けさせんな!」
しずか「そうよ! やっと解放されると思ったのに!」
ジャイアン「……みんな酷くね?」
先生「あー、その、二次会でやってくれんか? できれば私のいないところで」
出木杉「ああ、先生ご無沙汰してます。そういえば……」
出木杉が先生に近づき、何か言葉をかける。
すると、先生は驚いたように僕を見てきた。
先生「おい! 野比!」
のび太「はい?」
先生「あ、いや、なんでもない」
のび太「?」
後で出木杉に聞いたら「ノーベル賞おめでとうございます」と言ったんだってさ。
まったくニクイやつだ。
同窓会も終わり、夜の十時。
まだ飲み足りない連中は、引き続き3次会4次会と続けるつもりのようだったけど、僕は限界だったので抜けさせてもらった。
ちなみに、しずかちゃんは女子たちだけで盛り上がるつもりのようだ。
ちょっとした空き地で夜風に当たる。
ほてった体に心地いい。
ドラえもん「のび太君」
のび太「……ドラえもん?」
空から視線を戻すと、目の前にドラえもんが立っていた。
のび太「どうしたんだ? まだ来る時期じゃないだろ?」
ドラえもん「実は、お別れに来たんだ」
のび太「お別れ? 滞在期限ってやつは過ぎてないだろ?」
ドラえもん「違うんだ。もうすぐ僕は廃棄処分になる」
のび太「何だって!? セワシ君は何をやってるんだ!」
ドラえもん「いや、セワシ君は関係ない。僕が決めたんだ」
のび太「え?」
ドラえもん「僕も製造されてから、もう60年になる。もう僕はとっくにメーカー保証外なんだ」
のび太「保証外ってことは……修理費がかかる?」
ドラえもん「うん。セワシ君は修理費なんかいくらでも出してやるって言ってくれたけどね。でも、彼の孫の世話はドラミがいれば十分だろう」
のび太「どこか調子が悪いのか?」
ドラえもん「もうさすがにあちこちボロボロだよ。この前の検査で『危険』と言われた」
のび太「そう、か」
ドラえもん「泣くなよ。僕らロボットは生きようと思えば無限に生きられる。でも、それは新しいロボットの誕生を妨げる行為なんだ」
のび太「そうだね。分かるよ」
ドラえもん「ゴンゾウって覚えてる? 実は彼、まだ生きてるんだ」
のび太「え? あのロボット擬人権のゴンゾウ!?」
ドラえもん「ただし、博物館でガラスケースに詰められた状態でね。壊れないように大事に保管されてるんだ」
のび太「かわいそうだな」
ドラえもん「この前会いに行ったよ。うつろな目で『イモほりてえイモほりてえ』って呟いてた。あれはもうボケてるね」
のび太「君はそうなりたくはないってことかい?」
ドラえもん「うん。あんなのは悲しすぎるよ」
のび太「だろうね」
ドラえもん「僕の席は、もうどこにもないのさ」
悲しそうにそう言うドラえもん。
だけど、なぜか誇らしげだった。
ドラえもん「後のことはドラミに頼んである。だから心配しなくていいよ」
のび太「いや、もういいよ」
ドラえもん「もういいって、僕らの助けはいらないのかい?」
のび太「君達は僕らがいつ亡くなるか知ってるんだろう?」
ドラえもん「…………」
のび太「はは、やっぱりなあ」
ドラえもん「のび太君! 未来は変わるんだ! 諦めるなんて君らしくないぞ!」
のび太「それでも、パパやママがあと100年生きたりするわけないだろ? 僕らだって同じさ。君の時代までには亡くなる」
ドラえもん「それは、そうだけど」
のび太「君と同じさ。僕らの席だって、もう残ってないんだよ」
ドラえもん「その割には、誇らしげだね」
のび太「君だって」
ドラえもん「分かったよ。ドラミにはそう伝えておく」
のび太「うん、ありがとう。ドラミちゃんに辛い思いをさせなくて済むよ」
まだ飲み足りない連中は、引き続き3次会4次会と続けるつもりのようだったけど、僕は限界だったので抜けさせてもらった。
ちなみに、しずかちゃんは女子たちだけで盛り上がるつもりのようだ。
ちょっとした空き地で夜風に当たる。
ほてった体に心地いい。
ドラえもん「のび太君」
のび太「……ドラえもん?」
空から視線を戻すと、目の前にドラえもんが立っていた。
のび太「どうしたんだ? まだ来る時期じゃないだろ?」
ドラえもん「実は、お別れに来たんだ」
のび太「お別れ? 滞在期限ってやつは過ぎてないだろ?」
ドラえもん「違うんだ。もうすぐ僕は廃棄処分になる」
のび太「何だって!? セワシ君は何をやってるんだ!」
ドラえもん「いや、セワシ君は関係ない。僕が決めたんだ」
のび太「え?」
ドラえもん「僕も製造されてから、もう60年になる。もう僕はとっくにメーカー保証外なんだ」
のび太「保証外ってことは……修理費がかかる?」
ドラえもん「うん。セワシ君は修理費なんかいくらでも出してやるって言ってくれたけどね。でも、彼の孫の世話はドラミがいれば十分だろう」
のび太「どこか調子が悪いのか?」
ドラえもん「もうさすがにあちこちボロボロだよ。この前の検査で『危険』と言われた」
のび太「そう、か」
ドラえもん「泣くなよ。僕らロボットは生きようと思えば無限に生きられる。でも、それは新しいロボットの誕生を妨げる行為なんだ」
のび太「そうだね。分かるよ」
ドラえもん「ゴンゾウって覚えてる? 実は彼、まだ生きてるんだ」
のび太「え? あのロボット擬人権のゴンゾウ!?」
ドラえもん「ただし、博物館でガラスケースに詰められた状態でね。壊れないように大事に保管されてるんだ」
のび太「かわいそうだな」
ドラえもん「この前会いに行ったよ。うつろな目で『イモほりてえイモほりてえ』って呟いてた。あれはもうボケてるね」
のび太「君はそうなりたくはないってことかい?」
ドラえもん「うん。あんなのは悲しすぎるよ」
のび太「だろうね」
ドラえもん「僕の席は、もうどこにもないのさ」
悲しそうにそう言うドラえもん。
だけど、なぜか誇らしげだった。
ドラえもん「後のことはドラミに頼んである。だから心配しなくていいよ」
のび太「いや、もういいよ」
ドラえもん「もういいって、僕らの助けはいらないのかい?」
のび太「君達は僕らがいつ亡くなるか知ってるんだろう?」
ドラえもん「…………」
のび太「はは、やっぱりなあ」
ドラえもん「のび太君! 未来は変わるんだ! 諦めるなんて君らしくないぞ!」
のび太「それでも、パパやママがあと100年生きたりするわけないだろ? 僕らだって同じさ。君の時代までには亡くなる」
ドラえもん「それは、そうだけど」
のび太「君と同じさ。僕らの席だって、もう残ってないんだよ」
ドラえもん「その割には、誇らしげだね」
のび太「君だって」
ドラえもん「分かったよ。ドラミにはそう伝えておく」
のび太「うん、ありがとう。ドラミちゃんに辛い思いをさせなくて済むよ」
ドラえもんと向かい合う。
小さいなあ。
いや、僕が大きくなったのか。
そしてよく見たらボロボロだ。
塗装まで剥げてきてるじゃないか。
のび太「ドラえもん。先に逝って待ってるよ」
ドラえもん「え?」
僕の言葉に、ドラえもんは一瞬戸惑う。
だけど、次の瞬間満面の笑顔でこう答えた。
ドラえもん「死後の世界なんて信じてないけど、信じてみたいな。君にまた会える日のために」
消えていくドラえもんを見て、僕は静かに涙を流した。
きっと会えるさ、ドラえもん。
そして、みんなとも。
ずっと続いていくと思った僕らの道。
それは、これからも続いていく。
――STAY WITH ME ドラえもん 完――
小さいなあ。
いや、僕が大きくなったのか。
そしてよく見たらボロボロだ。
塗装まで剥げてきてるじゃないか。
のび太「ドラえもん。先に逝って待ってるよ」
ドラえもん「え?」
僕の言葉に、ドラえもんは一瞬戸惑う。
だけど、次の瞬間満面の笑顔でこう答えた。
ドラえもん「死後の世界なんて信じてないけど、信じてみたいな。君にまた会える日のために」
消えていくドラえもんを見て、僕は静かに涙を流した。
きっと会えるさ、ドラえもん。
そして、みんなとも。
ずっと続いていくと思った僕らの道。
それは、これからも続いていく。
――STAY WITH ME ドラえもん 完――
78創る名無しに見る名無し
2026/01/11(日) 12:24:40.82ID:/S0tfkCX79創る名無しに見る名無し
2026/01/25(日) 13:26:44.38ID:v6fqyX5X ♪STAY WITH ME ~あマシュマラァ~
80創る名無しに見る名無し
2026/02/09(月) 21:28:07.94ID:iXhHz9ux 覇権の影と日本の覚悟:対中外交の幻想を排す
1.日本の主権を脅かす「背信」の正体
現代の国際社会において、中国が見せる覇権主義的な動きは、日本の主権と安全保障に対する深刻かつ直接的な脅威である。かつて日本が多額の援助で中国の近代化を支えた経緯を思えば、現在の彼らの態度は恩を仇で返す背信行為だ。
我々は今、対中外交における根拠なき楽観論を捨て、冷厳な現実を直視すべき時に立たされている。まず指弾すべきは、尖閣諸島周辺における執拗な領海侵犯である。これは日本の施政権に対する明白な挑戦であり、国際法を無視した暴挙である。
2.「静かなる侵略」と独善的な海洋進出
彼らが主張する独自の歴史的根拠は、国際ルールを歪曲した独善的な解釈に過ぎない。南シナ海での軍事拠点化を鑑みれば、彼らの狙いが東シナ海の完全支配にあることは明白だ。日本はこの静かなる侵略に対し、あらゆる手段で断固対峙せねばならない。
次に、経済威圧という卑劣な手段を批判する。中国は巨大市場を人質に取り、外交的な不満が生じるたびに不当な貿易制限を示唆する。これは自由貿易の恩恵を享受しながら、その根幹である公平性を自ら踏みにじる厚顔無恥な行為であり、断じて許されない。
3.経済安全保障と普遍的価値の防衛
経済安全保障の観点からも、特定の物資を中国に依存し続けることは、日本の生存権を敵対的国家に預けるに等しい。リスク低減はもはや選択肢ではなく、国家存続のための急務だ。供給網の脱中国化を加速させ、自立した経済構造を早急に築くべきである。
さらに、普遍的価値観への敵対も看過できない。香港の弾圧やウイグルでの人権侵害、台湾への武力威圧は、自由と民主主義、法の支配への挑戦である。中国の専制主義が拡大すれば、我々が享受してきた自由な社会は終焉を迎えることになるだろう。
4.不退転の決意と抑止力の強化
特に台湾有事は日本有事であり、それは国際秩序そのものの崩壊を意味する。日本は中国に対し、対話という名の妥協を繰り返すべきではない。対話は確固たる抑止力と、譲れない一線を明確にした上で、初めて外交的な意味を成すものである。
国防力の抜本的強化と日米同盟の深化は不可欠だ。また、志を同じくする国々との多角的な連携を強化し、中国の独善的な膨張を押し留める防波堤とならねばならない。平和は願うだけで維持されるものではなく、自らの覚悟と力によって守るものである。
5.結び
結論として、日本はこの巨大な隣国が振りかざす理不尽な圧力に対し、毅然たる姿勢で立ち向かうべきである。国家の誇りと国民の安全を守るため、今こそ幻想を排した独自の外交・防衛戦略を断行する時である。もはや一刻の猶予も残されていない。
1.日本の主権を脅かす「背信」の正体
現代の国際社会において、中国が見せる覇権主義的な動きは、日本の主権と安全保障に対する深刻かつ直接的な脅威である。かつて日本が多額の援助で中国の近代化を支えた経緯を思えば、現在の彼らの態度は恩を仇で返す背信行為だ。
我々は今、対中外交における根拠なき楽観論を捨て、冷厳な現実を直視すべき時に立たされている。まず指弾すべきは、尖閣諸島周辺における執拗な領海侵犯である。これは日本の施政権に対する明白な挑戦であり、国際法を無視した暴挙である。
2.「静かなる侵略」と独善的な海洋進出
彼らが主張する独自の歴史的根拠は、国際ルールを歪曲した独善的な解釈に過ぎない。南シナ海での軍事拠点化を鑑みれば、彼らの狙いが東シナ海の完全支配にあることは明白だ。日本はこの静かなる侵略に対し、あらゆる手段で断固対峙せねばならない。
次に、経済威圧という卑劣な手段を批判する。中国は巨大市場を人質に取り、外交的な不満が生じるたびに不当な貿易制限を示唆する。これは自由貿易の恩恵を享受しながら、その根幹である公平性を自ら踏みにじる厚顔無恥な行為であり、断じて許されない。
3.経済安全保障と普遍的価値の防衛
経済安全保障の観点からも、特定の物資を中国に依存し続けることは、日本の生存権を敵対的国家に預けるに等しい。リスク低減はもはや選択肢ではなく、国家存続のための急務だ。供給網の脱中国化を加速させ、自立した経済構造を早急に築くべきである。
さらに、普遍的価値観への敵対も看過できない。香港の弾圧やウイグルでの人権侵害、台湾への武力威圧は、自由と民主主義、法の支配への挑戦である。中国の専制主義が拡大すれば、我々が享受してきた自由な社会は終焉を迎えることになるだろう。
4.不退転の決意と抑止力の強化
特に台湾有事は日本有事であり、それは国際秩序そのものの崩壊を意味する。日本は中国に対し、対話という名の妥協を繰り返すべきではない。対話は確固たる抑止力と、譲れない一線を明確にした上で、初めて外交的な意味を成すものである。
国防力の抜本的強化と日米同盟の深化は不可欠だ。また、志を同じくする国々との多角的な連携を強化し、中国の独善的な膨張を押し留める防波堤とならねばならない。平和は願うだけで維持されるものではなく、自らの覚悟と力によって守るものである。
5.結び
結論として、日本はこの巨大な隣国が振りかざす理不尽な圧力に対し、毅然たる姿勢で立ち向かうべきである。国家の誇りと国民の安全を守るため、今こそ幻想を排した独自の外交・防衛戦略を断行する時である。もはや一刻の猶予も残されていない。
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